最近よく耳にするようになった「事実婚」。実は「内縁の妻」には、婚姻届けを出した法律上の妻とほぼ同じ権利が認められています。

しかしながら内縁の妻には、相続権だけが認められていません。

内縁の妻が財産をゆずり受けるためには対策が必要です。

■内縁の妻とは

内縁の妻とは、婚姻届けを出していないものの、事実上は夫婦と同じように生活するパートナーのことを指します。内縁関係が認められるには、一定期間同居して夫婦と同じように一緒に暮らしていたという事実がなければなりません。

内縁関係中に一緒に築いた財産の分与や年金の分割、離婚時の慰謝料請求などは正妻と同じように認められています。しかし、相続権は認められていないのです。

■内縁の妻が相続する方法

夫の生前に対策することで、内縁の妻に財産を残す方法があります。

●遺言書の作成

最もオーソドックスな方法は遺言書を作成することです。相続権がない内縁の妻に財産を残すと遺言します。公証人が作成する公正証書遺言を作っておくとよいでしょう。

ただし、相続人は一定の財産を受け継ぐ権利を持っています。この権利を遺留分といいますが、遺留分の請求があれば、遺贈した遺産であっても一部を分与しなければなりません。

●生前贈与

生前贈与で生きているうちに財産をゆずり受けることもできます。ただし、年間110万円以上の贈与を受けると贈与税を納税しなければなりませんので注意しましょう。

●生命保険の受取人にしておく

生命保険の受取人に指定してもらうことも方法の一つです。しかし同居期間の長さや法律上の配偶者の有無によって受取人に指定できないことも。事前に保険会社に確認しておきましょう。

●遺族年金を請求する

入籍していなくても、夫の収入で生計を維持していたと認められれば、遺族年金を請求することもできます。この場合は、内縁関係を証明する書類が必要となりますので、事前に用意しておきましょう。

●特別縁故者として遺産を請求する

特別縁故者とは、亡くなったパートナーと特別な縁故のあった人のことです。生計を同じくしていた内縁の妻や生前に療養看護に勤めた人などが該当しますが、相続権を持つ人が名乗り出た場合は特別縁故者として相続することはできません。

■生前に専門家に相談しよう

内縁の妻は法律上の妻とほとんど同じ権利を持ちますが、相続や控除の面で不利になることもあります。

法律上の婚姻をしないという選択肢をしたのであれば、はやめに相続の専門家である弁護士、司法書士、行政書士、税理士などに相談しておくと良いでしょう。

文・馬場正裕(ファイナンシャル・プランナー) 高校教師・学習塾・予備校の講師を経て、現在は金融・保険などのマネー系Webライターとして活動中。主に、金融メディア、SDGsメディアに出稿している。