とはいえ、イボを洗浄シャワーで戻すのは、温水洗浄便座の正しい使い方ではありません。同様に、「便秘の時に洗浄シャワーで排便を促す」というのも「温水洗浄便座の目的ではなく、正しい使い方ではない」と山口先生は忠告します。間違った使い方は思わぬトラブルの原因にもなりかねないので、注意が必要です。

◆温水洗浄便座の正しい使い方

 そこで気になるのが、温水洗浄便座の正しい使い方。山口先生に伺ってみたところ、医師としての観点では、次のような使用方法が望ましいとのことでした。

・緩い便が出たときなど肛門周辺が汚れたときだけ使用する

・かゆみなどがあるときは使用しない

・洗浄シャワーで洗うのは、肛門の中ではなく周囲のみ

・水温は、熱すぎず冷たすぎず、人肌くらいの温度

・洗浄シャワーの強さは強すぎないように

・あてる長さは10秒くらいでじゅうぶん

 洗浄シャワーを強い勢いであてたり、1分2分と長時間使用したり、肛門の中まで洗っていたという患者さんの中には、直腸に水が溜まってあとから漏れてきた人もいるとのこと。

「お風呂でも洗いすぎたり長湯をすると、肌が乾燥してかゆくなりますよね。おしりも同じで、洗いすぎや長時間の使用はよくありません。何事もやりすぎは禁物。温水洗浄便座も正しく適度に使ってください」と山口先生。かゆみがあるとついあてたくなりますが、おしりに違和感があるときは洗浄シャワーの使用を控えた方がいいそうです。

◆温水洗浄便座は使いすぎると痔になる?

 一方で、「温水洗浄便座の使い過ぎで痔になる」などのウワサもあり、洗浄シャワーの使い過ぎでかゆみやただれなどを引き起こす「温水便座症候群」なるものも言われていて、実際どうなのか気になるところ。

温水洗浄便座は使いすぎると痔になる?
 山口先生によれば、温水便座症候群は医学用語ではなく、肛門科の医師による研究報告のひとつだそうです。

「温水便座症候群は、洗浄シャワーの使用でかゆみなどが起きるとされていますが、長年使用していてもかゆみがないという人もいるので、症状の有無は個人差があります」とのことで、正しく使用していればそれほど心配しなくていい様子。