孫への生前贈与により財産を移転

親子間における生前贈与では十分な相続税対策ができない場合、孫への生前贈与を検討してみてはいかがだろうか。

父、母、子2人、孫4人という世帯を例に考えてみよう。父から子2人、孫4人それぞれに、毎年110万円ずつ10年間にわたり贈与すると仮定する。すると、10年間で財産6600万円を移転できる計算になる。暦年贈与をする対象に子世代だけでなく孫世代を加えることで、移転可能な財産の額を増やすことができるのだ。各年の贈与額は基礎控除額110万円の範囲内であるため、贈与税がかかることもない。

この例で父の財産が1億円ある場合、そのまま相続すると基礎控除額4800万円(3000万円+600万円×3)を引いた5200万に対して相続税がかかる。

一方、暦年贈与をして生前に6600万円の財産を子と孫に移転しておけば、相続財産は基礎控除額の範囲内に収まり相続税が発生しないのだ。

暦年贈与による財産の移転は、効果的な相続税対策のひとつと言えよう。直系尊属(祖父母や父母)から20歳以上の者(子や孫)へ生前贈与をする場合、その額に応じて以下のような贈与税率が適用される。

200万円以下……10%
400万円以下……15%
600万円以下……20%
1000万円以下……30%
1500万円以下……40%
3000万円以下……45%
4500万円以下……50%
4500万円超……55%

相続予定財産の額によっては、贈与税の基礎控除額110万円を超えて暦年贈与をしたほうが納めるべき税金を少なくできるケースがある。相続税対策のために生前贈与を検討している人は、相続税率と贈与税率を見比べたうえでその額を決めるといいだろう。

相続税対策のために生前贈与をする場合の懸念事項

相続税対策において大きな意義をもつ生前贈与だが、懸念事項もある。例えば受贈者が浪費家である場合、贈与された財産を浪費してしまうかもしれない。また孫が若い場合、贈与された財産をきちんと管理できるか不安に思う人もいるだろう。

暦年贈与する財産には、「相続税の納税資金」「遺族の生活資金」といった性格がある。それにもかかわらず贈与した財産を浪費されてしまうのは、贈与者が本来意図するところではないはずだ。