花ちゃん、好き嫌いがないそうですね。とってもえらいな。

 なんでも結さん(橋本環奈)が小さいころから、いろいろ工夫して食べさせていたんだそうですね。花ちゃんが生まれたころといえば、結さんは管理栄養士を目指して勉強しながら星河電器の社食で栄養士として働いていました。まさしく献立作りこそが本業であり、さらに専門的な知識を身に着けようと努力していた。

 その結さんがどんな工夫をして、子どもの偏食を克服するに至ったのか。たった1エピソードでいいと思うんですよ。ニンジンとシイタケを細かく刻んだとか、ピーマンは火を通さずキンキンに冷やしてみたとか、そんなのでいい。それこそ、子どもの偏食を克服した栄養士さんにひとつふたつ取材して聞いてみればいい話です。栄養士のドラマなんだから、そういう栄養士ならではの工夫が見られたほうがおもしろいと思うし、「工夫した」とひとことで済ませることが不自然に映るんです。

 NHK朝の連続テレビ小説『おむすび』といえば「綿密な取材」でおなじみですが、どうにも物語に必要な取材が綿密に行われている形跡がないんですよね。むしろ、取材ありきでストーリーを組み上げているように見える。被災者・ナベべ(緒形直人)の初期における極端なキャラクターとか、気仙沼の缶詰嫌いのおじいちゃんとか、そりゃ被災者は取材にそう応えたんでしょうけど、そういう取材から得た素材から物語に必要なエッセンスを抽出するのではなく、素材を丸めてポンでそのままお披露目しちゃってる感じ。

 本来なら作り手の「届けたい物語」や「伝えたい思い」が先にあって、必要な取材が発生して、綿密に取材するという手順なわけですが、『おむすび』では先にお仕着せテーマとテーマに即した取材があって、その素材を「脚本家」という装置に次々に放り込んでいる。その装置が100万回のエラーを吐きながら必死のパッチで出力したスクリプトを、味気ないセットの中で俳優さんたちが演じている。そういうふうに見える。