――件数は少なくても、サメが人を殺傷すると、そのセンセーショナルさが印象に残ってしまいます。

Ricky:有名なものでは、アメリカのニュージャージー州で起きた事故。1916年7月1日~12日という10日ほどの間に、4人死亡、1人負傷した連続襲撃事件で、『ジョーズ』の元ネタともいわれています。

 近くで捕らえたホホジロザメ(※)から人骨が出てきたので、犯人かと思われていましたが、襲撃現場のなかには、川もあった。ホホジロザメは淡水では生きられないので、そこでの犯人は淡水OKのオオメジロザメ説が浮上しました。結果的に、複数のサメによる事故が重なった、という見方が有力です。

(※)環境省によれば、ホホジロザメは全長8メートル、体重2トンを超える大型のサメ。英語圏での俗名がMan Eater Shark=人食いザメと呼ばれるほど、最も危険なサメとされる。

 日本では、松山(愛媛県)の騒動が知られます。瀬戸内海で、1992年3月8日に起こった、潜水士が襲われる事故です。

 潜水器具を装着して貝漁をしていた潜水士が、船上の仲間に「上げてくれ!」という救助連絡の直後、行方不明になってしまった。20分ほどして引き上げられたのは、ズタズタになった潜水服だけ。歯の痕などから、ホホジロザメが犯人だとされました。

 さらに同年5月、その近くで大きなホホジロザメが捕獲され、翌月には瀬戸内海の別の場所で、ボートに乗った漁師が襲われました。当時、現地では『ジョーズ』さながらのパニックになったという話を聞いています。