【今週の一冊】
「愛されなかった私たちが愛を知るまで―傷ついた子ども時代を乗り越え生きる若者たち」石川結貴、高橋亜美著、かもがわ出版、2013年
ニュースでは子どもたちを巡る悲しい話題が見受けられます。大人である親は我が子を守るべきはず。なのにそれが親自身の抱える問題が未解決であるがゆえに、矛先が子どもに向かうことがあります。そして子どもが犠牲になってしまうのです。それは目に見える肉体的な傷や言葉の暴力による精神的な痛みであったりします。
著者の石川氏は家族や子育てをテーマに取材をなさっており、高橋氏は自立援助ホームのスタッフをされています。本書には、二人が出会った子どもたちの苦しい胸の内が明かされています。
虐待や精神的圧力などと無縁で育った方にとっては、本書の内容は衝撃的なことでしょう。けれども、日本、いや、世界のどこかで今なおこのような苦しみのさなかに生きる子どもたちがいるのも事実なのです。そこから目を背けるのではなく、これが未来を担う子どもたちが今、置かれている深刻な状況であることを、社会は自覚せねばなりません。
特に印象的だったのは高橋氏が最後に記した以下の文章でした:
「悲しいとき、苦しいことがあったときは、大丈夫だよと寄り添ってもらえること 暴力や、ひどい言葉で傷つけられないこと あるがままの自分でいられること あるがままの自分を大切にしてもらえること」(p144)
こうした考え方は、たとえ子どもが何歳になろうと、親子関係では大切だと私は思います。なぜなら、私自身、人生の半分を過ぎた今なお、上記の引用とは正反対の思いを残念ながら味わっているからです。
親子関係の困難さにより心を痛めるのは子どもです。高橋氏によれば、そのような境遇は子ども自身が「みずから選んで抱えた困難ではなく、抱えさせられた困難」(p156)です。一人でも多くの子どもが親子関係から生じる困難に自罰的にならぬよう、また、社会全体がこの問題に対して寄り添いの姿勢を見せられるようになることを、私は心から願っています。
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