収録当日になっても、ほとんどのミュージシャンはどんな曲か知らなかった。ライオネル・リッチーとマイケル・ジャクソンは、収録の1週間前にケニー・ロジャースのスタジオで行ったトラッキングセッションにかろうじて間に合うように曲を仕上げた。スタジオを貸したケニー・ロジャースでさえ、収録当日まで曲を聞いていなかった。
個性派ぞろい レイ・チャールズの一言で団結
収録は午後9時にスタートし、12時間続いた。一流ミュージシャンは個性派ぞろいである。「こうしたらいい」「ああしたらいい」という声は当然、出てくる。
まとまりがつかなくなりそうなところを救ったのはレイ・チャールズだった。レイ・チャールズはこの時、すでに54歳。視力を失いながらもトップミュージシャンとして活躍し続けており、参加したミュージシャンたちは尊敬の念を抱いていた。
「マイケルたちの言うことをきいて、これをやり遂げようじゃないか」
レイ・チャールズのこの一言で、現場は団結したという。
「We Are the World」でソロ部分を歌い、ミュージックビデオで顔を出しているのは登場順にライオネル・リッチー、スティービー・ワンダー、ポール・サイモン、ケニー・ロジャース、ジェームス・イングラム、ティナ・ターナー、ビリージョエル、マイケル・ジャクソン、ダイアナ・ロス、ディオンヌ・ワーウィック、ウィリー・ネルソン、アル・ジャロウ、ブルース・スプリングスティーン、ケニー・ロギンス、スティーブ・ペリー、ダリル・ホール、ヒューイ・ルイス、シンディ・ローパー、キム・カーンズ、ボブ・ディラン、レイ・チャールズの21人。発起人のハリー・べラフォンテはコーラスのみの25人の中に入っている。
制作にあたって中心的な役回りをしたハリー・べラフォンテ、ライオネル・リッチー、マイケル・ジャクソン、クインシー・ジョーンズのうち、ライオネル・リッチー以外は、すでにこの世を去った。