異能の実力派漫才師・笑い飯の哲夫さん。笑いの道を極める一方で、仏教への造詣が深く『えてこでもわかる 笑い飯哲夫・訳 般若心経』(ワニブックス)を始め、仏教に関する書籍を多数執筆。2020年からは相愛大学で人文学部の客員教授を務めています。
笑い飯 哲夫さん(47)
奈良県内トップの公立校・奈良高校出身でもある哲夫さんは「教育格差」に疑問を持ち、「経済的に余裕のある家庭の子どもしか塾に通えないのはおかしい」と考えました。
そして8年ほど前から大阪市淀川区に小・中学生向けに低料金で通うことができる学習塾「寺子屋こやや」を開いています。前編「笑い飯 哲夫が経営する“激安の学習塾“とは「学力差が家庭環境によって起こるのはおかしい」」では、哲夫さんの教育格差に対する考えや、子どもに勉強の面白さを教える方法などについて聞きました。
後編では、子どもの成長に本当に必要なもの、また仏教と現在の活動について聞いていきます。
【前編】⇒笑い飯 哲夫が経営する“激安の学習塾“とは「学力差が家庭環境によって起こるのはおかしい」
【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます
子ども同士が教え合う「寺子屋教育」
――哲夫さんの塾「寺子屋こやや」では、子どもたちがどんなふうに勉強しているのでしょうか?
哲夫さん(以下、哲夫):うちの塾では小学生と中学生は時間を分けているのですが、いろいろな学年の子どもたちを一緒に教えています。僕も教えたりするんですけど、猫の手も借りたい状況になってくるので上級生に下級生を教えてあげるよう頼むことがあります。生徒が歳下の子に教えているのを見ると、ものすごく微笑ましいんです。僕も経験があるんですが、自分の苦手な分野を人に教えることによって理解を深めることができるんです。
時には先生が「先生もこれ苦手やねん」と言って生徒と一緒に悩んであげることもあります。その間に先生は冗談を言いながら解答をどう説明するか脳をフル回転させます。そういう面白い先生と喋っていたら、勉強だけじゃなくて人間の厚みも学べるんじゃないかなと思います。うちの塾のそんな雰囲気が僕は好きなんです。
――最近では子どもに対する「教育虐待」が問題になることがあります。都市部では小学校受験や中学校受験が加熱していたりもするのですが、哲夫さんはどう考えていますか?
哲夫:僕は関西の受験塾の最大手「浜学園」で8年間アルバイトさせてもらっていましたし、受験について悪く思ってはいません。受験は悪いことではなく、目標に向かって頑張るという意味ではすごくいいことを教えられると思います。ただ、そこにプラスして、外で暴れることも教えてあげてほしいなと思います。教材やテスト対策に取り組むだけではなくて、土いじりしたり川で遊んだり、外で野球やサッカーしたり、バランス良くできたらいいですね。
自然体験から子どもが学べること
――哲夫さんは子どもの頃よく土いじりをしていたのでしょうか?
哲夫:実家が農業をやっていたので「ちょっと畑を耕しておいて」と言われて田んぼの仕事を手伝ったりしてました。トラクターに乗せてもらって、子どもなのに機械に乗せてもらえて嬉しかったり、機械をいじらせてもらえる面白さがありました。田舎で川も山も多くて、いろいろなところに遊びに行かせてもらったことはとてもよかったなと思っています。
――子どもの成長に、自然の中での体験は大切だと思いますか?
哲夫:そういう体験は必要だと思います。石をめくってみると小さな命がいっぱい見つかって「うわ、きったな〜」と思ったりしてました(笑)。川に飛び降りる遊びも怖いんですけど、そこで恐怖を克服する勇気を培ったのかなと思います。「この高さはさすがに危ないな」と判断したり、危ないものがないか周りを確認してから飛び込むように考えたりしていました。