3. CAPP活動への想い
赤坂動物病院 柴内裕子総院長先生にインタビュー
愛情を持って育てた子を社会の一員に
CAPP活動は生涯をかけた私のライフワークです。
動物の社会的地位を確立し、社会に認められる存在を目指して。
獣医学の研鑽と動物病院の充実を目指すJAHAでは1986年から社会への貢献としてCAPP活動を推進しています。私がJAHAの会長に就任した時に始めた活動ですが、それはきっかけに過ぎません。実は、私は戦時中に動物が犠牲になる姿を見て『誰かが動物のことを本気で考えなければならない』と感じて獣医師になりました。そして医療で助けるだけでなく動物達の社会的地位向上のための活動がもっと必要だと考えていましたので、生涯の願いをさせていただいていると思っています。
CAPP活動は犬や猫とふれあった多くの人が幸せになれると同時に、「動物達が社会的にどのような役割を果たせるか」「人にどういう影響を与えるか」についての理解を広められる大切な活動です。動物達の活躍を目に見える形で実現して多くの人に認めてもらえれば『動物達の社会的地位の向上』に繋がって、公的機関や交通機関が使えたり、活躍の場も広がります。CAPP活動も高齢者施設から始まり、認められるにつれてホスピスや学校や病院へと少しずつ範囲が広がり、より多くの人に喜ばれるようになりました。学校での活動では、子ども達に「大声を出さない」「突然走らない」「突然さわらない」といった動物と付き合う時の基本も伝えます。
最近では、ホスピスや医療機関への訪問も増えていますが、2005年から千葉県こども病院の小児血液腫瘍病棟へ訪問活動をしており、この活動で入院患児のセラピー犬とのふれあいによる喜びの効果を検証したいと医師側からも調査研究の申し出がありました。多くの患児が自宅や学校から離れるので、突然の長期入院のストレスは多大で、CAPP活動によるセラピー犬の訪問は大きな喜びです。患児とセラピー犬、その飼い主であるボランティアの活動前後の唾液によるオキシトシンとコルチゾール値の変化を調査し、予想を上回る好結果が得られました。2018年秋の小児がん学会で、本年4月には『第15回人と動物との相互作用国際会議』で発表し、多くの反響を得ました。
普段から動物が苦手な人もいることを飼い主さんが自覚して、「カフェでは人間の椅子には乗せない」「散歩での排泄にはペットシーツを敷く」など日頃のマナーを守ることを大切にした上で、もっと社会的に認められて、さらに良い形で暮らしていければ人も動物も幸せになり、社会全体にその温もりが広がります。
33年も続いているのは
多くの飼い主さんがやりがいを持って参加してくださっているおかげです。
この活動が長年続いているのも飼い主さんのボランティア精神と動物達のおかげです。家族として育てた子と一緒に社会の役に立てることをみなさん誇りに感じていらっしゃいます。
当然、事故があってはいけませんし、動物と飼い主さんが無理をしない「お互いに楽しい活動」である必要があるので、参加を希望する飼い主さんにはセミナーの受講や活動見学を通して本当にできるかを考えていただいています。動物や飼い主さんの健康診断や行動学チェックもおこないます。どんな場面でも落ち着けて、ストレスに感じない犬猫に向いている活動です。17年前から聖路加国際病院の小児病棟などを訪問していますが、病院で活動する動物達と飼い主さんとはさらに検査の回数と内容が増えることになります。また、新しいチームが発足する時は正しい内容を伝えます。私も数年前までは全国各地に奔走していました。
そうして多くの人に支えられたおかげで今日まで全国で
およそ22,000回を事故なく、アレルギーの発症もなくCAPP活動を推進することができています。本当にありがたいことです。
ひとりでも多くの人に動物とふれあう幸せを。
人と犬猫には何万年も昔から助け合って生きてきた絆があります。だからこそ、今も人と暮らす伴侶動物の代表として「なくてはならない存在」に選ばれています。
私も毎日愛犬達と暮らしており、私の元気の源は動物達です。朝晩と愛犬にごはんを用意したりブラッシングをしたり、拾い食いなどの事故がないように先回りをして対策をするなど、愛犬の存在が健康的に楽しく頭を使うきっかけになり、整った生活を送ることができています。愛犬達は来客を知らせるなど、暮らしのお手伝いができる可能性も秘めています。そういった点から、動物達の存在はご高齢の飼い主さんの健康維持や暮らしやすさにつながると考えています。最近では子どもが動物に絵本を読み聞かせるR.E.A.Dプログラム(読書介助犬/Reading Education Assistance DOG)という活動も始まりました。このプログラムは子どもの安心感の育成や楽しみを共有する力の向上などが望めます。こういった動物達の素晴らしさをもっと広めたいのです。
日本中にCAPP活動を通して動物達とふれあう機会を待っている人がたくさんいます。是非、良い子を育ててCAPP活動に参加してください。そして動物達が社会的に認められ、人も元気に長生きできる世の中を一緒に目指せると嬉しいです。
4. CAPP活動参加者のお声
赤坂動物病院 動物看護師/尾前 元子さん&らんまるくん(MIX 3才)
活動を通じて動物と人との幸せの輪が膨らんでいく喜びを感じています。
参加いただく方々と一緒に少しでも役に立てていると思えることが嬉しいです。
活動を通じて喜びに感じるのは、高齢者さんの表情がパッと明るくなったり、歌を一緒に歌ってくださったりと笑顔になっていただけた時ですね。記憶を引き出すきっかけになっているのか、昔話もよくしてくださるので、お声がけも積極的に行うように心がけています。訪問先の方だけでなく、参加いただく飼い主さんや動物たちからも私自身が学ぶことも多く、また飼い主さんから相談を受けることもあります。そのように動物を中心にコミュニケーションが生まれ、縁が繋がり、幸せが膨らんでいく様は私自身の喜びです。
ぜひ、CAPP活動にご参加ください。
動物の性格を知って適性を知ることがボランティア参加への第一歩です。チーム内で支え合って活動していますので、様々な動物がいます。できないことをできるようにするのではなく、できることから無理をせずに参加できるのが特徴です。ペットを亡くされた方も参加を通じて、ペットロスを乗り越えています。人だけでご参加いただいている方もいらっしゃり、大切なチームの一員として活躍してくださっています。興味があればぜひ参加してみてください。
▲らんまるはなでてもらうのも好きですが、人の輪の中で静かにオスワリができます。その姿を見るだけでも癒されると言ってもらえるので嬉しいですね。
飯田 良枝さん&モエちゃん(ロングコートチワワ / 6才)
CAPP活動で学んだ「無理をせず楽しむ」ということ。
愛犬も私もお互いの成長を実感しています。
初めて迎えた愛犬と参加したしつけ教室で柴内先生に出会ったのがCAPP活動を始めたきっかけです。私もモエに無理をさせないよう、良いところを伸ばしてあげることを意識し、自然体で過ごすことで「パートナー」になれたと思える瞬間がありました。その良好な関係性から生まれる幸せな雰囲気が周りにも伝わって笑顔になってもらえるのが嬉しいです。また、ボランティアに参加する私たちも元気がもらえます。特別な訓練が必要ではなく、できないことがあっても大丈夫なんです。ボランティアチーム皆でカバーして支え合っているので、ぜひたくさんの方に参加していただきたいです。
社会福祉法人 協和会 特別養護老人ホームきく事務長 西田 憲司さん
動物の癒しパワーで笑顔になる入居者様に驚き、
今ではCAPP活動を楽しみにしている一人です。
CAPP活動で初めて皆様に訪れていただいた日のことは今でも忘れられません。当時は職員として、介護・介助・レクリエーションに従事しておりましたが、その日は今までにみたことのない入居者様の目の輝きや笑顔に驚きました。人同士のコミュニケーションだけでは起きない奇跡ですよ!それから7年、定期的に訪れてもらっています。入居者様もいつも「また来てね」と声をかけ、ふれあいを楽しみにしています。私もその一人です。実はこの訪問がきっかけに「動物って良いな」と感じ、個人的に愛犬を2頭迎え楽しい日々を過ごしています。今後はもっと動物と高齢者が普段からふれあえるような門戸が広がっていくことを願っています。
●教えて!動物と仲良くなるコツ●
愛犬に信頼される行動を心がけると良いですね。
赤坂動物病院 柴内総院長先生
信頼関係を築くには愛情と思いやりを持って愛犬に接して、飼い主さんが正しい行動をとることが大切です。愛犬が良いことをしたら優しくほめて、誤った行動をした時は「アッ」と言って制御しましょう。叱っても怖がられるだけです。毎日の正しいケアや「話しかける」など愛犬が喜ぶこともしていただきたいです。
愛犬は想像以上に私達を観察しています。「飼い主さんは最後には助けてくれる人」だと安心して感じてもらえるよう、日頃からコミュニケ―ションをとっておきましょう。
自分の理想を押し付けず、動物を観察することが大事です。
赤坂動物病院 動物看護師/尾前 元子さん
よく愛犬、愛猫を観察してみてください。そうすれば、得意なことは何か、苦手なことが何か自ずと見えてきます。小さなことでもできたことはほめてあげること。苦手なことを見つけたら、苦手を楽しいことと感じてもらえるように工夫してみてください。じっくり時間をかけて信頼関係を築いてください。
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