退職金制度の一つである「企業型DC」をご存じですか?自分で運用法を選択できるのがいいところですが、正しく理解していないと、損してしまう可能性も。
今回は企業型DCがどのようなものか解説します。
■企業型DCとは
企業型DCは企業型確定拠出年金の略称で、企業が従業員のために掛け金を積み立てる年金制度です。従業員が運用方法を選択できるという特徴があり、企業型DCのために用意された金融商品の中から自分で選択します。
積立金額は会社によって異なりますが、確定給付型年金を採用していれば月額2万7,500円まで、採用していなければ月額5万5,000円まで拠出できます。
■企業型DCのメリット
企業型DCのメリットは3つあります。
●メリット1:掛け金が全て非課税
給与所得が26万円のときに1万円を企業型DCの掛け金に充てた場合、給与所得のうち課税対象となるのは掛け金を差し引いた25万円となります。一方、企業型DCを用いず現金1万円を貯蓄すると、課税対象金額は26万円となります。
つまり、企業型DCを活用すると課税対象金額が減るため減税効果があるのです。
●メリット2:運用期間中の利益が非課税
通常、投資による利益には所得税15%、住民税5%の合計20%が課税されますが、企業型DCならこの分が非課税となります。つまり、税金で目減りしない分だけ、資産を増やせます。
●メリット3:受け取り時に税の優遇措置を得られる
一時金であれば退職所得控除、年金形式であれば公的年金控除が受けられます。
■企業型DCのデメリット
企業型DCのデメリットは2つです。
●デメリット1:デメリットは資産が目減りする可能性がある
金融商品は自分で選べますが、元本確保型以外は運用が必ず成功するとは限りません。場合によっては将来もらえる退職金の総額が減る可能性もあります。リスクを減らしたいのであれば、低リスクの金融商品を選ぶべきでしょう。
●デメリット2:60歳まで引き出せない
企業型DCは貯蓄とは異なるため、短期的にお金が必要になったからといって取り崩すことはできません。
■企業型DCで資産運用しよう
今回は企業型DCについてまとめました。iDeCoや新NISAに注目が集まりがちですが、企業型DCを導入している企業であれば、そちらの方が有利なことも多いです。
金融商品の選び方次第では一般的な退職金よりも金額を増やすこともできますが、大きなリターンを狙えばその分だけリスクも大きくなります。退職後の貴重な財産である退職金ですので、リターンばかりに目を奪われず、安定運用することを心がけましょう。
文・馬場正裕(ファイナンシャル・プランナー) 高校教師・学習塾・予備校の講師を経て、現在は金融・保険などのマネー系Webライターとして活動中。主に、金融メディア、SDGsメディアに出稿している。