◆プロテスト合格。空手では得意なキックを封印

『春に散る』の撮影終了後、横浜は、日本ボクシングコミッション(JBC)のC級(4回戦)プロテストを受けて合格している。映画が終わっても、取り組みをやめないとは作品や役に対しての並々ならぬ意欲を感じるではないか。そして、それだけ徹底的に鍛えたこともわかる。

でもそれが、そのまんま生かされるかというとそういうわけではなく、プレスシートのプロダクションノートによると「空手のパンチを、力を抜いてスピードにのせて打つコンビネーションパンチに変えていった。当然ながら蹴りは封印されるため、間合いの距離や重心の位置も変わる」そうで、これまでやってきたこととは違う技能を求められていたのだ。

先述の『まつもtoなかい』で空手ではキックが得意だったとも語っていて、得意な技を封印されていたのである。

横浜流星 「巌流島」
それでも横浜流星の首から肩にかけてのたくましさには圧倒的だ。燃えるエネルギーがその肩のなかに詰まって見える。それが本物であることは、宮本武蔵を演じた主演舞台『巌流島』(23年)で、武術としての空手の身体性は剣の殺陣とは違い上半身が前かがみになってしまうクセを殺陣師の諸鍛冶裕太に修正されていたことが証明するだろう。

“見せる”殺陣とは違う、実戦の動きと身体を横浜は持っていて、舞台ではネックとなり、『春に散る』ではそれが生きたのだ。