◆冷静になり、なんとなく察したこと

お寿司屋さんでビール
 そんな私の戸惑いに満ちた視線を尻目に、赤ウィンドブレーカーの女性は無表情でさっと私の目の前にあった醤油の瓶を取り自分の目の前の小皿に入れ、そしてすみやかに戻し、さらに私の右肘のあたりにあったお茶用の給湯器にグッと湯のみを押し付け、緑茶をテキパキと作り始めています。

 あまりの近さに、その湯のみから飛び跳ねたお湯のしずくがこちらに飛んできそうなほど……。彼女はこちらを一瞥することもなく、レーン内に立っていた大将に声をかけ、お任せセット1人前を注文したのでした。

 当初ドギマギした私でしたが、徐々に冷静になりなんとなく察したことは、周りから見ると、私たちは女性2人連れでお寿司を食べに来た友達同士に見えなくもないのではないかということです。

 これはもしかして、彼女は仲良しの女性2人同士でお寿司を食べに来たというふうに周囲に見せるべく、ここに座ったのではないか……と想像しました。入店してすぐになんとなく年恰好が似た同性を選びとり、隣にすみやかに着席したのでは、なんて私は直感的に感じた訳です。

◆堂々と、好きなものを好きなときに食べるべき

 これは、特に女性でたまに聞くことなのですが、一人でレストランに入れない、一人で食べていると周りから思われたくないというタイプの方がいらっしゃいます。

 もしかしたら彼女はそのタイプではないのかと。これはあくまでも想像ですが、私は彼女にとって簡易的な“エア寿司友達”となったのではないかと今では思ったり。私を、横に座っても問題なさそうな人畜無害そうな人物と判断していただけたのだとしたらそれは光栄なことですが、ひとつお伝えしておきたい!

 これからの時代、未婚率の増加、核家族化、ライフスタイル選択の多様化などの影響で、私のようなおひとり様という存在は増える一方だと言われています。どんなところでも一人で足を運び、一人で楽しめるような、自分で自分をもてなすパワーが多くの日本人には不可欠になっていくと思うのです。