徴兵制はいらないから“徴農制”を敷いて欲しい
――今の子どもたちは自然の中で遊ぶことが難しい環境にあります。
哲夫:僕は「徴兵制はいらないから、『徴農制』を敷いてほしいな」と思ってるんです。18歳から20歳の間に3か月くらい住み込みで農業をする機会があったらいいなと思います。
そういう農業体験ができる施設を僕のところでやれたらいいですね。例えば田んぼには「代掻き(しろかき)」という作業があります。土をトラクターで均一に平らにする作業なんですけど、「子どもたちにここで泥んこ遊びをさせたら、それが代掻きになるのになあ」といつも思ってます。
劇場の合間に田植えをしたりしているんですが、近所の小学生の体験学習で手で稲を植えてもらったら「俺がサボれるなあ」と思ったりします。子どもたちの体験学習と称して自分の労力を使わずに手伝いをさせようと今すごく考えてます。収穫を手伝わせて、茶碗1杯ずつくらいご飯を食べさせてあげたら残りは全部自分のところの米にします。絶対にwin-winにできるはずです(笑)。
仏教から学んだ人生の捉え方
『えてこでもわかる 笑い飯哲夫・訳 般若心経』(ワニブックス)
――哲夫さんは仏教に造詣が深いことでも知られています。低価格の塾を開いて社会貢献をする背景には、仏教を学んだ影響があるのでしょうか?
哲夫:最初はそうではなかったんですけど、段々と共通項が見て取れるようになってきました。仏教を学ぶことで「自分の幸せは自分のためだけに貯め込むものじゃないな」と理解できるようになってきたんです。「人の幸せが自分の幸せになる」という感じです。
すると「自分のツラさも1人で抱え込むものではなく、皆のツラさなんや」と思えるようになってきました。だから僕、舞台で1人だけスベっているときにいくらでも前に出られるんです。だって「1人でスベってるんじゃない、みんなでスベってるんだ」と思えるから(笑)。それでいうと、SNSの誹謗中傷は自分だけで抱え込んでしまいますけど、結局はみんなが悪口言うことで、みんなが中傷されているとも言えるんです。
――仏教を学ぶことで、捉え方を変えることができるのでしょうか?
哲夫:本当に捉え方次第だと思います。般若心経の冒頭に「照見五蘊皆空度一切苦厄(しょうけんごうんかいくうどいっさいくやく)」という一行があります。「五蘊(ごうん)」は5つの要素のことで、1つは外的なもので4つは脳内作用です。それはすべて「空(くう)」、つまり「実体がない」ということです。
つまり外的なものである「SNSの言葉」は実体がないし、それを把握する4つの脳内作用も実体がない。それが分かると一切の苦厄を乗り越えられます。SNSの誹謗中傷は「いつまでも続く」と思うから苦しいんです。そんなもの実体がないから続かない。諸行無常なんです。
それが般若心経というお経の一行に出てくるから面白いです。SNSでのいじめを苦にしている子に教えてあげたいと思います。