足を引きずって歩いたり、地面から浮かせたままだったり、不自然に腰を振って歩いていたり……。愛犬の歩き方がおかしいと感じたら、すぐ動物病院で調べてもらいましょう。足腰の病気は、足についたダニから遺伝性のものまで多岐に渡ります。外傷は比較的見つけやすいですが、関節や脊椎などのトラブルは外から見えないだけに、素人判断は禁物です。

犬の歩き方がおかしい主な原因として、以下が考えられます

□ 外傷:指の間の炎症やダニ、高所からの落下や交通事故による骨折などの可能性があります。
□ 関節炎:骨関節炎は、加齢とともに進行する病気です。発症すると足を引きずるしぐさが見られます。
□ 腫瘍:骨に腫瘍ができる骨肉腫や関節を侵す滑膜肉腫、脊髄腫瘍などがあります。
□ 靭帯断裂:事故、激しい運動による衝撃、老化、肥満、などで起こる前十字靭帯断裂があります。
□ ヘルニア:ミニチュア・ダックスフンドでは椎間板ヘルニアが多発します。
□ 遺伝性疾患:レトリーバー種では股関節形成不全、小型犬では膝蓋骨脱臼が多く見られます。

1. 犬の前足や後ろ足がおかしい原因は?

ケース1.外傷

足を地面につけず浮かしているのは、痛みがある証拠。肉球に何か刺さっていないか、指の間が炎症を起こしていないか、ダニが食いついていないか、爪が折れていないかを確認してください。また、高所からの落下や交通事故で骨折している可能性もあります。

ケース2.関節炎

骨関節炎を発症すると、関節に痛みや変形、こわばりが生じるため、足を引きずるしぐさを見せます。肩や前足に関節炎があれば(肩や前足が罹患すると)、不自然に頭を上下させて歩くこともあります。進行性の病気のため、早期発見し、悪化を抑える適切なケアが必要です。

ケース3.腫瘍

骨肉腫の場合は、負重時に強い痛みがあり、進行すれば自然骨折を起こすことさえあります。転移の可能性がきわめて高く命にかかわります。また、激しい関節の腫れが、関節炎ではなく滑膜肉腫のこともあります。神経組織に発生する腫瘍では発生部位によってさまざまな症状が認められますが、特に脊髄腫瘍では四肢の麻痺が徐々に進行するため、病初には歩き方がおかしいと感じるだけですが、進行すると上手く歩けなくなり、命にかかわります。

ケース4.靭帯断裂

後ろ足で踏ん張るのを嫌がる、片足を上げたまま着地しないという場合は、前十字靭帯損傷の可能性があります。大型犬に多く発生し、最近では遺伝性疾患の疑いも持たれています。肥満傾向のある小型犬での発生も多く、肥満や加齢、クッシング病などがリスク因子と考えられています。

ケース5.ヘルニア

ダックスフンドでは椎間板ヘルニアの発生頻度が際立って高くなっています。症状は、抱き上げる時にキャンと痛がる、ヨタヨタ歩く、立っている時に足先が裏返って足の甲で着地している、など。重症の場合は速やかな減圧手術が必要です。

ケース6.遺伝性疾患

大型犬では股関節形成不全、小型犬では膝蓋骨脱臼が多く見られます。股関節形成不全の場合は腰を振るような歩き方や横座りなどの症状が見られ、膝蓋骨脱臼の場合は走っている時にスキップするように片足を着地しない程度の症状しか見られず、多くの場合これといった症状もなく進行し、徐々に不自然な歩き方が顕著になってきます。

2. 犬の歩き方がおかしい時のチェックポイント

犬は多少の痛みがあっても、大好きな散歩に行けるのなら、平気な顔をして大喜びで出かけます。飼い主さんもご自身の膝や肩・腰が痛いと感じた時、言葉にしなければ周りの人に気づいてもらえなかったという経験をお持ちではないでしょうか。言葉を話せない愛犬の痛みや不調に、いち早く気づいてあげることで、さまざまな対策を立て、改善につなげていくことができます。愛犬のSOSのサインを見逃さないように、日ごろから立ち上がる姿や歩いたり走ったりする様子をよく観察し、「何か変!」と思ったら、動物病院にご相談ください。

□ 足を引きずっている
□ 地面から足を浮かせている。また片足を着地させず走っている
□ 歩くとふらつくことがある、立ち上がりがつらそうに見える
□ 走ったり、飛び跳ねたりしない
□ 不自然に腰を振って歩いている
□ 膝を崩して座るなど横座りをしている
□ 歩くのを嫌がる(散歩に行きたがらない)
□ 尾を下げていることが多くなった
□ 階段やちょっとした段差を昇るのを嫌がる。また動作がゆっくりになる
□ 飼い主さんや他の犬と、またはおもちゃで遊ぼうとしなくなった
□ 家の中や外であまり動かなくなった
□ ソファ、イス、ベッドなどの高いところの昇り降りをしなくなった