◆SNSで広がるリスクの高い精子提供
――SNS上にいるドナーは、自身のプロフィールを公開しているのですか?
長村:学歴や見た目の特徴などがプロフィールに書かれていますが、それが本当かどうかの証拠はありません。さらに、たった一人でやっているだけなのに「精子バンク」と自称するドナーもいて、なんとなく安全に聞こえますが、蓋を開けてみたら性感染症の検査さえ受けていないケースもあります。
茂田:文字にすると信頼できる情報のように見えてしまうんです。ですが、SNS上でのやり取りはこのようなリスクが伴うことは忘れてはなりません。
――SNS上でドナーを探すことをメリットと考える人も?
長村:精子提供以外の関わりを望まないような、ドナーとの距離を置きたいカップルは少なくありません。そのような人は、匿名性を保つためにSNSからドナーを探すケースもあります。
茂田:あとはドナーが見つからなかったり、自分が年を重ねていくことに焦りを感じ、すぐにドナーとコンタクトが取れるSNSを選んでしまうなど。さらに現代では情報収集やコミュニケーションツールがデジタルに変わってきているので、スピーディーに物事が進まないと不安を感じてしまう人もいるように感じます。
長村:こどまっぷに問い合わせしていただく方のなかには、1日でも返事がないと不安になり返信を催促される方もいます。私たちもなるべく早めの対応を心がけていますが、第三者提供ができる機関でも、数ヶ月待つことは当たり前のことです。
そういった焦りでSNS上でドナーを探した結果、生まれた子どもがドナーに会いたくても会えないなど、「出自を知る権利(生殖補助医療により生まれた子どもが、精子提供者を知る権利)」が守られない可能性もあるので、私たちも警告を鳴らし続けなければならないと感じています。