藤井 僕が話を聞きたいのは「売れかけた芸人」なんです。その代表格としてハリガネロックさんがいます。『爆笑オンエアバトル』(NHK)で何度もオンエアを勝ち取り、渋谷公会堂で単独ライブを成功させるなど、「いつ売れてもおかしくない」という状態でした。それが、どうして辞めることになったのか? 絶対、未練はあったと思い連絡したんです。
――インタビューのときに心がけていることはありますか?
藤井 絶対に聴こうと決めていることはいくつかあるのですが、毎回「辞めて後悔していないか?」ということから質問しています。実はほとんどの芸人は後悔していないんですよね。
――そんな……。
藤井 というよりも、後悔してまたやりたくなったら身ひとつで、再開することができるんですよ。そのため、後悔した芸人は辞めても一年以内に舞台に戻ってきています。
――ほかにも必ず聞いている質問などはありますか?
藤井 現役、引退問わずインタビューでは「どうして芸人になったのか?」と「どんな学生時代だったか?」ということを聞いています。そうすることで、自分の中でどんどん「芸人の人生」が蓄積されていくのです。「この人はこういうパターンか」「こういうパターンだと売れる可能性があるのか」といったものが、僕の中で体系化されるんですね。
――企画のターゲットはどの層を狙っているのでしょうか? 実は同業者に向けているとか?
藤井 本当はお茶の間のみなさんに見てもらいたいんですよ。内容的にはかなり普遍的なテーマを扱っていますからね。それに、辞めた芸人インタビューというのは、一度「人生をドロップアウトした人たち」じゃないですか。そういう人がセカンドキャリアとしてどんな道を選ぶのか? つまり、このシリーズには「人生は寄り道したとしてもやり直せるんだ」というメッセージも込められています。とはいえ、今のところはコアなお笑いファンと同業者が多いみたいですけどね。