浮気や不倫の慰謝料はどのくらいの金額かご存知でしょうか。いざというときのために、実際のケースなどを紹介します。
なお、以下で見る慰謝料は不倫相手への請求が前提です。不倫した夫(妻)への慰謝料請求は、不倫以外の離婚に至った理由にもよるので、さらに高い金額を請求できるケースもあります。
不倫による慰謝料の金額の基準は?
浮気や不倫の発覚により夫婦関係が破綻し、離婚に至ったかどうかで、慰謝料の金額は大きく異なります。大雑把な傾向では、離婚に至ったときは100万円以上、離婚に至らず、結婚生活が続いている場合には100万円未満になることが多いです。
ただし、話し合いの段階では不倫相手の支払能力(収入・資産)も視野に入れる必要があります。不倫相手が無職だったり収入が少なかったりして支払のめどが立たなければ、裁判をしても支払が保証されないケースもあります。
逆に不倫相手の立場によっては(不倫相手にも家族があり浮気がバレると困るなど)、これから見るケースと比べて高い金額の慰謝料で合意する可能性もあります。
金額帯別!慰謝料のケース例
実際に、金額帯別に事例を紹介します。ただし、あくまでも一例として参考にしていただければと思います。
50万~100万円のケース
この金額になるのは、浮気や不倫は発覚しても夫婦が離婚していない場合が一般的です。たとえば、結婚生活3年で不倫関係が1年5ヵ月余り(不倫発覚後交際をやめている)というケースでは、調停などで離婚を協議しているものの、まだ離婚していないことなども踏まえ慰謝料は100万円となっています(東京地方裁判所2016年1月29日判決)。
100万~300万円のケース
慰謝料の金額が100万円~300万円になるのは先に離婚をしているか、離婚裁判と並行して裁判になっている場合になります。150万円前後が比較的多いように思います。
たとえば、結婚生活4年3ヵ月余り、不倫期間は3ヵ月という短い期間で、慰謝料150万円と判断しているものがあります(不倫相手が裁判に出頭せず、書類提出もないという特殊なケース。東京地方裁判所2016年11月1日判決)。
300万円以上のケース
ここまで至るとかなり特殊なケースになります。比較的結婚生活が長い(20年以上)、夫婦間に子供がいて、不倫相手との間にも子供がいる、すでに不倫相手と同居している、不倫の期間も比較的長い(10年以上)、不倫の期間が短い場合でも他の事情がある(他方名義でかなりの借金をして不倫相手とともに浪費した)、など。特に不倫相手と現在も同居中であったり、子供がいたりすると増額の方向に働くといえるでしょう。
慰謝料が認められる場合
慰謝料を請求するためには、浮気や不倫の事実があったことが大前提として必要です。浮気相手が不倫を認めていなければ、裁判官に「不倫あり」と判断してもらえる証拠が必要になります。
このためによく使われるのが探偵の調査報告書です。夫や妻が浮気相手とラブホテルに出入りしたことや、浮気相手と2人きりで旅行に行ったことが分かる写真・宿泊先ホテルの領収証、最近では浮気相手とのLINEのやり取りなどが証拠となります。
慰謝料が認められない場合
慰謝料が認められないケースもあります。一つは浮気相手が不倫を否定していて、不倫の裏付けとなる証拠がない・あるいは弱い場合です。
さらに、不倫相手からの反論として、「結婚していたことを知らなかった」というものも。
その他によくある反論は、「夫婦の結婚生活はもうすでに破綻状態と思っていた」というもの。夫(妻)が不倫相手に「夫婦仲がすごく悪い」「今離婚の話をしている」と言っていたという根拠があり得ますが、裁判で認められるにはかなりハードルが高いです。「家庭内別居」では実際のところ結婚生活が破綻していたかの判断が難しいので、別居している、あるいは離婚調停中・離婚裁判中であることまで必要になるのが一般的です。
慰謝料には時効があるって本当?
また、不倫の慰謝料を請求できる期間には時効があります。配偶者に不倫があったことがわかって3年で時効になります。慰謝料請求をしたときに3年を超えていて、上の事実がその前にわかっていたことが明らかなときは不倫相手から時効を過ぎていると主張される可能性があります。
慰謝料請求されたとき、支払いを回避・減額できる?
不倫による慰謝料は夫(妻)と浮気相手が不貞行為をすることで発生するものですから、両方に同じ金額の慰謝料を請求できるわけではありません。夫(妻)がすでに不倫による慰謝料を支払っていれば、その損害はすでに金銭的に補われているので支払う必要がない・あるいは減額してほしいと主張できます。
ただ、実際には夫(妻)との間では慰謝料なしで示談している、あるいは慰謝料かよくわからない解決金の名の下にお金が支払われているといった場合には、不倫による慰謝料は別だからという理由で支払を求められることがあります。その場合には自分が慰謝料を支払ったあとに、夫(妻)に対して自分の負担部分の慰謝料は持ってほしいということができます。
不倫の慰謝料請求については早めに相談を
不倫の慰謝料の金額は裁判では一般的に低く判断される傾向にあります。もし身近な人から相談を受けたときは、慰謝料の請求が可能かどうかも含め早めに弁護士へ相談するのも一つの手です。
文・片島由賀(弁護士・勁草法律事務所)
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