表現形態は違うにせよ、リアリティーショーの柱は「愛」「家族」「野心」だ。「家族もの」では家族のけんか、夫婦の離婚などをそのまま見せて、視聴者に「あいつはいやなやつだ」「こっちの方が正しい」などとあれこれ思わせて、見せる。ねたみやそねみを外から観察することが楽しいのである。
2010年スタートで上流階級の専業主婦の生活を描いた「The Real Housewives(リアルハウスワイフ)」や2019年に始まった不動産会社内の人間関係を描いた「Selling Sunset(セリング・サンセット)」は、家族ではないが親密な関係の人間たちの友情と確執をさらけ出し、人気となっている。
ソーシャルメディアの発展も同様だが、他人の生活を遠くからのぞき見ることが好きな人間は多い。作家が執筆した台本よりも、リアルなけんかの方が驚きが多く、のぞき見心理を増幅させる。
新型コロナの感染拡大で社会との関係が希薄になったことも、リアリティショーへの関心を高めさせた。
庶民には接触する機会がない富裕層がどんな生活をしているのか、ということも、競争社会の米国ではことさらに好奇心をそそられる。
また米国の場合、人種をはじめ生活環境が多岐にわたっている。敬けんなユダヤ教徒の生活から逃れようとするユダヤ人家族の苦悩や喜びを描いた作品や、夫や息子がマフィアがらみで逮捕されて刑に服している家庭の主婦だけを取り上げた作品など、日本では考えられない設定のリアリティショーもある。社会の多様性がリアリティショーへの視聴者の関心を強めている。
一方で制作する側の理屈からすると、費用が安く済むのが最大の利点だ。このためリアリティショーの制作本数が増える。ある業界関係者によると、ドラマの1シリーズを制作するのに、多い場合は、俳優らの出演料を含め900万ドル(約13億円)ほどかかる場合があるが、リアリティショーは1シリーズで10万ドル(約1600万円)から50万ドル(約7800万円)程度で制作できるという。