誰しも実家には思い入れがあるもの。しかし、親が亡くなった後、実家に誰も移り住めないこともあります。その場合、名義変更はどうしたら良いのでしょうか。税金はどうなるのでしょうか。急に「その時」が来て慌てないようにしましょう。

不動産を引き継ぐ時の手続き

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最初に、不動産を引き継ぐ際にしなければならないことを簡単におさえておきましょう。

親名義の不動産を把握する

親が所有する不動産は実家だけとは限りません。実際に、子どもに知らせていないセカンドハウスを持っていたというケースもありました。

親名義の不動産を把握するには、住んでいる市区町村の窓口で名寄帳(なよせちょう)を請求しましょう。名寄帳とはその人が所有する不動産の一覧表で、所有者ごとに作成されています。相続前に確認する場合、本人でなくとも委任状があれば請求できます。

ただし、複数の市区町村に不動産がある場合は、それぞれの市区町村に請求する必要があるので注意してください。

誰がどう引き継ぐかを考える

詳しい方法は後述しますが、誰が引き継ぐかの話し合いが必要です。その際、兄弟姉妹など相続の対象となる親族を交えることが欠かせません。

名義変更と申告と納税

名義変更の手続きに資格は不要で誰でもできますが、時間も労力もかかるので費用を支払って司法書士に依頼するのが一番でしょう。名義変更が完了し、必要であれば税金の申告と納税を済ませ、手続きは終了です。

実際の相続のケースでは、祖父母やそれ以前の先祖名義の不動産の存在が発覚したこともあります。このような場合、過去何代にもさかのぼっての手続きが必要であり、かなりの労力と費用を要します。後の世代に迷惑をかけないためにも、正しく名義変更をしておきましょう。

引き継ぎ方法の選択

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不動産を引き継ぐ方法はいくつか考えられますが、代表的な3つの方法「贈与」「相続」「売却」について確認しましょう。

贈与 親が不動産のほか、どれくらい財産を持っているかがポイント

贈与による贈与税の計算方法は2種類あり、暦年課税と相続時精算課税のどちらを選択するかにより、贈与税額は異なってきます。

暦年課税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額をもとに計算します。相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。

それぞれの制度の選択については条件が異なるので、詳しくは専門家に確認する必要がありますが、基本的にどちらを選択するかの基準は、「親が不動産のほかにどれぐらいの財産を持っているか」です。

つまり、将来起こる相続時に、相続税の対象となる財産(たとえば不動産だけではなく、現預金や保険、株式や投資信託等を含めた財産)の総額がいくらになるかにより選択する方法が異なります。

この選択は、税理士に相談するのが一番でしょう。正しく選択をしないと、贈与税額も将来発生する相続税額も高くなってしまいます。