2015年1月に改正された相続税の基礎控除の引き下げにより、富裕層を対象とした相続税対策として「アパートを建てる」「タワマンを買う」「教育資金贈与制度を活用する」などの情報が巷にあふれている。
しかし、多くの富裕層が「一番の相続税対策」と口を揃える方法を知っているだろうか。それは「子供への教育」だ。富裕層は、子供への投資が一族にとって最もコストパフォーマンスが良いと知っている。その理由は見ていこう。
子供への教育費は基本的に非課税
もともと日本では教育資金の贈与は非課税だ。国税庁のHPを見てみると、贈与税がかからない場合として、次のように定義されている。
「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの。ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます」(国税庁HPより抜粋)
もちろん、最終的には国税庁の判断ということになるが、基本的には子供の教育にかけたお金は贈与税の対象外となる。従って、富裕層は、子供の教育にたくさんのお金をかけ、一族をますます繁栄させるためのスキルやネットワークを身に着けさせるのだ。
世界の富裕層がボーディングスクールに通わせる理由
「ボーディングスクール」という言葉をご存知だろうか。主に海外の富裕層の子供が集まる全寮制、寄宿制の学校のことだ。例えば、富裕層に人気なスイスのボーディングスクールは、年間の学費が1,000万円前後と言われている。12~18歳の間に通わせるケースが多いので、7年間で7,000万円、そこから欧米の有名大学、大学院に進むと学費だけで合計1億円を超える計算だ。
なぜそこまで教育にお金をかけるのだろうか。それは、そのような環境で得る語学力、学歴、バランスの取れた国際感覚、何より世界中の富裕層の子供と10代の頃から育まれる強固なネットワークを得ることができるのであれば、1億円以上の価値があると考えるからだ。
このようなスキルやネットワークは子供の「人的資本(ヒューマンキャピタル)」であり、大人になってから「お金を生み出す力」になる。富裕層の子供への教育は、極端に言えば「一族トータルでみたとき得か損か」という投資的発想で行われている。
お受験戦争も同じ発想
ここまでの規模ではないとしても、富裕層が有名私立幼稚園や小学校の「お受験」に熱心なのも、同じような発想がある。有名私立校には、その地域の富裕層の子供が集まってくる。質の高い教育はさることながら、小さい頃から、そのような環境で育まれる人間的繋がりが、大人になったときの大きな財産になることを富裕層は知っているのだ。
頭脳に税金はかからない
ここで振り返りたいのが、子供の人的資本の形成にかかる費用(教育費)は親が払うので、贈与税も相続税もかからないということだ。子供に蓄えられたヒューマンキャピタルに税金が発生することもない。「アナタは世界中の富裕層とコネクションがあって、この先バンバンお金を稼ぎそうなので、そのコネクションに税金をかけます」という国税当局が存在するだろうか。
頭脳に税金はかからない。富裕層の教育とは、実質非課税の「親から子供へのバランスシートの移転」であり、それがゆえに多くの富裕層が「一番の相続税対策」と口を揃えるのだ。
文・中村伸一(マネーデザイン代表取締役社長)/ZUU online
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