トナラー。

アンヌ遙香
アンヌ遙香
 私の友人たちはその響きに「なんのこと?」と首を傾げましたが、「明らかに他にスペースがたくさんあるのに、真横にいきなり座ってきたりする人」と説明すると、「あるある!」と大きく頷いていました。

 地下鉄の座席や飲食店、はたまたヨガスタジオ、駐車場などでも起きがちな「トナラー」現象に、みなさん一度は違和感を覚えた経験があるのでは?

 性的な目的は言語道断、糾弾する他ありませんので今回この場では考慮に入れませんが、そもそもどういう心理で……ということに率直に疑問を持っている方もいらっしゃることでしょう。

◆お寿司でビールをちびちびとやっていると……

お寿司屋さんにて
お寿司屋さんにて(※トナラーに遭遇したお店ではありません)
 先日、じつは私も体験したトナラーの怪。私は昔からどこでも一人行動、一人ご飯と言うのがまったく苦ではないタイプ。ある、カウンター席のみのコンパクトな回転寿司店に足を運んだときのことでした。

 ランチの時間帯からは少し過ぎていたせいか、お客さんはまばら。意気揚々と席につき、一人、昼ビールをちびちびとやりながら、壁にかかっているお品書きを眺めつつ、何を注文しようか……いやいや、レーンに流れてきたものを取るのが楽しいよね、なんてウキウキとお寿司を満喫しておりました。

 ちなみに一人で外食する際のポリシーとして、食べながら携帯電話を見たりというのは邪道。黙々と食べ、さっと席を立つと言うのが信条ですので早々にお店を後にしようと考えていた矢先、おもむろに私の真横、右隣の席の椅子がガっと引かれた気配が。

 納豆巻きを口に運びながら、ん? と顔を向けると、赤いウィンドブレーカーを着用したボブヘアー、40代半ばほどの女性がさっとそこに腰を下ろしたのです。

 あれ? お店の中、これだけ席が空いているんだけど…… 1席開けることもなく、ぴったりと私にくっつくような形で、女性が隣に座ってきたのです。さて次は何を食べるかとレーンへ伸ばしかけていた手を、思わず引っ込めてしまいました。