――長年インタビューを続けていて、「売れた芸人」と「売れかけた芸人」の違いはありますか?

藤井 やっぱり、売れた芸人も、売れかけた芸人も、どちらも面白いんですよ。体系化しているとは言いましたが、いま出ているひとつの答えは、結局「運に左右される」ということです。これはブラックパイナーSOSの山野拓也くんに話を聞いたときに強く思いました。

――高校在学中にコンビを結成。10代の頃から『ボキャブラ天国』(フジテレビ系)に出演するなど、ブラックパイナーSOS は90年代に人気があった印象です。

藤井 そうです。ただ、彼らが『ボキャブラ天国』に出演していたのは、番組が終わるまでのわずかな期間だけなんです。そして、同番組に出演したことで、ブラックパイナーSOSはテレビに出るチャンスを失ってしまいます。

――どうしてでしょうか?

藤井 『ボキャブラ』終了後、テレビには若手芸人が出演できるような「ネタ番組」がなくなったんです。

――確かに。2000年代の前半はベテランたちのコント番組が目立つ一方で、若手のネタ番組の印象はないですね。

藤井 そこから、テレビ局は新たにお笑い番組を作っていきます。もちろん、ブラックパイナーSOSも新番組のオーディションに参加しようとしたのですが、テレビ局側から「『ボキャブラ』の色が付くため、来ないでください」と言われてしまったそうです。

――ブラックパイナーSOSを爆笑問題やネプチューンと同じように、キャブラー(同番組の出演者)としてくくるのは難しいと思うのですが、短期間とはいえ同番組で人気が出たため、フレッシュさがないと思われたのでしょうね。

藤井 これは運が悪いとしか言いようがありません。

売れない芸人たちの希望となったカンニング竹山

――チャンスを掴めずに辞める芸人がいる一方で、売れなくても続けている芸人についてどう思いますか?

藤井 50〜60歳で売れていないのに続けている芸人が増えているというのは、時代の流れですよね。僕が芸人を始めた90年代頃は、そういった芸人はいませんでした。というのも、30歳までに売れていないと恥ずかしい。それに、若い子と一緒にライブに出るのは無理だから自ら身を引く……という、暗黙の了解があったんです。