50代になると、老後の資金について不安を感じる方が増えるのではないでしょうか。そんな方におすすめなのが、つみたてNISA(新NISA)です。今回は、50代でつみたてNISA(新NISA)を始める方に向け、おすすめのファンド10選を紹介します。50代向けポートフォリオや、iDeCoと新NISAどちらがよいかについても解説しましょう。
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目次
- 積立NISAは50代で始めても大丈夫!遅くない!
- つみたてNISA(新NISA)で50代におすすめのファンド10選
- eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)
- 三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)【愛称:マイパッケージ】
- DCニッセイワールドセレクトF(安定型)
- たわらノーロードバランス(堅実型)
- eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
- SBI・V・S&P500インデックス・ファンド【愛称:SBI・V・S&P500】
- 野村スリーゼロ先進国株式投信
- <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
- SBI・全世界株式インデックス・ファンド【愛称:雪だるま(全世界株式)】
- つみたてNISA(新NISA)で50代におすすめのファンドが揃う証券会社
- 50代からの積立NISAにはiDeCoも併用しよう
- 50代は積立NISAと一般NISAのどちらがよい?
- 50代のモデルケースで見る積立NISAの活用法!
- 50代でも迷わず積立NISAを始めよう
- 積立NISAは50代で始めて大丈夫?Q&Aでチェック
積立NISAは50代で始めても大丈夫!遅くない!
結論からいえば、「つみたてNISAを50代で始めるのは遅い」ということはありません。この制度の年齢制限は「18歳以上」のみで、上限はないことが理由の一つです。
つみたてNISAには「最長20年間非課税で運用できる」という大きな特徴がありますが、必ず20年間運用しなければならないわけではありません。積み立てている銘柄の状況を見ながら、途中で売却(現金化)もできます。
つまり「50歳で始めると70歳まで運用を続けなければならない」というわけではありません。70歳まで積立を継続できるか不安に思っていた人も、これなら安心して始められるのではないでしょうか。
ただし安定的に収益を得ることを期待するなら、できるだけ長期で運用することが大切です。例えば65歳まで続ける場合、50歳で始めれば15年間、55歳で始めても10年間運用できます。このように50代なら、ある程度の長期運用も見込める年齢です。始めるのに遅すぎるということはないでしょう。
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53歳で開始し、毎月3万3,000円ずつ積み立てる場合に老後にどのくらいの資産になっているか、シミュレーションしてみましょう。
60歳時 (7年後) |
65歳時 (12年後) |
70歳時 (17年後) |
|
---|---|---|---|
積立元本 | 277万2,000円 | 475万2,000円 | 673万2,000円 |
1%で運用できた場合 | 287万86円 | 504万6,644円 | 733万4,749円 |
3%で運用できた場合 | 308万8,283円 | 571万1,450円 | 876万7,858円 |
5%で運用できた場合 | 331万846円 | 649万3,203円 | 1,057万7,309円 |
利回りによって運用成果は変わりますが、53歳で始めても70歳で老後資産をある程度準備できそうです。65歳や70歳まで働く人が増えている昨今は、退職までの時間を長く取りやすくなっているので、つみたてNISAを積極的に活用すべきでしょう。
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つみたてNISA(新NISA)で50代におすすめのファンド10選
50代は、自分のリスク許容度にあったものを選びましょう。一口に投資信託といっても、銘柄ごとにリスク・リターンは大きく異なります。
投資信託は、多くの投資家から集めたお金をまとめて、運用の専門家が国内外の株式や債券などに分散投資して運用する金融商品です。「1つの投資信託に株式や債券などが含まれているもの」と考えるとわかりやすいでしょう。
それぞれの配分は運用方針によって異なり、例えば「積極的に利益を狙う」という方針ならリスクは高め、「リスクを抑えながら安定したリターンを目指す」という方針ならリスクは低めです。
自分のリスク許容度に合わないものを選ぶと、期待するような運用成果を得られなかったり、思わぬ値動きに慌てたりしかねません。
例えば、自分のリスク許容度からすると「年間平均利回りが5%程度のもの」を選んでも問題ないのに、2%程度のものを選ぶと本来期待できるリターンを得られません。逆に、リスク許容度が低いので「債券を中心に投資するものやインデックスファンド」を選ぶべきなのに、ハイリスクの外国株式銘柄を選ぶと、大きな値動きに翻弄されるおそれがあります。
50代におすすめの銘柄を紹介します。定年に近づいていくことを考え、ある程度リスクが低く安定運用を目指すものを中心にピックアップしました。
eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)
特徴 | 日本、先進国、新興国の株式と債券、 先進国と日本のREIT(不動産投資信託)の 8資産に12.5%ずつ投資しているバランス型。 |
---|---|
純資産総額 | 1,545.48億円 |
基準価格 | 1万3,610円 |
信託報酬(年率) | 0.154% |
購入時手数料 | なし |
つみたてNISAで買える 金融機関の例 |
楽天証券、SBI証券、松井証券、auカブコム証券など |
リターンを求めることも大切ですが、50代の人にとっては老後のための資産が減るのは極力避けたいものです。「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」は国内外の株式・債券・不動産にバランス良く投資しているため、安定したパフォーマンスを期待できます。老後に向けてじっくり運用するのにおすすめです。
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三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)【愛称:マイパッケージ】
特徴 | 国内外の株式に30%、債券に65%と、 債券投資に重点を置いた投資している 低リスク・安定成長型。 |
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純資産総額 | 164.27億円 |
基準価格 | 1万6,430円 |
信託報酬(年率) | 0.242% |
購入時手数料 | なし |
つみたてNISAで 買える金融機関の例 |
楽天証券、SBI証券、マネックス証券、auカブコム証券など |
「三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)」は債券投資に重点を置いた投資信託です。特に国内債券の比重が高いのでよりリスクは低めでしょう。リスクが低めでありながら、安定的な成長が期待できます。
DCニッセイワールドセレクトF(安定型)
特徴 | 投資対象は国内債券が中心で、 株式の割合は純資産総額の25%以下、 外貨建資産は45%以下。 「DCニッセイワールドセレクト」 シリーズにおいて、最もリスクが低い投資信託。 |
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純資産総額 | 100.18億円 |
基準価格 | 1万896円 |
信託報酬(年率) | 0.154% |
購入時手数料 | なし |
つみたてNISAで買える 金融機関の例 |
SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券など |
50代の人の中には、「つみたてNISAではとにかくリスクを抑えたい」という人もいるでしょう。「DCニッセイワールドセレクトF(安定型)」は国内債券中心の銘柄のため、そのような人にもおすすめです。
ただし過去3年間のトータルリターンは1.55%ですが、過去1年で見るとマイナス0.64%なのでリスク許容度が低い人は注意してください。
たわらノーロードバランス(堅実型)
特徴 | 日本・米国・欧州・アジアと、 約50ヵ国・地域の株式市場の 値動きに連動する投資成果を 目指している投資信託。 |
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純資産総額 | 5997.04億円 |
基準価格 | 16,619円 |
信託報酬(年率) | 0.1144% |
購入時手数料 | なし |
つみたてNISAで買える 金融機関の例 |
SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券など |
「とにかく堅実に運用したい人」には、国内外の債券が70%を占める「たわらノーロードバランス(堅実型)」もおすすめです。ただし過去3年間のトータルリターンは0.3%と低く、過去1年間ではマイナス6.98%です。それでも2017年の設定以来、純資産総額は順調に増加しています。
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)
特徴 | 日本・米国・欧州・アジアと、 約50ヵ国・地域の株式市場の値動きに 連動する投資成果を目指している投資信託。 |
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純資産総額 | 5997.04億円 |
基準価格 | 16,619円 |
信託報酬(年率) | 0.1144% |
購入時手数料 | なし |
つみたてNISAで買える 金融機関の例 |
SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券など |
全世界の株式市場を対象とした投資信託の中でも「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」は純資産総額が5,997.04億円と、他の全世界型投資信託に比べて圧倒的な規模を誇る投資信託です。
純資産総額が大きいということは、「その投資信託に投資する人が多い」「運用が上手く、投資家から預ったお金をしっかり増やしている」ということです。全世界の株式に分散投資ができます。
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
特徴 | 米国株式の値動きを示すS&P500指数に 連動するように運用されており、 投資信託を通して米国株に投資できる。 |
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純資産総額 | 13,448.88億円 |
基準価格 | 1万8,992円 |
信託報酬(年率) | 0.0968% |
購入時手数料 | なし |
つみたてNISAで買える 金融機関の例 |
楽天証券、SBI証券、マネックス証券、auカブコム証券など |
eMAXIS Slimシリーズの米国株式タイプです。米国の株価指数であるS&P500に連動する運用を目指している投資信託で、好調な米国株によって積立資産の増加が期待できます。保有している投資信託から差し引かれる信託報酬(運用管理コスト)も低めなので、リターンを求めつつコストを抑えて資産を増やしたい人におすすめです。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンド【愛称:SBI・V・S&P500】
特徴 | 主にETF(上場投資信託証券)に投資し、 米国の代表的な株価指数である S&P500指数との連動を目指す投資信託。 |
---|---|
純資産総額 | 6,184.73億円 |
基準価格 | 1万7,408円 |
信託報酬(年率) | 0.0938% |
購入時手数料 | なし |
つみたてNISAで買える 金融機関の例 |
SBI証券、マネックス証券、auカブコム証券など |
同じくS&P500に連動する運用を目指す、SBIアセットマネジメントが運用する「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」もおすすめです。信託報酬が0.1%未満と低く、過去1年間のトータルリターンは11.14%と好成績を残しています。
野村スリーゼロ先進国株式投信
特徴 | 購入時手数料や信託財産留保額が 無料であるだけでなく、 信託報酬も0円の業界最安の投資信託。 |
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純資産総額 | 45.14億円 |
基準価格 | 1万8,904円 |
信託報酬(年率) | 0% |
購入時手数料 | なし |
つみたてNISAで買える 金融機関の例 |
野村オンラインサービスのみ |
信託報酬(運用管理コスト)に着眼すると、「野村スリーゼロ先進国株式投信」の右に出るものはないでしょう。信託報酬も0円なので、手数料がまったくかかりません。運用成績も好調で、2020年3月16日設定来のトータルリターンは83.83%です。
野村オンラインサービスのみで購入できる銘柄であり、他社はもちろん野村證券の窓口でも買えません。なお、信託報酬0%は2030年12月31日までとされており、2031年1月1日以降は0.11%(税抜0.10%)になる予定です。
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
特徴 | 購入時の他、換金時も手数料がかからない。 運用実績が長く、信用度の高い投資信託。 |
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純資産総額 | 4,044.21億円 |
基準価格 | 2万6,025円 |
信託報酬(年率) | 0.1023% |
購入時手数料 | なし |
つみたてNISAで買える 金融機関の例 |
SBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券など |
「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」は換金時も手数料がかからないためコスト重視の人にもおすすめでしょう。日本を除く、主要先進国の株式に投資するインデックス型投資信託です。ニッセイアセットマネジメントが2013年から運用しており、実績の長さもおすすめする理由の一つです。
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SBI・全世界株式インデックス・ファンド【愛称:雪だるま(全世界株式)】
特徴 | 日本を含む世界の約8,000銘柄の 大・中・小型株を対象とする 「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」と いう指標に連動する投資信託。 |
---|---|
純資産総額 | 657.64億円 |
基準価格 | 1万5,725円 |
信託報酬(年率) | 0.1102% |
購入時手数料 | なし |
つみたてNISAで買える 金融機関の例 |
SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券など |
「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」は、「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」という、世界の約8,000の大・中・小型株を対象とする指標に連動する運用を目指している投資信託です。2017年12月6日の設定来、分配金も加味したトータルリターンは53.59%と高いため、好リターンを求める人にもおすすめです。
つみたてNISA(新NISA)で50代におすすめのファンドが揃う証券会社
取扱銘柄数の多さから、つみたてNISAを始めるなら証券会社がいいと前述しました。では具体的にどの証券会社がいいのでしょうか。
「取扱銘柄の多さ」と「積立頻度の柔軟さ」を比較し、おすすめ証券会社を紹介します。
- 楽天証券
- SBI証券
- マネックス証券
- auカブコム証券
- 松井証券
- SMBC日興証券
- 野村證券
- 大和証券
- LINE証券
- CONNECT(コネクト)
2023年12月時点
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 | |
会社名 | ||||||||||
取扱銘柄数 | 185本 | 183本 | 178本 | 157本 | 178本 | 158本 | 22本 | 7本 | 3本 | 1本 |
最低投資金額 | 100円 | 100円 | 100円 | 100円 | 100円 | 1,000円 | 100円 | 1,000円 | 1,000円 | 100円 |
積立コース | 毎月 毎週 毎日 |
毎月 毎日 |
毎月 | 毎月 毎日 |
毎月 毎日 |
毎月 | 毎月/毎週/毎日/隔月/3ヵ月ごと/4ヵ月ごと/6ヵ月ごと | 毎月 | 毎月 | 毎月 |
ポイント還元 | Tポイント dポイント Pontaポイント JALマイル Vポイント |
楽天ポイント | Pontaポイント | マネックスポイント | 松井証券ポイント | dポイント | ー | ー | ー | ー |
クレジット カード決済 ポイント還元率 |
三井住友カード 0.5%(※1) |
楽天カード 1%または0.2% (※2) |
au PAYカード 1% |
マネックスカード 1.1% |
ー | ー | ー | ー | ー | ー |
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50代からの積立NISAにはiDeCoも併用しよう
つみたてNISAでの積立資産が20年後にいくらになるかは運用次第ですが、年間の積立上限額は40万円なので「老後資金として心許ない」と思う人もいるかもしれません。その場合は、他の方法も併用して老後資金を準備しましょう。
おすすめは、税制上の優遇を受けられる制度である「iDeCo」です。老後資金の準備に特化した制度です。50代で始める場合は、両者を併用しながら老後資金を準備していきましょう。
iDeCoとは?
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、毎月決まった掛金を拠出し、その掛金を運用して60歳以降に年金または一時金として受け取る制度です。「公的年金の不足を補う」ことを目的とする私的年金制度で、拠出時・運用中・受取時に税制優遇を受けられます。
・拠出時:掛金の全額が所得控除の対象となるため所得税・住民税の節税効果がある
・運用中:運用で発生した利益は非課税
・受取時:公的年金等控除または退職所得控除の対象となり、税金が安くなる
個人型確定拠出年金(愛称:iDeCo)とは、国民の老後生活をより豊かなものとするため、確定拠出年金法に基づき、平成14年1月から国民年金基金連合会が実施している年金です。
出典:iDeCo公式サイト「加入者の方へ」
iDeCoは定年後に向けた資産形成に役立つ
iDeCoは2022年5月に制度内容が改定され、65歳まで拠出できるようになりました。しかし一度始めると最短でも60歳まで拠出を続けなければなりません。
運用しているお金は原則60歳まで引き出すことができません。途中で切り崩す心配がないので、定年後の資産形成に役立てられるでしょう。
iDeCoで運用できる商品には定期預金や生命保険、投資信託などがあり、つみたてNISAと併用すれば運用商品をさらに分散することも可能です。ただし「老齢給付金」を受け取ると掛金の拠出ができなくなるため、最長の65歳まで拠出したとしても、その後の拠出や運用はできなくなります。
續恵美子(日本FP協会認定CFP)
積立NISAとiDeCoの違い
両者にはさまざまな違いがあります。
つみたてNISAは、資産運用によって発生した利益に税金がかからない制度です。年間の投資可能額が決まっていますが、いつでも引き出し(売却)が可能で、利用目的は自由です。
iDeCoも同様に運用益には税金がかかりませんが、他にも掛金が全額所得控除の対象になる、受取時の税金が安くなるといった税制優遇があります。なお掛金は、公的年金の加入状況によって上限額が決められています。原則60歳まで引き出せず、利用目的は老後資金です。
それぞれの主な違いをまとめると、以下のようになります。
つみたてNISA | iDeCo | |
---|---|---|
制度目的 | 資産形成 | 老後資産形成 |
優遇税制 | 運用益が20年間非課税 | ・拠出時:掛金が所得控除の対象となる ・運用中:運用益が非課税 ・受取時:公的年金等控除または 退職所得控除の対象 |
積立期間 | 2042年まで | 最長65歳まで |
積立上限金額 | 年40万円 | 公的年金の加入状況等により、 年14万4,000円~81万6,000円 |
中途売却 | 可能 | 原則不可 |
運用商品 | 投資信託、EFT | 定期預金、生命保険、投資信託 |
iDeCoのメリットとデメリット
iDeCoを利用する場合は、メリットとデメリットを理解した上で始めることが大切です。
メリット
最大のメリットは、手厚い税制優遇があることです。特に、積み立てる拠出金が所得控除の対象になるのは、大きなメリットでしょう。
例えば月々1万円を拠出する場合は、12万円をその年の所得から控除できます。所得税率が10%の場合、所得税が1万2,000円、住民税も1万2,000円安くなります。これを50歳から65歳まで続けるとすると、15年間で36万円の節税になります。
受け取る際にも税制優遇があり、一定額まで非課税で受け取ることができます。例えば50歳から65歳までiDeCoに加入し、65歳の時に一時金で受け取ると「退職所得控除」が適用されます。退職所得控除の計算は以下のとおりで、例えばiDeCoの加入期間が15年間の場合は、受取額が600万円までなら税金がかかりません。
勤続(加入)年数20年以下:40万円×勤続年数 (※80万円未満の場合は80万円)
勤続(加入)年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
デメリット
大きなデメリットは各種手数料がかかることです。以下のような手数料があります。
手数料の種類 | 支払い先 | 手数料額 |
---|---|---|
加入時・移換時手数料 | 国民年金基金連合会 | 2,829円 |
口座管理手数料 | 国民年金基金連合会 | 105円/月 |
信託銀行 | 66円/月 | |
証券会社・銀行など | 金融機関による | |
給付事務手数料 | 信託銀行 | 440円/1回 |
還付事務手数料 | 国民年金基金連合会 | 1,048円/1回 |
信託銀行 | 440円/1回 | |
証券会社・銀行など | 金融機関による |
「加入時・移管時手数料」および「給付事務手数料」などは支払回数が限られていますが、「口座管理手数料」は毎月発生します。また、運用商品として投資信託を選んだ場合は信託報酬もかかります。
つみたてNISAとiDeCoの併用のポイント
併用する際は、両者のメリットをできるだけ活かすことが大切です。
例えば、iDeCoにあってつみたてNISAにないメリットに所得控除があります。そのため、所得のあるうちはiDeCoの掛金を上限額に設定するとよいでしょう。会社員で会社に企業年金がない人は、年間27万6,000円(月額2万3,000円)まで拠出できます。
運用商品は目標金額によっても変わりますが、それぞれで性質の異なる商品に投資するのもよいでしょう。50代で加入する場合はつみたてNISAのほうが積立期間は長くなりやすいためリスクを高めに、iDeCoではリスクを抑えて運用するのもよいでしょう。
50代は積立NISAと一般NISAのどちらがよい?
50代の人にとって、どちらがよいか考えてみましょう。
積立NISAと一般NISAはどちらかしか選べない
両者は併用できません。どちらかしか選べないので、それぞれの違いをきちんと理解した上で選択することが大切です。
一般NISAは、定期的に一定額を積み立てる必要はなく、年間120万円の範囲でいつでも何度でも投資できます。例えばボーナスや臨時収入が入った時に、まとまった金額を投資することもできます。運用で得た利益は、最長5年間非課税です。投資信託やETFの他、株式などにも投資できるため、より大きな利益を狙える可能性もあります。
なお2024年に「新NISA」となり、制度内容が変わ流予定です。現在の両ニーサを組み合わせたような2階建ての制度になります。
一般NISAについては、2024年以降、より多くの国民に積立・分散投資による安定的な資産形成を促す観点から、積立てを行っている場合には別枠の非課税投資を可能とする2階建ての制度に見直され、投資対象商品については、1階部分はつみたてNISAと同様とし、2階部分は、一般NISAから高レバレッジ投資信託など安定的な資産形成に不向きな一部の商品を除くこととされました。
出典:金融庁「NISAとは?」
(公式サイト)
50代には低リスクの積立NISAがおすすめ
50代にはつみたてNISAをおすすめします。リスクをできるだけ低く抑えて資産を運用するべきだからです。
一般ニーサで1つの商品に集中して投資すると大きなリターンを狙えますが、大きな損失を被るおそれもあります。
仮に、一般NISAでA株を100万円分購入したとしましょう。非課税期間である5年が終了した時に50万円まで値下がりしていた場合、売却すると50万円の損失を被ります。そこで、売却せずに課税口座に移管することにしました。その後100万円に戻るのを待っていましたが、2年後に資金が必要になったため売却。その時点で70万円まで戻っていたため、損失を30万円に抑えることができました。
しかし移管後の値上がり分20万円(70万円-50万円)には、20.315%の税金がかかります。4万630円(20万円×20.315%)が税金として徴収されるため、手取りは65万9,370円となり、34万630円の損失になります。
一方、つみたてNISAは一定額で定期的に購入する制度なので、投資信託の価格が高い時は少なく、低い時は多く購入することになります。これを長期にわたって続けることで平均購入価格が下がるため、保有している投資信託の価格が下がっても、損失額を抑える効果があります。
購入した商品の価格がいつ、どのくらい変動するかは予想できませんが、定年後は資産を老後に使うことになるので、口座の資産をできるだけ減らさないようにすることが大切です。
(公式サイト)
50代のモデルケースで見る積立NISAの活用法!
50代と一口にいっても、家族構成や収入など人によりさまざまです。そのため「自分はどのくらいの金額を積み立てたらいいのか?」「本当にiDeCoは加入すべきなのか?」など判断が難しいと感じる人もいるでしょう。そのような人に向け、2つのモデルケースを紹介します。自分に近い部分があれば、参考にしてみてください。
(公式サイト)
ケース1. 53歳夫婦
【モデルケース】
家族構成
・Aさん53歳:会社員(正社員)、年収650万円
・妻53歳:パート、年収90万円
・子ども:24歳、22歳(独立)
・住居:持ち家(住宅ローンなし)
・資産:預貯金500万円
Aさんは正社員、妻はパートで働く共働き夫婦です。子どもが2人とも独立したため、妻は自分の趣味など時間を増やしたいと考えてパートの時間を減らしました。
夫婦ともに「定年後もできる限り働きたい」と考えていますが預貯金が少なく、老後資金が心配です。そのため、「これからつみたてNISAなどで老後資金を貯めていきたい」と考えています。ただし、2人とも投資の経験がないため、できるだけリスクを抑えて安定的に運用することを望んでいます。
Aさんのような夫婦におすすめしたいのは「バランス運用」です。株式や債券など、さまざまな商品にバランスよく投資する銘柄を選びましょう。
- eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
- 三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)【愛称:マイパッケージ】
夫婦がそれぞれつみたてNISA口座を開設し、毎月2万円ずつ積み立てると20年間で積立元本は960万円になり、3%の利回りで運用できるとすると約1,313万円になります。
加えて、掛金が所得控除の対象になる「iDeCo」への加入もおすすめです。会社員で企業年金がない人は、月に2万3,000円まで掛金を拠出できます。65歳まで13年間加入し、2%の利回りで運用できるとすると約409万円になります。つみたてNISAと合わせると、老後資金を1,722万円程度準備できることになります。
また、iDeCoに加入することによって、年間27万6,000円を所得から控除することができます。所得税と住民税を合わせて20%だとすると、毎年5万5,200円、13年では71万7,600円の節税になります。
まとめると、このモデルケースの夫婦では次のようなプランでつみたてNISAの活用をおすすめします。
いくら積み立てる? | つみたてNISA:夫婦で月2万円ずつ(計4万円) iDeCo:月2万3,000円(Aさん) |
---|---|
銘柄、ポートフォリオは? | バランス型
「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」 「三井住友・DC年金バランス30(債券重点型) 【愛称:マイパッケージ】」など |
つみたてNISA以外の 資産運用との組み合わせ |
iDeCo |
20年後にいくらになる? | つみたてNISA:約1,313万円(年平均利回り3%の場合) iDeCo:約409万円(年平均利回り2%の場合) |
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ケース2. 独身50歳
【モデルケース】
・家族構成:Bさん50歳(女性・独身)、会社員(正社員)、年収550万円
・住居:賃貸マンション
・資産:預貯金1,500万円
Bさんは、正社員として会社に勤める独身女性です。50歳の誕生日を機に自分の老後を考えるようになり、つみたてNISAの利用を検討しています。
定年後のイメージはまだないようですが、パートなどで収入を得つつ、趣味を楽しみたいと考えています。現在預貯金は1,500万円ありますが、賃貸マンションの家賃を払い続けることや、老後の病気や介護にも不安があるため、老後資金をできるだけ増やしたいようです。
そんなBさんにおすすめなのが、「リターン追求型運用」です。なるべくリターンの高い銘柄を選んで積極的に運用することをおすすめします。今後マンションを購入するか、老後に施設に入るかなどは分かりませんが、つみたてNISAはいざとなれば運用資産を引き出せるので、積立期間中は非課税枠をフル活用して運用を続けるとよいでしょう。
- eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
- SBI・V・S&P500インデックス・ファンド【愛称:SBI・V・S&P500】
仮に毎月3万3,000円ずつ積み立てると、20年間で積立元本は792万円です。これを5%の利回りで運用できるとすると、約1,356万円になります。
Bさんは会社で企業型確定拠出年金に加入していますが、「iDeCo」にも加入し、月2万円まで拠出することができます。5,000円でも拠出すれば、60歳までの10年間で元本は60万円になり、2%の利回りで運用できるとすると約66万円になります。節税メリットもあるので、月々の余裕資金に応じて加入を検討するとよいでしょう。
Aさんのような独身50代の人には、このようなプランをおすすめします。
いくら積み立てる? | つみたてNISA:月3万3,000円 iDeCo:月5,000円 |
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銘柄、ポートフォリオは? | リターン追求型 「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」 「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド 【愛称:SBI・V・S&P500】」など |
つみたてNISA以外の 資産運用との組み合わせ |
i企業型確定拠出年金、iDeCo |
20年後にいくらになる? | つみたてNISA:約1,356万円(年平均利回りが5%の場合) iDeCo:約66万円(年平均利回りが2%の場合) |
(公式サイト)
50代でも迷わず積立NISAを始めよう
毎年40万円まで投資信託で積み立てて、最長20年間非課税で運用できるつみたてNISAは、老後資金を準備する方法として有効です。加入年齢の上限がなく、50代からでも遅くありません。ただし、加入を先延ばしにするほど運用可能期間は短くなります。後資金を準備したい人は、すぐにでも口座を開設し、積立を始めましょう。
積立NISAは50代で始めて大丈夫?Q&Aでチェック
近年は65歳や70歳まで働き続ける人も多いので、その収入をつみたてNISAの積立に充てるのもよいでしょう。
・自分と相性の良い金融機関で始める
・自分のリスク許容度を事前に確認しておく
・自分のリスク許容度および状況に応じた銘柄を選ぶ
・自分に合った金額を積み立てる
・出口戦略を立てておく
特に50代の人はつみたてNISAで積み立てた資金が老後資金に直結するケースが多いため、銘柄選びと出口戦略は非常に大切です。
それぞれ制度の仕組みや目的、メリット・デメリットが異なるため、両者のメリットをできるだけ活かせるように賢く併用しましょう。
例えば、iDeCoは掛金が全額所得控除の対象となるので、所得のあるうちはiDeCoの掛金を上限額に設定するのがおすすめです。
まとめると、必要な口座は以下のようになります。
・つみたてNISA:証券総合口座+つみたてNISA口座
・iDeCo:個人型確定拠出年金(iDeCo)口座
・投資に関する知識や銘柄選びに自信がない人:総合証券や銀行
・忙しくて時間がない人:ネット証券
・100円といった少額から始めたい人:ネット証券
・毎週積立など独自のサービスを利用したい人:ネット証券
・自分で気軽に始めたい人:スマホ証券
リスク許容度は人によって異なりますが、50代から始める場合は運用に失敗した場合に、それをリカバーする時間があまりないことを覚えておきましょう。
銘柄ごとに、リスクとリターンの大きさは異なります。「老後資金を準備したいが、リスクはできるだけ抑えたい」という人は、バランス運用型やコスト(信託報酬)が低めのものがおすすめです。
一定額で定期的に購入するため、投資信託の価格が高い時は少なく、低い時は多く購入することになます。これを長期にわたって続けることで平均購入価格が下がり、保有している投資信託の価格が下がっても損失額を抑えやすくなります。
一方で一般NISAでは1つの商品に集中して投資することもでき、その場合は価格が下がった時に損失額が大きくなるおそれがあります。
2042年に積み立てた分は最長2061年まで非課税で運用できるので、最長で90代まで運用できることになります。
仮に、年間40万円の上限額を積み立てるとすると、20年間で積み立てる元本は800万円になります。20年後の金額は、運用利回りによって以下のように変わります。
・年平均利回りが1%の場合:885万5,236円
・年平均利回りが3%の場合:1,092万2,018円
・年平均利回りが5%の場合:1,358万1,926円
・年平均利回りが10%の場合:2,413万2,890円
ただし、期待どおりに運用できるとは限りません。リターンだけを見るのではなく、リスクも考慮しながら自分のリスク許容度に合った運用を心がけてください。
なお、つみたてNISAは期限付きの制度であり、現時点では新規に投資ができるのは2042年までです。最終年の2042年に積み立てた分も最長20年間非課税で運用できるので、2061年まで利用できます。
ただし、今後制度が改正される可能性もあるので、今後の動向には注意が必要です。
■保有資格 CFP®
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