◆もし演じるのが奈緒じゃなかったら……
役者の誰しもが負け顔をできるわけではない。負け顔ができない役者がほこ美を演じていたのであれば、派手に転んで鼻血を出したほこ美を見て、笑うことはそっちのけで過剰に同情していたかもしれない。また、海里のクズさにキュンキュンするどころか、海里が不幸になる“スカッと展開”を切望していたかもしれない。
ただ、それではラブコメとしての方向性がブレて、面白さを大きく損うリスクが高い。奈緒の“やられっぷり”が見事なだからこそ、ラブコメと復讐モノという嚙み合わせの悪い2つの要素をミックスできているように思う。
◆可愛らしいけどあざとくなく、共感させるコケっぷり
ちなみに、ラブコメと復讐モノだけではなくスポコン要素も含まれている本作。スポコンの主人公と言えばやはり“鈍臭さ”が求められる。才能に溢れ、器用に立ち回れる主人公であれば応援する気は起きない。ただ、1話ラストに海里に殴りかかるも華麗にかわされて転んだり、2話で縄跳びの飛び方がたどたどしかったりなど、ほこ美の鈍臭さをしっかり表現できており、ほこ美をスポコンドラマの主人公にしていた。
昨年話題を集めたドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)でもわかる通り、その転び方の上手さには定評があった奈緒。本作でも、その可愛らしいけどあざとくなく、それでいて共感してしまうコケっぷりを遺憾なく発揮しており、ほこ美の成長を期待したくなる。
◆奈緒だからこそ乗りこなせている主人公
また、未来のほこ美の姿なのか、1話冒頭ではリングに上がってボクシングの試合に出場していた。目の上は切れ、対戦相手からなかなかの滅多打ちに合うが、それでも「可哀想」よりは「頑張れ」と思わせられた。
奈緒だからこそ、ラブコメ、復讐モノ、スポコンという多種多様な要素を含んだ本作の主人公を乗りこなせているように思う。知らず知らずのうちに沼に引きずり込もうとする玉森の演技が注目されている本作ではあるが、奈緒の演技からも目が離せない。