日本の公的年金制度は、20歳以上のすべての人が加入する国民年金と会社員などが加入する厚生年金の2階建ての構造になっています。年金は年金制度に加入している期間に障害状態になったり、亡くなったりした場合にも受け取ることができます。夫が受け取る老齢年金を中心にして夫婦の生活が成り立っている世帯もあるでしょう。ただし、年金を受け取っている人が亡くなった場合は、すみやかに受給を停止する手続きが必要になります。遺族が行う手続きとその期限について解説します。
年金受給者が死亡したら年金受給者死亡届が必要
年金を受けている人が亡くなると、年金を受け取る権利が無くなります。そのため「年金受給者死亡届(報告書)」を提出し受給を停止するための手続きが必要です。
日本年金機構では、平成23年7月より住民基本台帳ネットワークの情報をもとに住民票コードの収録を行っていますので、「年金受給者死亡届(報告書)」は原則不要です。ただし、「年金受給者死亡届」が不要になるのは、亡くなって7日以内に市区町村に届出を行った場合に限られるので7日目以後に届出を行うと、「年金受給者死亡届(報告書)」の提出が必要になります。また共済年金を受けている人も今まで通り各共済組合へ届出が必要です。
提出が遅れると亡くなった後も年金が支払われることになりますので、この場合、多く受け取り過ぎた年金は日本年金機構から返還するよう求められます。
日本年金機構が住民コードを把握できていない場合は「未収録」と記載されていますので、「住民票コード」を年金事務所に届け出ておくと安心です。
手続きに必要な書類と期限
年金を停止するためには、「年金受給者死亡届(報告書)」に死亡年月日、基礎年金番号と年金コード、生年月日などを記入し、年金を受けていた方の年金証書、戸籍抄本や住民票の除票あるいは市町村長に提出した死亡診断書のコピー、または死亡届の記載事項証明書を添付して手続きをします。
「年金受給者死亡届(報告書)」の用紙は、日本年金機構のホームページからダウンロードできるほか、市・区役所または町村役場の国民年金窓口で受け取ることができます。必要な書類と合わせて厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内に、年金事務所または年金相談センター、共済組合へ提出しましょう。障害基礎年金、遺族基礎年金のみを受けていた方の書類の提出先は市・区役所または町村役場です。
期限内に手続きをしなかったら罰則がある
もし、年金を受けている方が亡くなっていることを家族がかくして年金をもらい続けていることが判明すると、過去5年分の年金をさかのぼって返還しなければならないことになっています。「だまして年金を受け取っていた」ということであれば5年より前に受け取った年金も含めて詐欺罪に問われる可能性もあるなど、不正に受給した年金は返還が求められることになります。
また、年金を受けていた方が亡くなった場合の手続きは、国民年金法や厚生年金保険法に基づいて同居の親族など戸籍上の届け出義務者が死亡届を年金金事務所に提出しなければならないことが定められています。市区町村役場へ届出る死亡届は正当な理由がなく届出期間が過ぎてしまうと戸籍法第135条により5万円以下の罰金が科せられることになっています。
とはいえ、万が一、届出義務者が年金事務所へ死亡届を提出し忘れても年金の支払いが停止するように、住民票コードや後期高齢者医療制度の情報からご本人が健在かどうか確認が行われています。
遺族が未支給年金を受け取る際の手続き
年金は年6回、偶数月にその前月までの2ヵ月分の年金が支払われます。4月に振り込まれる年金は、2、3月の2ヵ月分の年金です。支給の繰り下げを希望していたなど、まだ受け取っていない年金や、亡くなったあとに振り込まれた年金のうち亡くなった月までの分などは、未支給年金として遺族が受け取ることができます。
未支給年金を受け取ることができる遺族は、亡くなった方と生計を共にしていた親族で、順位は1.配偶者、2.子、3.父母、4.孫、5.祖父母、6.兄弟姉妹、7.その他の3親等以内の親族です。
その他の遺族給付として遺族年金を受けられる場合は、1.配偶者、2.子、3.父母、4.祖父母の方が、住所地の市区町村役場、年金事務所または年金相談センター、共済組合に必要書類を提出します。寡婦年金を受け取る場合は、配偶者が住所地の市区町村役場で手続きを行います。
年金を受ける権利は、権利が発生してから5年を経過すると時効により消滅します。早めの手続きが望ましいです。
年金受給者が死亡したら確定申告も忘れずに
年金を受けている人が年の途中で亡くなって一定以上の収入がある場合は、相続する人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内に申告と納税を行います。これを「準確定申告」といいます。期限を過ぎると無申告加算税が課せられる場合がありますので、他の手続きも含めて期限内に済ませられるように進めることが大切です。
文・藤原洋子(ファイナンシャル・プランナー)
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