働き方改革関連法案の施行などを通して、労働環境の是正や多様な働き方の推進が進んでいます。一方で、職場で感じるストレスや日常生活の中での疲れなど、働き盛りの若者を中心に心身の不調を訴える人はたくさんいます。働き手は、どのようにしてストレスを管理すればいいのでしょうか。後編では、自分でできるストレスマネジメントや周りの人との連携などについて、かゆかわクリニック院長・粥川裕平先生に伺いました。

前編はこちら。

(かゆかわクリニック院長:粥川裕平氏)

不調を感じたときの対処方法

──不眠や食欲不振・倦怠感など、「何だかおかしい」と体やメンタルが発するSOSに気づいたとき、どのように対応したらいいのでしょうか。

粥川:まず、職場の保健師や産業医の先生に相談してみましょう。社内にそのような部署が設けられていない場合には、内科など普段通院している「かかりつけ医」を受診しましょう。感じているSOSが激務による疲れやストレス起因のものか、身体疾患などの体調不良からきているものかを確認してください。

身体疾患に起因するものではない場合、より専門的かつ適切な治療を受けられるように、先に相談した「かかりつけ医」や、職場の健康管理部門が紹介してくれるメンタルクリニックを受診しましょう。

とにかく「仕事で忙しいから」と先送りにしてしまわず、違和感を覚えたときにできるだけ早めに受診することが大切です。また、すぐに受診が難しい場合には、できるだけ無理しないように心がけましょう。

──自分自身はもちろんですが、家族や同僚など周りにいる人が過労死しないように、すぐに取り組めることはありますか。

粥川:ひとつの目安として、月あたりの残業時間を40時間以内に抑えること。仕事以外のことにも十分に時間を使うことができるように、仕事ばかりに夢中になり過ぎないこと。誰かのためではなく、自分のために仕事をしていることを忘れないことですね。

特に、もともと高血圧や糖尿病などの生活習慣病や、悲観傾向にある人は、健康維持のためにも徹夜など睡眠不足になるような長時間労働は自分から遠ざけるようにしましょう。

また、ストレスチェックや定期診察にて要受診と結果が出た場合には、勝手に様子見せずに、できるだけ早く相談したり専門医を受診したりして、間髪入れず早急に対応しましょう。

まずは上司に相談を

──激務や過労に関する悩みを抱えているとき、どこに相談すればいいのでしょうか。

粥川:一番に相談してほしいのは、あなたの上司ですね。上司のなかには、部下が激務や過労の状態に陥っていることに気づけていない人も少なくありません。

また、無理に仕事を押し付けようとしているわけではないケースがほとんどです。だからこそ、自分の状態をきちんと伝え、相談することが大切なのです。

また、家族や同僚に今の状況を打ち明ける、相談することで答えが見えてくることもあります。いずれもあなたにとって身近な存在であり、きっと親身になって話を聞いてくれることでしょう。

次に相談してほしいのは、職場の保健師や産業医、かかりつけ医です。話をしっかりと聞いたうえで、今の状態を的確に把握し、適切な治療やアドバイスをしてくれます。

医師に相談するのは、上司や同僚、家族に比べるとハードルが高いと感じるかもしれませんが、専門家に相談しいち早く対処することで、悩みを早急に解決できる可能性があります。

そのほかにも下記のような専門機関があり、WEBサイトから気軽に相談できるようになっています。ご興味のある人はご検索ください。

・過労死等防止対策推進全国センター
サイト上のフォームから、過労死・過労自殺・過重労働に関する相談ができます。相談内容や要望に応じて、所轄の労働局や労働基準監督署や過労死問題に取り組む弁護士なども紹介してくれます。

・過労死110番全国ネットワーク
過労死弁護団全国連絡会議が運営。「過労死をなくそう!」をテーマに掲げ、相談ダイヤル(電話)や全国の専用窓口を紹介。

・働くもののいのちと健康を守る全国センター
サイト上のメールフォームから過労死・過労自殺・過重労働に関して相談できます。