古代から巡礼地として人々の信仰をあつめていた熊野。平成16年には「紀伊山地の霊場と参詣道」として、世界遺産に登録されました。今回はその中で、那智にある熊野古道「大門坂」からスタートし、「熊野那智大社」「青岸渡寺」「那智の滝」と4つの世界遺産を歩いて巡る旅をご紹介します。
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の中の熊野
和歌山県・奈良県・三重県の3県にまたがる紀伊山地に位置する「吉野・大峰」「熊野三山」「高野山」とそれらを結ぶ参詣道が平成16年「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されました。
中でも熊野三山は、日本古来の自然崇拝から生まれた神道と、大陸伝来の仏教が融合した神仏習合の典型的な場所。平安時代には天皇や貴族たちによる熊野詣が行われ、それは徐々に庶民の間にも広まり熊野信仰が伝わっていきました。
那智エリアにある4つの世界遺産
「紀伊山地の霊場と参詣道」は複数の構成資産からなる世界遺産です。広範囲に渡っているため、全てをまわり切るのは大変ですが、今回ご紹介する那智エリアは「熊野古道・大門坂」からスタートし、「熊野那智大社」「青岸渡寺」「那智の滝」の4つの登録資産を歩いてまわることができます。全行程は約2.7キロ。2~3時間で楽しめる世界遺産巡りです。
1.旅のスタート地点 熊野古道・大門坂
スタート地点となる大門坂は、複数ある熊野古道の参詣道の一つ中辺路(なかへち)の一部です。
大門坂入口へは、大門坂駐車場から約200mほど。公共交通機関を使う場合は、紀伊勝浦駅から那智山方面バスに乗り、大門坂バス停で下車します。(大門坂バス停は駐車場前に位置しています。)バスの本数は30分~1時間に1本程度なので、時間は事前に熊野交通株式会社 那智山方面時刻表のHPでチェックしていきましょう。
入口からしばらくはアスファルト道ですが、樹齢800年の夫婦杉を超えると、那智山へと続く全長約640m、高低差約100mの石畳の上り坂が始まります。
熊野古道には「熊野九十九王子」というものがあり、これは古道沿いに祀られた熊野の御子神(みこがみ)の社のことです。99というのは実際の数ではなく、数が多いということを指しています。夫婦杉すぐ上にある多富毛(たふけ)王子はこの九十九王子の最後の社です。
熊野詣が盛んだった時代の面影を、最も色濃く残している場所と言われる大門坂。所々、多少上りがきつい場所もありますが、両脇にそびえる樹齢数百年の杉木立を眺め、木立を揺らす風の音に耳を傾けていると自然と神聖な気持ちに心が満たされていきます。
2.熊野三山の一つ 熊野那智大社
大門坂の石畳を上りきり、那智山駐車場を超えると、次に出てくるのは那智山参詣道入口から続く階段。まだまだ上りは続きます。参道沿いのお店などを見ながらもうひと頑張り。
こちらの案内図を見ていただけると分かるように、熊野那智大社と青岸渡寺は参詣道を上り左右に分かれたかたちで隣接しています。
地図内の左から順に、熊野那智大社→青岸渡寺→那智の滝とたどっていくのがルートとしては無駄なくおすすめです。
一ノ鳥居を抜けると、長かった階段もあと少しです。
熊野那智大社は、熊野速玉大社、熊野本宮大社と並ぶ熊野三山の一つ。主祭神はイザナミノミコトとも言われる夫須美大神(ふすみのおおかみ)。古来「結宮(むすびのみや)」といわれ、縁結びや諸願成就のご利益があるとされています。
老朽化に伴い、本殿および拝殿は改修工事がなされ平成31年4月竣功予定となっています。工事中は覆いがされてしまっていますが、竣工後には新たに鮮やかに彩られた拝殿と本殿を見ることができます。
拝殿横にある御縣彦社(みあがたひこしゃ)。こちらに祀られているのは、日本サッカー協会のロゴに使用されていることでも有名な八咫烏(ヤタガラス)。八咫烏は、熊野権現に仕える3本足のカラスで「古事記」や「日本書紀」に登場し、初代天皇の神武天皇を熊野から大和まで道案内したとされています。