――スタート当初のM-1グランプリの「結成10年以内」も、「10年やっていて結果が出せないようなら芸人に見切りをつけるべき」という島田紳助さんの考えがありましたね。

藤井 それが、2000年代に入るとカンニング竹山さんや、バラク・オバマ大統領のモノマネで再ブレイクを果たしたデンジャラスのノッチさんなど、30歳を過ぎてから売れた芸人が続々と出てきたんです。おそらく、お笑い番組が増えたからでしょうね。彼らの影響で「自分も続けていればいつかは売れるかもしれない」と、まだ売れていない芸人たちは希望を見出すようになりました。

――そこから、芸人が引退を決意するきっかけには、どんなものがあるのですか?

藤井 自分の意思というよりも、環境に左右されることが多いですね。例えば「子どもが生まれて家族を養わなければならなくなった」などですね。現実的な事情が辞める理由になることが多いです。

――家族を養うために稼がないといけないですからね。

藤井 ただ、今は昔と比べて続けることの難易度が下がってきています。昼間は会社で働いて夜はステージに立つなど、就職しながら芸人を続けている人も増えています。昔はそんな芸人いなかったですよ。まぁ、スナックを経営しながら芸人を続けているおじいさんはいましたけど……。当時は「こういうおじいさんにはなりたくないな」と思っていましたが、スナックがYouTubeに取って代わっただけで、今や僕がその側にいるのかもしれません(笑)。

――時代が変わってきたということでしょうか?

藤井 そうですね。仕事をしながら芸人を続けるということを、周囲が認めてくれる時代になったのだと思います。だって、税金は高いのに給料は上がらないなど、普通に暮らしているだけでもしんどいですからね。

――芸人という生き方も大きく変わっているようですが、リアルな芸人事情に肉薄した藤井さんのYouTubeの評判はどうですか?