映画『九十歳。何がめでたい』で、草笛光子が佐藤愛子を演じたが、文壇には90歳越えでも元気な人たちが多い。文字を書くことが脳の働きを活発にして、ボケない、衰えないのだろうか?
だがいくら元気でも、老いは突然襲ってくる。筒井も4月4日に家の廊下で突然、ぶっ倒れたそうだ。
頚椎をやられ麻痺で全身が思うように動かないため、近くの病院に入院することになった。入院前にご馳走を食べておこうと、寿司やら刺身やらを二晩続けて食べたそうだが、それがためにえらい目に合ったという。
「何やらあちこちが痛くて、苦しくて、悲鳴を上げてね。『助けてくれ』って言っても、看護師が廊下で笑っている。ひどいところでした」
そこからリハビリ病院へ移り、一気によくなったそうだ。朝と午後にリハビリ。健康寿命が延びたという。
今は老人ホームに奥さんと一緒に移り住み、暮らしているそうだ。入院後初のインタビューがこのポストだという。
来年で結婚生活も60年になる奥さんのことは、
「入院中は寂しいんだけれども、一方ではやっぱり、自分を愛してくれている人間がいるんだということを強く思うだけでも、なんか救われるんだよね。それはもう、お互いに愛し合っていることははっきりしている。何も言わなくても、はっきりしているわけだから。この施設にも二人きりで、ということです」
と、のろけている。結婚生活が60年近くにもなって、こうハッキリいえるのは凄い。よほどできた奥さんなんだろう。
手が痺れているから原稿も書けないようだが、『文學界』で連載している原稿だけは書いているようだ。
こんなことを最後にいっている。
「これまで、『老人の美学』ということを言ってきたけれども、やっぱり、それは醜い場面もあるわけなんです。だけど、その醜いところを、なるべく醜く見せない工夫が、美学になるんでしょうね。なかなか人間、達観しないものです。だけど、それを達観したように見せるんですよ(笑)」