◆世間体を気にするのを止めたら楽になった

四ツ原:そんななか、友人に恋人との結婚に踏み切った理由を聞くと「周りから『結婚しないの?』と尋ねられるのが嫌だったから」と話していたんです。それを聞いて「私が結婚しなきゃ、と焦っていた理由は“世間体”の1点だった」と気付きました。

『IMA IMA 02 オタクルームシェアはじめました』より
『IMA IMA 02 オタクルームシェアはじめました』より
結婚したい理由が親の手前とか、世間の目とかでしかないなら、自分はしなくてもいいかなと思えるようになって、とてもラクになりましたね。今後よい出会いがあれば結婚する可能性もありますが、“無理に探す”のはやめました。

◆白か黒かではなく「グレー」の選択肢も残したい

――一気に価値観が変わったんですね。四ツ原さんの代表作『家政夫のナギサさん』も、男性が家事をして女性がバリバリ働く設定でした。既存の価値観に新たな選択肢を提示するストーリーでしたが、四ツ原さんの心境の変化が作品に現れている部分もあるのでしょうか?

『家政夫のナギサさん』(シーモアコミックス)
『家政夫のナギサさん』(シーモアコミックス)
四ツ原:ナギサさんを描いていた頃は、まだ「結婚したほうがいいのかな」と悩んでいた時期かもしれません。今でも結婚をしないと決めたわけではなく、今後その選択肢を選ぶ可能性もあります。人生の選択肢が白か黒しかない状況よりはグレーの選択肢も取れるようになると、生きやすいのではないかという思いがあります。

今は年齢・性別に関係なく、友人とのシェアルームについて前向きに捉える人が多くなりましたが、現時点で国の制度や法律の対応はあまりない印象です。ローンを組む際にも、友人同士が一緒に人生を歩むハードルの高さを実感しました。

戸籍上はつながりがない関係同士でも支え合って生きていけるような制度がほしい……と、切実に思います。友だちと暮らす“共助”の難しさについてはエッセイ漫画の次回作でも触れていきたいテーマですね。