◆Z世代のクリエイターだからこそ生み出せる雰囲気

井上:コンテンツに対する共感のコメントももちろん多いですが、それ以上に潜在的な共感が広がっていると感じます。たとえば、僕自身は部活で頑張った経験がないので、部活で泣いている姿を見ても直接的な共感はありません。ただ、何かに打ち込んでうまくいかなかった時の感情には共感できます。それが『まいはに』の魅力なんですよ。
平岡辰太朗氏(以下、平岡):仮に「BeReal(※)」をテーマにしたとき、40代の人にはビーリアルが何かわからないかもしれません。でも、その奥にある「共感させたい部分」は変わらないんですよ。
自己承認欲求や他者との共有欲求という、根本的な欲求は年代を問わず共通しているので、そこには共感できるポイントがあるはずです。一方で、「ビーリアル」というだけで興味を持たない人も一定数いるでしょうけどね。
※「リアルな日常を友達と共有する」ことを目的としたアプリで、Z世代に人気
井上:そのリアリティを追求するために、制作現場では「こういう経験あったよね」といった話が飛び交い、スタッフも20代が多く、その感覚を共有しながら作り上げています。また、俳優たちも感情表現が上手なため、リアルな演技が見せられるんです。平岡さんはどう思いますか?
平岡:井上が言ったように、大人が作ったものではない等身大のクリエイティブが受け入れられているのだと思います。実際には大人が関わっていますが、TikTokは「ごっこ倶楽部」と呼ばれる10代後半から20代前半のクリエイターたちと一緒に制作しています。
大人が作ると、どうしても若者の文脈についていけない部分が出てきます。僕自身34歳ですが、その感覚を完全に掴むのはとても難しくて……。だからこそ、若者が主体となって作ることで視聴者も共感しやすく、再生数も伸びているのだと思います。