ステップファミリーが離陸するために②:柔軟な家族の築き方

(写真=Dasha Petrenko/Shutterstock.com)

それでは、ステップファミリーが上手に離陸するために分かっておくべき知識を、『ステップファミリーのきほんをまなぶ-離婚・再婚と子どもたち』(SAJ・野沢慎司編、緒倉珠巳・野沢慎司・菊地真理著、金剛出版、2018年)から学んでいきましょう。

SAJ(ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパン)は、ステップファミリーの当事者や支援者に向けて、調査研究に基づいた情報やサポートを提供している団体です。

初婚の家族とは違うものだと理解する

ステップファミリーの難しさはまず、初婚の家族とは構造も発達も違うところにあるそうです。ステップファミリーは、実親子の関係が先にある中に新たなパートナーや家族を迎え、その過程では様々な喪失経験があるからです。

日本のステップファミリーには大きく分けて2つのモデルがあります。1つ目は「代替家族モデル」。これは非同居親に代わる存在として新しいパートナーを位置づけるものであり、親ポジションにある人が入れ替わるモデルです。

もう1つは「継続家族モデル」。別居する親との関係は継続し、子供にとっては新たなかかわりを持つ人が増えるモデルです。日本では「代替家族モデル」が多く、このモデルでは継親子だけではなく実親子の間でも葛藤をより高めることが指摘されています。

また、ステップファミリーの家族構造は、すでにある家族関係内の「インサイダー」と後から加わった「アウトサイダー」という違いをずっと持ち続けます。この構造があることが問題なのではなく、それを理解したうえでお互いの関係を築いていくことが大切です。関係構築に重要なのは、お互いの立場や気持ちを汲んだ行動を取ることで、構造を変えることではないのです。

実親と継親の立場、役割は違う

どんな家族でも、親が権威的な姿勢を保ちつつ子供に共感的な愛情を示すスタイルが子供の成長に良い効果を与えるそうです。実親と継親は子育てにおいて、継親が厳格になりやすく、実親がつい甘くなるなど、対立的な構造にはまりやすくなりますが、お互いの立場や考え方の違いが協力的な関係のもとで生かされると、理想的なスタイルに近づくのです。

上手な協力体制を築くカギは、実親がしつけ上の統制と思いやりを持って子育てをリードし継親がそのサポートにまわること。継親の方は、優しくフレンドリーな姿勢でゆっくりと信頼関係を育み、その後で子育てに加わっていくことです。

キーパーソンである実親が一番無理解だと悲しむ継親や子供の声は少なくないのだとか。実親は子供と継親の両方の心情を理解し、継親子の関係を築く一番のサポーターになることが大事なのでしょう。

「家族の形」「親子の形」を子供に強制しない

これらの教えはみな、「家族の形」「親子の形」がひとつではないということが基礎にあるのだと思います。「親だったらこうであるべき」「子供なのだからこうするべき」の思い込み、特にそれが初婚の家族を理想化したものであるほど、親も子供も苦しくなるのでしょう。

この本には先輩ステップファミリーの経験談も掲載されていますが、そこでは「お父さん」「お母さん」にとらわれず、ゆるやかな呼び名を受容したり、実親に代わる存在ではなく受け入れやすい形からスタートしたり、自分たちらしい関係性を徐々に築いていった様子が読み取れます。

工夫の仕方はさまざま。参考にしながら、自分たちらしい家族の形は何なのか、チャレンジしていくことが大事なのでしょう。

「家族」とは人間関係を築く営み

(写真=Yuganov Konstantin/Shutterstock.com)

再婚と子供、ステップファミリーについて学び、筆者が感じたこと。それは「結局、再婚も結婚なのだ」ということです。再婚は第一には新たなパートナーを求める自分の決断。そのうえで子供もまた一方の当事者なのだという意識を持ち、子供と新しい家族とどのような関係を築くのか真剣に考える必要がある、ということなのでしょう。

そして、考えてみればそれは不思議ではないこと。私たちはみな「あるべき家族像」のロールプレイをするために家族になる訳ではないのですし、人間対人間の関係を作っていくということにおいては、夫婦間も同じ、親子間も同じ、初婚でも再婚でも同じなのだと思います。ステップファミリーを考えるということは、そういった「家族」の基本を考えることなのかもしれません。

文・菊池とおこ/DAILY ANDS

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