代表的な生活習慣病、犬にも増加中
糖尿病
「糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの分泌量が低下したり(インスリン依存性)、十分に効かなかったり(インスリン抵抗性)で、糖分を細胞内に取り込めなくなり、血液中の糖分(血糖値)が異常に高くなって起こります。その他、クッシング症候群が原因で、高血糖になるケースも見られます。
初期には、血液中の大量の糖分を排出しようと、おしっこの量が増え、失われた水分を補うためにたくさん水を飲むようになります。また糖分が正常に利用されないため、食欲は旺盛なのにやせてきます。進行すると、嘔吐や下痢、意識障害なども見られ、命に関わります。
主な治療は、血糖値のコントロール。膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンを十分に作れない「インスリン依存性」の場合は、一生、インスリンを毎日注射し続けることになります。一方、インスリンは分泌されるのに、肥満やストレス、慢性的な炎症疾患などで、効き目が悪くなっている「インスリン抵抗性」の場合は、食事療法による体重コントロールや血糖低下剤の服用だけで改善することも。また、クッシング症候群が原因なら、その治療を行います。
糖尿病の予防には、愛犬を肥満にさせないことやストレスのない生活環境づくりが基本です。
単なる肥満や老化と間違えやすい
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
副腎(腎臓の近くにある左右一対の臓器)は、脳下垂体からの命令により、コンチゾールという副腎皮質ホルモンを分泌しています。脳下垂体や副腎に腫瘍などの異常があり、副腎皮質ホルモンが過剰分泌されて起こるのが「クッシング症候群」で、高齢犬に多く見られます。
症状は、多飲多尿、食欲増進、左右対称の脱毛、お腹が膨れる、筋力が低下した動きたがらないなどで、単なる肥満や老化と間違われることも多いようです。治療は薬物療法が中心ですが、副腎腫瘍が原因の場合は外科手術を行うことも。
また、クッシング症候群には医原性のものもあります。アレルギー疾患等による長期の副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)の投与で起こります。
「多飲多尿」の典型的な病気の一つ
尿崩症
子宮蓄膿症
大量のおしっこをし、水をガブ飲みし、水が飲めないと簡単に脱水症状を起こすのが、「尿崩症」です。体内の水分量を調節する「抗利尿ホルモン」の分泌異常や、分泌されても十分に働かないことが原因です。
抗利尿ホルモンは脳の視床下部で作られ、脳下垂体に蓄えられています。必要に応じて分泌され、腎臓がそれを認識すると水分の再吸収が促されます。ところが視床下部や脳下垂体に異常があって、ホルモンが正常に分泌されなかったり、ホルモンの分泌は正常なのに、腎臓に障害があって効きが悪いと、水分が再吸収できず、大量のおしっこになってしまいます。
治療が原因に応じて、抗利尿ホルモン製剤の投与や食事療法などが行われますが、犬が好きなだけ水を飲める環境にして、水分補給を滞らせないことが大切です。
また、子宮に膿がたまる「子宮蓄膿症」でも、尿崩症が起こります。感染菌が作る毒素(エンドトキシン)が抗利尿ホルモンの働きを止めてしまうからです。子宮蓄膿症の治療をしない限り、症状は治りません。