楽天VTIとは?
(画像=fuelle編集部)

楽天・VTIは、バンガード社のVTIを通して米国市場の大型株から小型株まで、約4,000銘柄に分散投資ができる投資信託です。類似の商品として、本家のVTIや、同じくVTIを対象として投資を行うSBI・V・全米株式インデックス・ファンドなどがあります。楽天・VTIは、各証券会社で購入が可能です。つみたてNISAの対象銘柄にも選ばれており、いくつかの証券会社ではiDeCoの運用銘柄にも採用されています。

この記事では、楽天・VTIがどのような商品なのかを解説し、楽天証券の口座開設の方法から実際に楽天・VTIを購入する手順を詳しくご紹介します。

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楽天VTIとは?本家ETFやSBI・VTI、他の米国株インデックスとは何が違う?

楽天・VTIは、正式名称を「楽天・全米株式・インデックスファンド」といいます。低コストでアメリカの株式市場に幅広く分散投資ができる投資信託の銘柄です。

商品名のVTIは、「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(Vanguard Total Stock Market Index Fund ETF)」の略で、世界最大級の資産運用会社「バンガード社」が提供している米国ETFです。楽天・VTIでは、マザーファンドを通じてこのVTIに投資することで、米国株式全体に分散投資ができます。

楽天・VTIと類似した金融商品は、本家のVTIの他、SBI・V・全米株式やeMAXIS Slim米国株式(S&P500)などがあります。これら類似商品の比較は、以下の通りです。

【楽天・VTIとその類似商品の比較】
楽天・VTI SBI・V・全米株式 VTI eMAXIS Slim
米国株式(S&P500)
基準価額
(2023年6月19日
時点)
2万2,563円 1万2,783円 219.26米ドル 2万2,076円
ベンチマーク CRSP USトータル・
マーケット・インデックス
S&P500
信託報酬 0.162% 0.0938%程度 0.03% 0.09372%以内
純資産額
(2023年6月19日
時点)
9,908億
5,300万円
1,639億
1,900万円
28兆8,888
億500万米ドル
(2023年5月31日
時点)
2兆2,811億
8,500円
トータルリターン 10.66%(1年)、
22.32%(3年)
15.20%(5年)
10.68%(1年) 22.33%(1年)、
45.39%(3年)、
66.17%(5年)
11.82%(1年)、
23.32%(3年)
運用会社 楽天投信投資顧問 SBIアセット
マネジメント
バンガード社 三菱UFJ国際投信
VTIのリターンは騰落率を表示
楽天証券SBI証券三菱UFJ国際投信の公式サイトをもとに筆者作成

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楽天・VTIの5年間の値動きは、次のようなものでした。コロナ禍の2020年前半に一時的に落ち込みましたが、その後は多少の上下があるものの、継続して基準価額を伸ばしています。

【楽天・VTIの5年チャート】

1.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

楽天・VTIの概要を紹介してきましたが、この投資信託の購入の手順を知りたい人は、ページ後半の「楽天証券での「楽天VTI」の買い方」を参考にしてください

ここからは、上記で紹介した類似商品との比較を詳しくご紹介します。

SBI・V・全米株式との違い

SBI・V・全米株式は、楽天・VTIと同じく、低コストでアメリカの株式市場に幅広く分散投資できる投資信託です。投資対象も楽天・VTIと同じで、マザーファンドを通してVTIに投資を行います。VTIへの投資比率とその他の組み入れ商品に若干差があります。

【楽天・VTIとSBI・V・全米株式の組入銘柄(マザーファンド)】
バンガード・トータル・
ストック・マーケットETF (VTI)
その他
楽天・VTI 98.6% 1.4%(株式先物)
SBI・V・全米株式 99.3% 0.7%(現金等)
楽天証券SBI証券の公式サイトをもとに筆者作成

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この表から、どちらも資産の大半をVTIに投資していることが分かります。しかし、楽天・VTIのほうは1.4%を株式先物に投資しています。この株式先物は「S&P500株価指数先物」で、これを組み入れることでベンチマークへの連動が若干高くなることが期待されています。

一方、次の表から分かるように、信託報酬は楽天・VTIのほうが高く設定されています。

【楽天VTIとSBI・V・全米株式の比較】
楽天・VTI SBI・V・全米株式
基準価額
(2023年6月19日時点)
2万2,563円 1万2,783円
ベンチマーク CRSP USトータル・
マーケット・インデックス
CRSP USトータル・
マーケット・インデックス
信託報酬 0.162% 0.0938%程度
純資産額
(2023年6月19日時点)
9,908億5,300万円 1,639億1,900万円
トータルリターン 10.66%(1年)、
22.32%(3年)、
15.20%(5年)
10.68%(1年)
運用会社 楽天投信投資顧問 SBIアセットマネジメント

楽天・VTIとSBI・V・全米株式は、どちらもほとんどの資産をVTIに投資しているため、1年間のチャートを比較してみても、ほぼ同じ値動きをしていることが分かります。なお、SBI・V・全米株式の設定日が2021年6月29日と、まだ誕生してから日が浅いため、チャートの比較期間を1年間としています。

【楽天・VTIの1年間のチャート】

2.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

【SBI・V・全米株式の1年間のチャート】

3.楽天VTIとは?
(画像:SBI証券より引用)

バンガード・トータル・ストック・マーケットETFとの違い

楽天・VTIは、間接的にバンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)に投資を行っています。しかし、最大の違いは楽天・VTIが投資信託なのに対し、VTIはETF、特に海外ETFであることです。

ETFは投資信託の一種で、日本語では上場投資信託といわれます。個別株式と同様に市場に上場しており、リアルタイムで取引できるのが特徴です。

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海外ETFは、海外の取引所に上場しているETFです。100円から投資可能な投資信託に比べ、最低投資金額が少し高い(数千円〜数万円程度)、積立投資がしにくい、外貨で管理をする必要があることなどから、購入するハードルが少し高い商品といえます。

一方、保有するときにかかる手数料は0.03%と、非常に低いのが特徴です。

【楽天VTIと本家VTIの比較】
楽天・VTI VTI
基準価額
(2023年6月19日時点)
2万2,563円 219.26米ドル
ベンチマーク CRSP USトータル・
マーケット・インデックス
CRSP USトータル・
マーケット・インデックス
信託報酬 0.162% 0.03%
純資産額
(2023年6月19日時点)
9,908億5,300万円 28兆8,888億500万米ドル
(2023年5月31日時点)
トータルリターン 10.66%(1年)、
22.32%(3年)、
15.20%(5年)
22.33%(1年)、
45.39%(3年)、
66.17%(5年)*
運用会社 楽天投信投資顧問 バンガード社
楽天証券の公式サイトをもとに筆者作成

楽天・VTIと本家のVTIの値動きは、以下のようになっています。投資対象はほとんど同じですが、為替の影響を受けるため若干異なる値動きになります。

【楽天・VTIの5年間のチャート】

4.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

【 バンガード・トータル・ストック・マーケットETFの5年間のチャート】

5.楽天VTIとは?
(画像引用:楽天証券

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eMAXIS Slim米国株式(S&P500)との違い

eMAXIX Slim米国株式(S&P500)は、楽天・VTIと同様に米国株式に幅広く分散投資ができる投資信託ですが、対象とするインデックスが異なります。

まず、eMAXIX Slim米国株式(S&P500)のインデックスであるS&P500とは、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスLLCが公表しています。アメリカの企業を幅広く代表する、約500の会社が採用されている株価指数です。

一方、楽天・VTIが連動するのを目指すCRSP USトータル・マーケット・インデックスは、米国株式市場の大型株から小型株まで約4,000銘柄で構成されており、アメリカの投資可能銘柄のほぼ100%を網羅しています。

つまり、S&P500がアメリカを代表する企業にバランスよく投資するのに対し、CRSP USトータル・マーケット・インデックスは米国市場そのものに投資する違いがあります。

【楽天VTIとeMAXIX Slim米国株式(S&P500)の比較】
楽天・VTI eMAXIS Slim
米国株式(S&P500)
基準価額
(2023年6月19日時点)
2万2,563円 2万2,076円
ベンチマーク CRSP USトータル・
マーケット・インデックス
S&P500
信託報酬 0.162% 0.09372%以内
純資産額
(2023年6月19日時点)
9,908億5,300万円 2兆2,811億8,500円点)
トータルリターン 10.66%(1年)、
22.32%(3年)、
15.20%(5年)
11.82%(1年)、
23.32%(3年)
運用会社 楽天投信投資顧問 三菱UFJ国際投信
楽天証券三菱UFJ国際投信の公式サイトをもとに筆者作成

楽天・VTIとeMAXIX Slim米国株式(S&P500)の3年間のチャートを以下に示します。eMAXIX Slim米国株式(S&P500)の設定日が2018年7月からなので、チャートの期間を3年としています。

【楽天・VTIの3年間のチャート】

6.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

【eMAXIX Slim米国株式(S&P500)の3年間のチャート】

7.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

楽天VTI(楽天・全米株式インデックス・ファンド)の詳しい情報

楽天・VTI(楽天・全米株式インデックス・ファンド)がどういったファンドなのかを、詳しくご紹介します。まず、投資信託の詳細情報と、5年間の値動きは次のようになっています。

【楽天VTIの詳細情報】
基準価額
(2023年6月19日時点)
2万2,563円
ベンチマーク CRSP USトータル・マーケット・
インデックス(為替ヘッジなし)
ファンドの種別 インデックスファンド
信託報酬 0.162%
純資産額
(2023年6月19日時点)
9,908億5,300万円
トータルリターン 10.66%(1年)、
22.32%(3年)、
15.20%(5年)
運用会社 楽天投信投資顧問
購入できる証券会社 楽天証券、auカブコム証券、GMOクリック証券、
SBI証券、SMBC日興証券、岡三証券、
松井証券、マネックス証券、PayPay銀行、
ソニー銀行、三菱UFJ銀行など
楽天証券の公式サイトをもとに筆者作成

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【楽天・VTIのチャート(5年間)】

8.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

バンガード社とは

バンガード・グループ(バンガード社)は、アメリカに本社を置く世界最大規模の資産運用会社です。

【バンガード・グループ】
業種 投資顧問・資産運用会社
設立 1975年5月1日
本社所在地 アメリカ合衆国ペンシルバニア州
運用資産
(2022年10月時点)
約8兆4,663億米ドル
従業員数
(2022年12月31日時点)
約2万人
バンガード社のサイトをもとに筆者作成

創業者のジョン・ボーグルは、世界で初めて個人投資家向けにインデックス・ファンドを設定した人物として知られています。

バンガード社は上場企業ではなく、株主が存在しません。バンガード社が提供する投資信託に投資をする投資家がバンガードの保有者になる仕組みです。これにより投資信託による利益が株主ではなく、バンガード社の商品に投資する人に還元されることになっています。投資家は、ファイナンシャル・アドバイスやリタイアメント・ツールなどにアクセスできます。

楽天VTIの投資対象銘柄

楽天・VTIの投資対象銘柄の上位10社は、次のようになっています。

【楽天・VTIの組入銘柄上位10銘柄】
順位 銘柄 比率
1 アップル 6.20%
2 マイクロソフト 5.60%
3 アマゾン・コム 2.20%
4 エヌビディア 1.60%
5 アルファベット クラスA 1.60%
6 バークシャー・ハサウェイ 1.40%
7 アルファベット クラスC 1.30%
8 フェイスブック クラスA 1.30%
9 エクソンモービル 1.20%
10 ユナイテッドヘルス・グループ 1.10%
SBI証券の公式サイトをもとに筆者作成

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楽天・VTIの投資対象であるVTIは、CRSP USトータル・マーケット・インデックスに連動することを目標に運用を行っています。CRSP USトータル・マーケット・インデックスは、米国市場で投資可能な銘柄のほぼ100%となる約4,000銘柄で構成される、時価総額加重平均型の株価指数です。組入銘柄の上位は、必然的にアメリカで時価総額の高い企業になります。

組入銘柄の上位には、アップルやマイクロソフトなどのいわゆるGAFAMと呼ばれる巨大企業や、半導体メーカーのエヌビディア、総合エネルギー会社のエクソンモービルなどが入っています。

なお、アルファベット社はクラスAとクラスCの2種類の銘柄が入っています。しかし、これは議決権の有無の違いです。クラスAは議決権がある株式、クラスCは議決権がない株式と区別されています。

楽天VTI(楽天・全米株式インデックス・ファンド)の利回りシミュレーション

楽天・VTIに投資した場合、今後どの程度の資産を形成できるか具体的にシミュレーションを行ってみます。

楽天・VTIの5年間のトータルリターンは、年率で15.20%でした(2023年6月20日時点)。このリターンが今後20年続くとした場合、資産はどの程度増えるでしょうか。

まず、100万円で楽天・VTIをスポット購入(一括購入)した場合の資産の推移は、次のようになります。

【 楽天・VTIを100万円でスポット購入した場合の資産額の推移】
元本 1年後 3年後 5年後 10年後 20年後
資産額 100万円 115万2,000円 152万8,824円 202万8,908円 411万6,468円 1,694万5,312円
※筆者作成

楽天・VTIに投資をした場合、5年後には資産が約2倍に、20年間の長期に渡って保有した場合、資産額は約1,694万円とおおよそ17倍近くに増えることになります。

次に、毎月1万円ずつ積立投資で楽天・VTIを購入する場合を見てみましょう。

【 楽天・VTIに毎月1万円ずつ積立投資した場合の資産額の推移】
1年後 3年後 5年後 10年後 20年後
資産額 12万8,723円 45万2,557円 89万601円 278万5,883円 1,540万2553円
元本合計 12万円 36万円 60万円 120万円 240万円
※筆者作成

積立投資の場合、1年や3年では効果は実感しにくいのですが、継続的に積立を続けることで、10年後には元本の約2.3倍、20年後には約6.4倍に増えることが期待できます。

楽天VTI(楽天・全米株式インデックス・ファンド)に投資する4つのメリット

楽天・VTIは、次のような特徴とメリットがあります。

1つずつ詳しく見ていきましょう。

米国株のほぼ100%をカバー

楽天・VTIはVTIを投資対象とすることで、「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」に連動する動きが期待できます。CRSP USトータル・マーケット・インデックスは、米国で投資可能な株式をほぼ100%網羅しているため、楽天・VTIはアメリカ全体の成長に投資するといういい方もできます。

以下は、2011年にCRSP USトータル・マーケット・インデックスが誕生して以来の推移です。この図を見ても分かるように、アメリカの経済は、一時的に後退することはあっても、その後回復し、長年に渡って発展してきた歴史があります。

9.楽天VTIとは?
(画像:Google Financeより引用)

楽天・VTIに投資するメリットの1つは、世界経済をけん引するアメリカの経済に投資することで、長期的に資産を増やすことが期待できる点です。

利回りが高め

楽天・VTIのリターンを、日経平均株価をベンチマークとするインデックスファンドと比較した表が次のものです。

【楽天・VTIとeMAXIS Slim国内株式(日経平均)のリターンの比較】
投資信託 ベンチマーク トータルリターン
1年 3年 5年
楽天・VTI CRSP USトータル・
マーケット・インデックス
10.66% 22.32% 15.20%
eMAXIS Slim
国内株式(日経平均)
日経平均株価 15.59% 14.14% 8.82%
楽天証券SBI証券の公式サイトをもとに筆者作成

日経平均株価は、日本の代表的な株価指数として有名です。トータルリターンは、どの期間も楽天・VTIのほうが上回っていることが分かります。

信託報酬が安い

楽天・VTIは海外資産に投資する商品ですが、比較的信託報酬が低く設定されています。楽天・VTIと日経平均株価に連動する代表的な投資信託の信託報酬を比較したものが以下の表です。

商品名 信託報酬
楽天・VTI 0.162%程度
ニッセイ日経225インデックスファンド 0.275%
たわらノーロード 日経225 0.143%以内
つみたて日本株式(日経平均) 0.198%
野村インデックスファンド・日経225 0.44%
eMAXIS Slim 国内株式(日経平均) 0.143%以内
SBI証券の公式サイトをもとに筆者作成

これを見ても分かるように、楽天・VTIは日経平均株価に連動する投資信託と同水準、もしくはさらに低い信託報酬が設定されています。

つみたてNISA・iDeCoに対応

楽天・VTIは、つみたてNISAの対象銘柄に選ばれているほか、いくつかの証券会社ではiDeCoでも利用可能です。

まず、つみたてNISAですが、この制度は特に少額からの長期・積立・分散投資を後押しするための非課税制度です。一定の投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益が非課税になることが最大の特徴です。

つみたてNISAの対象商品は、金融庁によって厳しく要件が決められています。例えば、インデックスファンドの場合は3つの政令の要件に加え、以下の共通の要件を全て満たす必要があります。

政令の要件 ・ 信託契約期間が無期限、または20年以上であること
・ 分配頻度が毎月でないこと
・ ヘッジ目的の場合などを除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと
共通要件 ・ 告示において指定されたインデックスに連動していること
・ 主たる投資の対象資産に株式を含むこと
・ 販売手数料:ノーロード
・ 受益者ごとの信託報酬等の概算値が通知されること
・ 金融庁へ届出がされていること
・ 国内資産を対象とするものは、信託報酬が0.5%以下(税抜き)
・ 海外資産を対象とするものは、信託報酬が0.75%以下(税抜き)
金融庁の公式サイトをもとに筆者作成

楽天・VTIはもちろん、これらの要件を全て満たしているため、つみたてNISAの対象商品に選ばれています。

次に、iDeCoとは、公的年金を補助することを目的とした私的年金制度です。加入は任意となっており、加入の申込から掛金の拠出、そして運用まで全て自分で行い、運用の成績に応じて将来給付を受けられます。

iDeCoのメリットは、つみたてNISAと同じく運用益が非課税になることに加え、掛金が全額所得控除の対象になることです。将来年金を受け取るときも、退職所得控除や公的年金等控除の対象になります。つまり、税金面で非常に優遇されている制度といえるでしょう。

どのような商品をiDeCoの対象銘柄とするかは、つみたてNISAのように共通の要件があるわけではなく、各証券会社によって基準が異なります。つまり、iDeCoで利用できる投資商品は証券会社によってかなり差があるということです。

2023年6月20日時点では、iDeCoで楽天・VTIを取り扱っているのは楽天証券と松井証券です。

楽天VTI(楽天・全米株式インデックス・ファンド)に投資する4つのデメリット(注意点)

楽天・VTIは厳しい選定基準があるつみたてNISAの対象商品にも選ばれているように、初心者でも安心して購入できます。しかし、次のような注意点もあります。

1つずつ詳しく見ていきましょう。

米国市場への投資に偏る

楽天・VTIは約4,000もの銘柄に分散投資をしていますが、これらは全て米国株式です。従って、この投資信託にだけ投資をしてしまうと、資産が米国資産に偏ってしまいます。

前述したように、アメリカ経済は一時的に後退することはあっても、これまで順調に発展してきた歴史があります。しかし、今後も同じように発展していく保証はありません。従って、米国株式に集中して投資をしていると、アメリカ自体の景気が傾いたとき、大きな損失が出てしまうことも考えられます。

ただし、この問題は楽天・VTIの類似商品であるSBI・V・全米株式や、本家のVTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)でも同様です。

楽天・VTIが米国株式に偏っているのは、深刻な問題ではありません。要は投資可能資産を全て楽天・VTIに投資することを避ければいいので、例えば日本国内のインデックスに連動するファンドを併用するなどして、投資地域を分散させるとよいでしょう。

投資信託の中にはアメリカを含む先進国全体に分散投資を行うものや、さらに新興国を加えた全世界の株式を対象とした銘柄もあります。より広い分散投資をしたいのであれば、これらの投資信託も代替候補として検討しましょう。

分配金がない

楽天・VTIには、分配金がありません。

分配金というのは、投資信託の運用によって得られた収益の一部を投資家に分配するお金のことです。収益がない場合は、元本から分配されることもあります。

つまり、楽天・VTIは保有している間はお金が受け取れず、売却して初めて利益が出るタイプの投資信託となります。

これは一見デメリットに思えます。しかし、分配金が出ない代わりに運用益をさらに投資に回すことで、長期的にはより大きな利益が期待できます。

例えば、年率5%のリターンが期待できる投資信託で、分配金がある投資信託と分配金が再投資する投資信託を比べてみましょう。投資額は100万円とし、分配金が出る投資信託は1年ごとに3万円分配されるとします。

1年後 2年後 3年後 4年後 5年後
分配金あり
(年間3万円)
基準価額 105万円 107万1,000円 109万305円 111万6,203円 114万513円
分配金 3万円 3万円 3万円 3万円 3万円
分配金後の
基準価額
102万円 104万1,000円 106万305円 108万6,203円 111万513円
分配金なし 基準価額 105万円 110万2,500円 115万7,625円 121万5,506円 127万6,282円
※筆者作成

分配金がある投資信託の利益は、5年間で増えた資産に分配金を加えた金額、つまり 111万513円 - 100万円 + 3万円 × 5 = 26万513円 になります。

一方、分配金なしの投資信託の利益は、127万円-100万円=27万円です。

このように、分配金なしの投資信託は、運用して得た利益にさらに利益がつく複利効果により、長期的に分配金ありの投資信託より利益が大きくなることが期待できます。

同様の指数に連動する、よりコストの低い商品がある

楽天・VTIはCRSP USトータル・マーケット・インデックスに連動することを目的にしており、類似商品として同じ指数に連動することを目指すSBI・V・全米株式と、本家のVTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)があることはご紹介しました。

これらの信託報酬を比べてみると、楽天・VTIのコストは比較的高いことが分かります。

商品名 楽天・VTI SBI・V・全米株式 VTI
信託報酬 0.162% 0.0938%程度 0.03%
楽天証券SBI証券の公式サイトをもとに筆者作成

なお、本家のVTIの信託報酬が最も低いのは当然で、楽天・VTIとSBI・V・全米株式は本家のVTIを対象として投資を行っているため、信託報酬の内訳はそれぞれ

楽天・VTI:運用管理費用0.132%+投資対象のVTIの信託報酬0.03% SBI・V・全米株式:運用管理費用0.0638%+投資対象のVTIの信託報酬0.03%

となっています。

本家のVTIはETFであり、信託報酬は低いものの積立投資には不向きのため、積立投資を考えているのであれば楽天・VTI、スポット購入であればVTIと使い分けるのもいいでしょう。

SBI・V・全米株式は投資信託の仕組みも楽天・VTIとほぼ同じのため、両方選べる環境であれば、より手数料が低いSBI・V・全米株式を選ぶのもいいかもしれません。

楽天証券での「楽天VTI」の買い方

ここからは、具体的に楽天証券で楽天・VTI(楽天・全米株式インデックス・ファンド)を購入する手順をご紹介します。楽天・VTIは楽天証券以外でも購入できますが、他の証券会社でも基本的な購入手順は同一ですので、参考にしてみてください。

なお、楽天証券で金融商品を購入するには、まず楽天証券に会員登録する必要があります。詳しい方法は下記を参考にしてください。以下の記事では、口座開設からつみたてNISA登録までの手順を紹介しています。

STEP1:楽天証券にログイン後、「投資信託」を選択

  1. 楽天証券の公式サイトに行きます。
  2. 画面右の「総合口座ログイン」に、自身の「ログインID」と「パスワード」を入力します。
  3. 「ログイン」をクリックします。
10.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)
  1. 画面上部の「投資信託」をクリックします。
11.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

STEP2:「楽天VTI」を探す

  1. 「投資信託トップ」の画面が表示される。上部の「投資信託を探す」をクリックします。
12.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)
  1. 「投資信託を探す」画面が表示される。「キーワードから探す」欄に「楽天・VTI」と入力して、「検索」をクリックします。
13.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)
  1. 「投信スーパーサーチ」画面が表示される。楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天・VTI)が表示されていることを確認し、商品名をクリックします。
14.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

STEP3:「積立注文」または「スポット購入」を選択

  1. 「楽天・全米株式インデックス・ファンド【愛称】楽天・VTI」の商品ページが表示されます。
  2. 購入方法を「スポット購入」もしくは「積立注文」から選びます。ここでは、「積立注文」の手順を紹介します。
15.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

STEP4:引落方法を選ぶ

  1. 積立注文(受付)画面が表示されます。
  2. 引落方法を、「証券口座(楽天銀行マネーブリッジ)」「楽天キャッシュ(電子マネー)」「楽天カードクレジットカード決済」「その他の金融機関」の4種類の中から選びます。ここでは、「証券口座(楽天銀行マネーブリッジ)を選んでいます。
16.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)
  1. 毎月の積立日を指定します。
17.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

STEP5:積立金額を入力する

  1. 毎月の積立金額を設定します。100円以上、1円単位で設定が可能です。
18.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

STEP6:ポイント利用設定をする

  1. 楽天証券では投資信託の購入に楽天ポイントを使用できます。ポイントを利用したい場合は、ポイント利用の項目の「設定する」をクリックして、ポイント利用の設定を行います。
19.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

STEP7:分配金コースを選択する(再投資型)

  1. 分配金コースを選択します。「再投資型」では、受け取った分配金を同じ投資信託(楽天・VTI)の買い付けに使い、受取型では分配金は総合口座の買付資金となります。楽天・VTIでは分配金はないので、どちらを選んでも大差はありません。ここでは、「再投資型」を選んでいます。
20.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

STEP8:口座を選択する

  1. 投資信託を管理する口座を選びます。「特定」は、楽天証券が年間の取引の記録をまとめてくれます。しかし、「一般」は全ての取引を自分で記録しておく必要があります。特にこだわりがなければ、「特定」を選びましょう。
21.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)
  1. ボーナス月に積立を増額したい場合、ボーナス設定で「する」をクリックします。オプションとなっており、必ず設定する必要はありません。
22.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

STEP9:目論見書と約款を確認する

  1. 「積立注文(目論見書等の確認)」画面が表示されます。
  2. 「目論見書等を閲覧する」をクリックします。
23.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)
  1. 目論見書と補完説明書が表示されるので、内容を確認します。

STEP10:注文内容を確認し、暗証番号を入力して発注する

  1. 「積立注文(確認)」画面が表示されます。
  2. 注文内容が表示されるので、確認します。
24.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)
  1. 楽天証券の取引暗証番号」を入力し、「注文する」をクリックします。
25.楽天VTIとは?
(画像:楽天証券より引用)

楽天VTIはiSPEEDで購入できる?

楽天証券では、スマートフォンで簡単に取引ができる高機能トレーディングアプリ「iSPEED」を提供しています。

しかし、今回ご紹介している楽天・VTIは、残念ながらiSPEEDで注文できません。

iSPEEDで取引できる商品は、国内株式(現物取引または信用取引)と、米国株式(現物取引または信用取引)のみです。つまり、実際に上場している銘柄しか取引ができないということです。

楽天・VTIはこれまでご紹介してきたように、投資信託ですので、上場はされていません。従って、iSPEEDでは銘柄名で検索しても表示されず、購入できません。

楽天・VTIを購入する際は、上記で紹介した「楽天証券での「楽天VTI」の買い方」を参考に、パソコンから注文をしましょう。

iSPEEDとは

iSPEEDは、楽天証券が提供するトレーディングアプリです。iPhoneやAndroidで利用できる「iSPEED for iPhone/Android(以下iSPEED)」、iPadで利用できる「iSPEED for iPad」、スマホでFXトレードができる「iSPEED FX」と先物取引ができる「iSPEED 先物OP」が展開されています。

iSPEEDの特徴は、最短3タップで注文できるシンプルな注文システムに加え、約定をリアルタイムで通知する約定アラートが搭載されている点です。パソコン並みの豊富な投資情報も閲覧でき、スマホがあればいつでもどこでも発注ができます。

楽天VTI(楽天・全米株式インデックス・ファンド)に関してよくあるQ&A

Q.楽天VTIとVTIの違いは何ですか?

A.最も大きな違いは、VTIが米国株式に直接投資をするETFなのに対し、楽天VTIはマザーファンドを通してVTIに投資する投資信託である点です。 つまり、VTIはETFの商品名ですが、楽天・VTIはVTIに投資する投資信託といえます。VTIは上場されているので刻一刻と価格が変わりますが、楽天・VTIは1日を通して1つの基準価額となります。

Q.SBI証券のVTIとは?

A.SBIアセットマネジメントが運用する「SBI・V・全米株式インデックス・ファンド(愛称:SBI・V・全米株式)」という投資信託のことです。 SBI・V・全米株式は楽天・VTIと同じく、マザーファンドを通してVTIに投資を行います。

Q.SBI VTIはどこで買える?

A.SBI・V・全米株式を販売している金融機関は、2023年6月22日時点で「SBI証券」「auカブコム証券」「松井証券」「千葉銀行」の4社です。

Q.楽天VTIの売買手数料はいくらですか?

A.売買時に直接的にかかる手数料はありません。 楽天・VTIでは、購入時にかかる「購入時手数料」および換金時にかかる「信託財産留保額」がいずれもゼロに設定されています。投資信託の保有時にかかる費用(信託報酬など)はありますが、売買手数料はありません。

Q.VT と VTI どっちがいい?

A.アメリカの成長に期待するならVTI、世界全体に投資をしたいならVTがおすすめです。 VTは「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」の略称で、VTIと同じくバンガード社が提供する全世界の株式を対象としたETFです。アメリカに加え、ヨーロッパやアジア、オセアニアなどにも投資対象が広がるため、より高い分散効果が期待できます。 ただし、やはりアメリカは成長力が高い国ですので、ここ5年のリターンの観点から見ればVTIのほうが高くなっています。

Q.VooとVTIどちらがいい?

A.両方とも優れた商品なので、どちらでも構いません。 VOOは「バンガード・S&P500 ETF」の略称で、S&P500に連動することを目標とするETFです。VTIのインデックスである「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」が全米の4,000銘柄で構成されるのに対し、S&P500はアメリカの代表的な企業約500社がバランスよく選ばれています。 VTIのほうがより分散効果が高いことが期待できますが、実際のパフォーマンスは大差ありません。

松岡紀史
筑波大学大学院経営・政策科学研究科(現システム情報工学研究科)でファイナンスを学び、修士(ビジネス)を取得。2010年、保険・投資信託を売らない完全に中立なファイナンシャル・プランニングを提供するため、神戸で「ライツワードFP事務所」を設立。マネーセミナーや執筆のかたわら、10年以上フィー・オンリーのファイナンシャル・プランナーとして従事している。

■保有資格:日本FP協会認定AFP
筑波大学大学院経営・政策科学研究科(現システム情報工学研究科)でファイナンスを学び、修士(ビジネス)を取得。2010年、保険・投資信託を売らない完全に中立なファイナンシャル・プランニングを提供するため、神戸で「ライツワードFP事務所」を設立。マネーセミナーや執筆のかたわら、10年以上フィー・オンリーのファイナンシャル・プランナーとして従事している。

■保有資格:日本FP協会認定AFP

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