国民年金は、自営業者など第1号被保険者が加入する年金です。しかし、会社員などが加入している厚生年金と比べて受給額は少なく、老後の生活に不安を覚える人も少なくありません。そのため、受給額が上乗せられる国民年金基金や付加年金にもあわせて加入する人もいます。ここでは、「国民年金基金」「付加年金」といった2つの年金について、詳しく解説します。

国民年金基金と付加年金との違い

(写真=PIXTA)

国民年金基金も付加年金も、国民年金にプラスして加入する年金です。両者の違いを簡単に紹介します。まず、両者には次のような共通点があります。
 

加入対象者 国民年金の第1号被保険者・任意加入被保険者(65歳以上を除く)
加入条件 国民年金保険料の納付(ただし、保険料の未納・免除・猶予は対象外)
途中の掛け金の払い戻し できない
給付方法 定額が支払われる
所得控除 社会保険控除として全額控除
物価スライド なし

一方で、掛け金は、付加年金が月額400円に対して、国民年金基金は上限月額6万8,000円です。また、付加年金では途中変更ができませんが、国民年金基金の2口目以降は増減ができます。任意解約についても、付加年金はいつでもできますが国民年金基金はできません。

受給の開始年齢は、付加年金は原則65歳ですが、60歳まで繰り上げて受給することができます。一方、国民年金基金は60歳または65歳で、繰り上げ受給はありません。付加年金の受給金額は、「200円×付加保険料納付月数」ですが、国民年金基金はプラン、口数によって、金額が異なります。最後に受給期間ですが、付加年金は亡くなるまでです。一方、国民年金基金の場合は、終身、または前もって決められた受給期間になります。

国民年金基金のメリットとおすすめの人

(写真=PIXTA)

国民年金基金のメリット

国民年金基金は、国民年金と違って強制加入ではなく、自分の意思で始められます。しかも、毎月の掛け金は少額で、金額を自由に設定することができます。そのため、少ない掛け金から始めて余裕ができれば、徐々に掛け金を増やすこともできるのです。掛け金は、すべて所得控除の対象のため、所得税、住民税が軽減されることになります。

民間の個人年金の場合、平成24年1月以降に契約したものは、年間4万円までしか所得控除されませんから、かなり優遇されていることになります。また、年金を支給される場合には、国民年金基金からの支給額が、雑所得の公的年金控除が適用されますので、この点も大きなメリットです。ちなみに、民間の保険会社が取り扱っている年金では、この控除は適用されません。さらに、加入者が死亡した際に遺族に支給される一時金も非課税です。

国民年金基金が向いている人

国民年金基金に向いている人は、「自分で積極的に投資しよう」と思っていない人です。「誰かに運用をお任せしたい」と考えている人には、最適です。また、「掛け金の所得控除を利用して節税したい」「老後の計画を立てるために、あらかじめ受給される年金額を把握しておきたい」人にも向いています。

付加年金のメリットとおすすめの人

(写真=PIXTA)

付加年金のメリット

付加年金は、国民年金基金と違って、月額400円で手軽に始められます。受給し始めて2年で掛け金の元が取れるのも魅力ですね。さらに、国民年金基金とは違って途中で解約したり、再開したりすることができるため自由度が高いです。また、死亡するまで受給できる点も魅力があります。

付加年金がおすすめの人

付加年金の受給額は、「200円×納付月数」ですから、納付期間が長ければ長いほど、多くなります。しかし、掛け金が少額であるため、最大40年間加入しても、年9万6,000円しか受給できません。「年金の掛け金は、それほど負担できない人」「国民年金、厚生年金を少しでもプラスに受け取りたい人」には、向いています。

付加年金から国民年金基金への切り替えもおすすめ

(写真=Monster Ztudio/Shutterstock.com)

付加年金と国民年金基金は、同時に加入できません。「とりあえず付加年金を始めて、余裕ができたら、国民年金基金に切り替える」方法もおすすめです。国民年金だけに加入している人の多くは、老後の生活費が気がかりですよね。国民年金基金、付加年金の加入も検討してみてください。

文・井上通夫(行政書士・行政書士井上法務事務所代表)

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