――お子さんと関わるなかで「理解できない」という状態から少しずつ変化が見られたんですね。

アミアさん:「理解しなくてもいい」と思うようになり、それからは気持ちがラクになりました。カミングアウトを受けた当初は悩みましたが、最終的には理解できないことを自分で認めたというか。子どもや当事者のために勉強はしてきたけれど、私自身も助けてもらいたいし、「親にもアライが必要だ」と思うようになりました。

時間はかかりましたが、今はリラックスした状態で過ごせています。子どもを愛する気持ちがあれば、ほかはどうでもいい。「子どもは子ども」と受け入れられるようになりました。

◆世代によって異なる価値観とどう向き合うか

アミア・ミラーさん
――理解できないことの理由として、価値観の世代差が大きいように感じました。世代間ギャップについて、詳しく聞いてもいいですか?

アミアさん:50代以降の親にとって、今の若者の考え方は理解できないことが多いと思います。「パーティシペーショントロフィー(直訳すると「参加賞」。そこにいるだけでトロフィーがもらえること)」という言葉があるように、今の世代はその人が存在しているだけでいいという考えをもっています。

具体例を挙げると、サッカーの試合では勝ったチームだけがトロフィーをもらいますが、今の20代は、試合に勝たなくても、参加した人みんなが同じように評価されるべきという考えをもっているということ。つまり、努力しなくても評価され、がんばらなくても褒めてもらえるという考え方が当たり前になっているのです。

その結果、仕事でも「時間通りに出勤しなくても、今来たんだからいいじゃない」という考えをもつ若者が増えてきました。親世代からみると「どの立場の人が言っているんだ」とか「どこでそんな決定権を手に入れたんだ」と言いたくなるわけです。自分を大切にすることはいいことですが、それだけでは社会でうまくやっていけません。もう少し現実的に考えるべきだと思いますが、それを言うと「古臭い」と思われてしまうのも事実。なので、この世代間で現れる価値観の違いとうまく向き合う必要があると感じています。