ミュージシャンをはじめ多くの人が“歌”で自己表現を追求する日本のエンタメ業界。指先ひとつで音楽も歌も半自動的に生まれるこのAI時代で、人間の歌や声が生み出す価値を、声楽家・歌唱指導者が分析していく本連載。そのナビゲーターである「純子の部屋」純子が、まさかの大ピンチ! 声楽家として、歌唱指導者としての成功の裏で、酷使してきた喉が徐々に声帯を蝕んでいき…ついに手術へと至ることになってしまったのだ。

 本稿は、「デジタル時代の生歌サバイバル」の特別編として、普段は爆音講師として名高い「純子の部屋」純子が、ミュートモードで原稿を自ら執筆。“歌”で自己表現を追求する時代の、喉トラブルから声帯の手術体験をドキュメントリポートする!

フォロワー240万人超ゆりにゃ “最先端”ボイトレ

ミュートモード突入への前兆

 2025年3月関西コレクションの日、教え子がくれた豪華な花束が大阪に届いた。あまりにボリュームがあったので、はみ出した花を小さな花瓶に分けて飾っている。

「手術したら、絶対オーバーリアクションですよ!私なんかずっと身振り手振りで生きてましたもん!」と、星島ゆい(Merry BAD TUNE.)が笑顔で励ましてくれた。

 振り返ると、この5年は怒涛の日々。歌唱レッスン予約が急増し、指導の機会も求められる質もどんどん高まって毎日が充実。大阪のアメ村でほぼ毎日7~8レッスン、たまに東京出張、移動中に食事を済ませて、帰宅後は朝まで新曲のコード解析や歌詞の解釈をしていたら朝になっていた。

 その頃からよく言われるようになったのは、「純子の声、ほんま爆音すぎ」「部屋2つ超えても丸聞こえやで」「アンコール叫ぶ声で純子来てるのバレバレ」というネタみたいな話。でもその笑い話が、ついに深刻な現実に。

 私は音楽に対して最早日常、空気のような存在として何の感情もないし、聴く音は常にニュートラルであるべきだと思っている。