3.こんな研究も進行中!

細菌叢(マイクロバイオーム)の研究

人と同様に、腸内や口内の細菌叢(善玉菌・悪玉菌・日和見菌によって構成)の研究が注目されています。それを可能にしたのが、メタゲノム解析という最新技術。糞便や唾液などから、多様な菌が混ざった状態でDNAを抽出し、その遺伝情報をまとめて解読して、どんな菌がいるのかを余さず明らかにすることができます。
細菌叢は、動物種や年齢、飼育環境などによってバランスが異なり、細菌の種類や比率によって、健康に影響を及ぼすことがわかっています。今後は細菌叢の検査によって、ある種の疾患の発生予測ができるようになるかもしれません。すでに、犬では特定の細菌の増加が、皮膚疾患や消化器疾患などの発症と関連があることがわかってきているそうです。

ネコモルビリウイルスの発見

多くの動物種にはモルビリウイルス属のウイルスによる感染症があるのに、なぜか猫にだけは長くこの属のウイルスによる感染症が確認されていませんでした。それが、遺伝子解析技術の進歩により、2012年、初めてネコモルビリウイルス(FeMV)が発見され、以降、次々と感染例が確認されています。
FeMVと病気との関連を調べたところ、慢性腎不全につながる尿細管間質性腎炎との関連性が判明。FeMV感染を予防することで、慢性腎不全の発症率を下げられるのでは?と期待が高まりました。慢性腎不全は多くの高齢猫がかかる重要な疾患だけに、今後の研究が注目されています。

いま、「猫の遺伝子検査」に注目!
(画像=『犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)』より引用)

4.遺伝子研究トピックス

ゲノム解析からネコの移動の歴史が見えてくる!

イエネコの祖先はリビアヤマネコで、約1万年前、中東で家畜化されたのが始まりとされています。イエネコは、その後、どのような経緯をたどって、世界に広がっていったのでしょうか。
2015年、京都大学ウイルス研究所の宮沢孝幸准教授らの研究チーム※が、イエネコのゲノムに残されたレトロウイルス感染の痕跡(内在性レトロウイルス)をたどることで、イエネコの移動の歴史が解明できると発表しました。

研究チームは、欧米や日本のさまざまなイエネコのDNA配列を比較し、過去に感染した「内在性ウイルス」の痕跡を調べました。その結果、ヨーロピアンショートヘア、アメリカンショートヘア、アメリカンカールなど欧米のネコの半数以上に、従来知られていない新たな内在性レトロウイルスを発見。対して、アジアのネコにはわずか4%しか見つかりませんでした。中東で家畜化されたイエネコのうち、ヨーロッパに向かった一部の集団のみに感染したと推察されます。

スカンジナビア半島の土着ネコが元となったヨーロピアンショートヘアがイギリスへ渡り、さらに17世紀、メイフラワー号で米国へと上陸し、アメリカンショートヘアやアメリカンカールが作られたといわれていますが、それを裏付ける結果に。
このことから、新しい内在性レトロウイルスが、イエネコの各品種の起源を知るうえで、役立つマーカーとして使えることがわかりました。今後、この研究を進めていくことで、ネコの移動の歴史がより明らかになっていくのではないかと期待されています。

※宮沢孝幸 京都大学ウイルス研究所准教授、下出紗弓 医学研究科博士課程学生4年(日本学術振興会特別研究員DC2)、中川草 東海大学助教らの研究グループ。論文は2015年2月2日付国際学術雑誌「Scientific Reports」に掲載。

いま、「猫の遺伝子検査」に注目!
(画像=『犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)』より引用)


提供・犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)

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