近年、お墓を撤去して墓所の使用権を返却する「墓じまい」が増えています。

背景には、少子化や維持管理の問題があります。「自分の後にお墓を継ぐ人がいない」「お墓が遠方にあって、維持管理の負担が大きい」ということから、墓じまいを選択する人が増えているのです。

しかし、墓じまいは親族とのトラブルを招くこともあるので注意が必要です。

■トラブル1:先祖代々の墓が途絶えることへの意見の対立

お墓に入る予定のない親族でも、亡き人やご先祖様への想いが強い人や頻繁にお墓参りに行く人にとっては、先祖代々の墓がなくなることを良しとしないことがあります。

墓じまいに反対意見を持つ人たちには、理由や経緯をきちんと説明し、同意を得るまで根気強く話し合いの場を設ける必要があります。

■トラブル2:勝手に墓じまいをしたことで問題に…

お墓の管理の権限はお墓を継いだ祭祀承継者にあるため、祭祀承継者の判断によって墓じまいをしても法的には問題ありません。しかし、親族できちんと話し合いをしないまま勝手に進めてしまうとトラブルに繋がります。

「お墓参りに行ったらお墓がなくなっていた」ということになったら、相談や連絡がなかったことに苦言を呈されることもあるでしょう。

また、相談はしていたけれど、反対する親族の合意を得ることなく墓じまいを進めてしまうことも、大きなトラブルに発展するので注意が必要です。

■トラブル3:費用を誰が負担するかで大揉め

墓じまいの際には、お墓の撤去、行政手続き、遺骨の納骨先などによって約30万円~300万円の費用が掛かります。この費用を誰が負担するかということが、トラブルに繋がることもあります。

祭祀承継者が負担すべきと考える親族がいる一方で、祭祀承継者は共通のご先祖様を弔うお墓なのだから全員が負担すべきと考える場合もあるでしょう。

早い段階で費用についても話し合っておく必要があります。

■トラブルを未然に防ぐには?

トラブルを防ぐには、親族間できちんと話し合いをするしかありません。

お墓を継いでいない親族でもお墓には思い入れがあるものなので、なかなか合意が得られないからといって勝手に墓じまいをするようなことだけはやめましょう。

時間はかかるかもしれませんが、トラブルにより親族間の関係が悪化してしまうとその後の付き合いにも支障がでるので、全員が納得できるまで話し合いをしていきましょう。

文・阪田順子(ファイナンシャル・プランナー) 保険会社での営業、一般企業の経理職などを経て、2020年にファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用や株式投資の講座を開講。投資を中心にお金にまつわる記事の執筆・監修を行う。FP1級、CFP®保有。