相続なんてまだまだ先、と思っている人は多いかもしれません。しかし、いざその時が来ると案外戸惑うものです。相続時に慌てないよう、若い30~40代のうちから相続の基本的なことを押さえておきましょう。
相続が起こったらまずチェックしたいこと
相続が起こったらまず、遺言書があるかどうかを確認しましょう。遺言書があれば、その内容に沿って相続が進められます。これは、亡くなった方の遺産の分け方などについての思いを尊重するためです。
遺言書が残されていなければ、相続人の話し合いで分け方を決めることになります。これを「遺産分割協議」といいます。
このときに、法律上の相続人にあたる人が全員集まって話し合いがされないと、せっかく話がついて書類(「遺産分割協議書」といいます)を作っても、参加していなかった相続人からその話し合いは無効だと主張されるでしょう。
このため、誰が法律上の相続人なのか、話し合いをする前にしっかり確認しておくことが大切です。
法定相続人とは?
法定相続人とは、相続が発生したときに亡くなった人の財産を相続できる権利がある、と法律で決められた人のことです。
誰が法定相続人にあたるかは、基本的には亡くなった方の「生まれてから亡くなるまでの連続している戸籍謄本」などを入手して調べることができます。
兄弟姉妹が多かったり、養子縁組をしていたり、結婚はしていないが子供が別にいたりする場合は、少し複雑となります。
さらに、祖父母かそれより前の代からそのままになっている遺産(山林・畑などの不動産)があると、複雑な中で漏れがないよう法定相続人を探さなければならず、思ったより大変なことになる可能性もあります。
法定相続人の優先順位
民法では、法定相続人の中で一定のルールのもと、優先順位を定めています。
ルール1:配偶者は常に相続人
一つ目のルールは、亡くなった人の配偶者(夫ないし妻)は常に相続人になるというものです。
ルール2:配偶者以外は子、親・祖父母など直系の親世代、兄弟姉妹
二つ目のルールは、配偶者以外の親族で相続人になれるのは、亡くなった人の子、もしくは亡くなった人の親・祖父母など直系の親世代(血のつながりが親子関係のように直接つながっていて、自分よりも年上の世代のことを「直系尊属」といいます。親がまだ生きていれば祖父母より優先します)、または亡くなった人の兄弟姉妹となります。
この3つのグループでの優先順位が最も高いのは、亡くなった人の子です。次に亡くなった人の親・祖父母など直系の親世代、そして亡くなった人の兄弟姉妹となります。
法定相続人と法定相続分
遺産のうち、相続できる割合を「相続分」といいます。亡くなった人の意思で決める「指定相続分」と民法で決められているルールによる「法定相続分」があります。
「指定相続分」は亡くなった人の遺言に従います。遺言がなければ、「法定相続分」を目安に遺産の割合を決めます。話し合いで合意が得られれば、「法定相続分」と異なる割合で分けることも可能です。
ただ、話し合いがつかなかったとき、家庭裁判所で裁判官が判断する手続き(「審判」といいます)になると「法定相続分」に沿って決められます。
法定相続分の割合は?
「法定相続分」の割合がどうなっているかを確認してみましょう。
亡くなった人の配偶者と、亡くなった人の子供が相続するときは配偶者の相続分は2分の1、残り2分の1を子供の人数で割ります。なお、亡くなった人に婚姻外で生まれて認知をした子供がいるとき、かつては相続分が異なっていましたが、法改正により今は同じ割合とされています。
亡くなった人の配偶者と、亡くなった人の親・祖父母など直系の親世代が相続人になる場合は、配偶者の相続分は3分の2、親の相続分は3分の1です。親が両方健在であるときは6分の1ずつになります。
亡くなった人の配偶者と、亡くなった人の兄弟姉妹が相続人になる場合、配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1になります。兄弟が複数いる場合、4分の1を人数で割ることになります。
孫は相続できないの?
亡くなった人の子供・兄弟姉妹が亡くなっているときには、代襲相続になります。
ただし、兄弟姉妹の場合は1回限り(つまり、おい・めいまで)となっているため、その孫は代襲相続ができません。これは、血縁の薄い親族が棚からぼた餅的に相続するのを防ぐためとされています。
## 養子を取ったらどうなる?
養子縁組の場合も法律的に「子」となるので、法定相続人になります。
最近は子連れで再婚をする方も増えてきていますが、連れ子が亡くなった人と養子縁組をしていなければ相続人にならないので注意しましょう。
介護が終わると相続はすぐそこに
30~40代の方ですと、親の介護に関心のある方もいるかもしれません。ですが、それが終わると相続の問題は避けられない話です。
まずは終活などにも関心を持ち、たまには親御さんと落ち着いて将来のことを話し合ってみてはいかがでしょうか。
文・片島由賀(勁草法律事務所所属、弁護士)
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