2025年1月期の地上波ドラマのなかで、特に視聴者から高い支持を受けた作品といえば、バカリズムが脚本を担当した日本テレビ系ドラマ『ホットスポット』(毎週日曜夜10時30分)がまっさきに挙げられるだろう。

 同ドラマは、富士山麓のビジネスホテルで働くシングルマザーの主人公・遠藤清美(市川実日子)と職場の先輩である宇宙人の高橋孝介(角田晃広)の交流を中心に描く“地元系エイリアン・ヒューマン・コメディー”。

 2023年1月期に日テレ同枠で放送された、バカリズム脚本の『ブラッシュアップライフ』のチームが制作を手掛け、ユーザー投稿型のドラマレビューサイト「Filmarks」では5点満点で4.2点の高得点を獲得。ちなみに『ブラッシュアップライフ』は同サイトで4.5点を獲得しており、2作連続での高評価となっている。

 ヒット作を続けざまに生み出すバカリズムは、脚本家としてどういった部分が今の視聴者に刺さっているのだろうか。コラムニストでドラマ評論家の吉田潮氏が分析する。

「ウケるドラマにおいては、まず女性視聴者に刺さるかどうかが重要です。そしてその時代の“理想”ではなく“等身大”の女性像を捉えているか、共感を得られるかという点において、バカリズムさんは秀逸。これまで男性の脚本家だと、どうしても女を“下”に捉えた描き方をするか、あるいは聖母化、美化しがちな色合いが濃かったものです。

 バカリズムさんの場合、基本的に、女の面白さやしょっぱさに敬意を払いつつも、美化することはなく、嘘くさくならない。『そんなセリフ言わねえよ』、みたいなのがないんです。このあたりは、さすが芸人として磨かれてきたセンスなのかなと思いますね。

『ブラッシュ―』も『ホットスポット』も、このしょっぱい女たちが淡々と日常を送っているから、親近感とリアリティがある。繰り広げられる会話劇に中身はないんだけど、そのどうでもいい会話にこそ、役者の見せ場があるし、地続きだと感じさせます」(吉田氏)