テネシー州内外のいくつかの警察や保安官事務所も、ウィームズ保安官に共鳴し同様の呼びかけを発信した。

 ペリー郡ではその後、州立公園内でもこうした紙幣が見つかった。テネシー州の南に隣接するアラバマ州オレンジ・ビーチでは6月、アウトドア施設に遊びに来ていた1歳1カ月の男児が落ちていたドル紙幣を拾おうとしていたのを家族が見つけ、止めた。家族はウィームズ保安官の書き込みを読んでいて、危険を察知した。警察が調べたところ、フェンタニルが包まれていたことが判明した。

 7月にはテネシー州ナッシュビルで、家族と共にケンタッキー州から遊びに来ていた女性が、ハンバーガーショップのマクドナルドで1ドル紙幣を拾った後に、突然、呼吸ができなくなり病院に担ぎ込まれた。拾った紙幣からはフェンタニルの成分は確認されず、警察は症状を引き起こした原因を突き止めきれなかったが、女性と夫が全国ネットの朝のニュース番組に出演して「恐怖体験」を話したため、紙幣問題は一段と注目を集めることになった。

 ただ、このあたりから、「危険だが、そこまで恐怖を感じることはないのではないか」との声が強まった。フェンタニルはオピオイドの中でも毒性が強く、米疾病対策センター(CDC)によると、毒性はヘロインの約50倍、モルヒネの約100倍と言われている。正規に処方されるフェンタニルは激痛を鎮静させるための薬だが、違法に製造されたフェンタニルはほんの少量の摂取でも死に至ることがある強さだ。