◆“問題のある”ドナーに騙されるケースも…
――提供精子を用いて子どもを授かる場合、どのようにして精子提供者を見つけるのでしょうか?
長村:カップルによって異なります。先ほどもお伝えした通り、日本では精子提供にかんする法律上の規則がなく、精子バンクもまた、法的に認可されたものではありません。
日本産婦人科学会に登録された医療施設のなかに、精子バンクとしての役割をもつ施設はありますが、同性カップルの利用は対象外となるため、海外の精子バンクを利用する人や知人から精子提供を受ける人はいます。SNSなどで国内でドナー(提供者)を探すことも可能ですが、“問題のある”ドナーが多いため、こどまっぷではおすすめはしていません。
――“問題のある”ドナーとは何か、具体的に教えてください。
長村:基本的に海外の精子バンクでは、さまざまなリスクを避けるため「同じドナーからの子どもは国内で10家族まで」などと制限されていることがほとんどです。リスクとは、子ども同士が将来知らずに近親相姦となってしまったり、そのまた子どもたちに先天性障害が広がることを指します。日本でも個人運営の精子提供のサイトが法人として活動していることもあるので、海外の精子バンクを通さないような、国内のSNS上にいるドナーには注意が必要です。
無制限に精子提供できるため「100人に提供した実績があります」のような言葉に引っかかって精子提供してもらうと、同じコミュニティ内に何人兄弟がいるかわからないような状況が生じてしまうのです。
――そういったリスクがあっても、SNS上でドナーを探すことを選ぶ方もいるんですね。
長村:そうですね。日本には法律やガイドラインがないことは大きな原因になっていると思います。海外の精子バンクを通すと、精子の購入や輸送費でお金がかかってしまいます。ですが、国内のSNS上には「応援金として医療費を支払う」というドナーも存在し、それに食いついてしまう人もいるのです。ですが、精子を提供する側がお金を支払うのは、おかしな話ですよね。
茂田:もしかしたら自分の遺伝子を受け継いだ人間を増やしたいというような思想を持った人がお金を払っているのかもしれません。ですが、どのようなリスクがあるのか知らないまま、手っ取り早い方法でドナーを探すのは危険なので、おすすめはしません。