幻の橋と呼ばれているタウシュベツ橋は見える時期、入れる人数が限定されている特別な橋です。崩壊寸前の朽ちていく姿と反比例するように高い人気を誇っていますが、ツアーに参加してより一層満足できる旅にしましょう!

崩壊寸前!タウシュベツ橋とは?

昭和62年に全線廃線となった旧国鉄士幌線という鉄道がこの地域にありました。当時は林業が盛んで切り倒した気を運ぶための線路が敷かれ、その後林業が栄えると多くの住民が移り住み、山間の土地に最大で1,000人が住んでおりとても活気があったそうです。

士幌線の線路跡

林業の衰退とともに人口は減り、鉄道も廃線。大きな川である音更川に沿って鉄道が引かれたため、たくさんの橋がありましたが、発電目的のダム湖である糠平湖が作られたときに多くが切り捨てられてしまいました。

荒廃が進む橋

中でもタウシュベツ橋は、糠平湖の水位変動に伴い水没・出現を繰り返し、水と氷の影響で表面や内部の劣化が著しく、今にも壊れそうな状態になっています。しかし、その推移変動によって見えたり、見えなかったり、綺麗な眼鏡橋になったりと幾度の姿を変えることで、幻の橋とも言われ人気の高い橋になっています。

ツアーで参加しよう!

タウシュベツ橋までの林道は許可車両以外通行禁止になっています。また、冬季は入れませんので、雪解けの終わった春(GW頃)から橋が水没するまでと短い期間になっています。そのため2023年現在、この橋を見るには3つの方法があります。

1. タウシュベツ展望台から眺める
2. ガイドセンターの有料ツアーを利用して橋の近くまで行く
3. 道の駅かみしほろで林道ゲートの鍵を借りて、自家用車で行く

林道を歩いて湖面に向かいます

展望台はタウシュベツ橋まで距離があるため、遠くから小さい橋を見ることしかできません。また、鍵は10個しかなく先着予約順のため争奪戦です。また、狭く電波もないので対向車が来た時や事故対応にはリスクが伴います。また、熊も出るのでバイクや徒歩は危険すぎます。

ガイドツアーは橋の袂まで行けるだけでなく、歴史や見どころなどを含めた満足の内容になっていますので、ツアーでの参加をオススメします。

目的地までの廃線跡の林道は動物に出会えるチャンス

ぬかびら源泉郷にあるひがし大雪ガイドセンターからスタート。ワゴン車何台かに分かれて目的地まで向かいます。途中車内でも糠平のことや歴史、季節の話などを盛りだくさんにガイドさんがしてくれます。

林道では様々な動物たちに会えます

許可車両以外通行禁のゲートをくぐり、林道を進むと入った瞬間から別世界に入った感覚でした。時折顔を出すキツネやニホンジカなどの野生動物を車の中からですが間近で見ることができます。ヒグマが出没する地域でもありますので、注意は必要です。

線路の面影

また、筆者が訪れた6月下旬はドロノキというポプラの一種の白い綿毛が舞っていて、林道がとても幻想的な雰囲気に包まれていました。橋の近くまで行ったら車から降り、元々は鉄道の線路だった場所を歩いて向かいます。面影はほとんどなくただの林道にしか見えませんがその境を見ると、線路に沿って盛土がされていた部分が道になっていることが分かります。

タウシュベツ橋を間近で見よう

渇水状態のタウシュベツ橋

林道を抜けるとそこはもう糠平湖の湖面です。雨量、雪どけ、ダムの貯水量により水位が変動し、橋が見えている(水没していない)時期にかなり違いがあり、見え方が大きく異なります。5月下旬に水没した年もあれば、8月に橋の全景が見えた年もあるそうです。

渇水状態の時は近くまで行ける

筆者が訪問した時は、水が引いていた渇水状態で橋が全て見えてその下に小川が流れていました。この状態であれば橋の袂をぐるりと一周できます。水が上がってきて波が立っていない状態になると、下まで降りることはできませんが、水量によっては眼鏡橋が姿を現してくれます。この状態を見るのであれば早朝のツアーだと凪の状態が多く、見られる可能性が高いということです。

眼鏡橋になったタウシュベツ橋

春の渇水から徐々に水量が増え、冠水して見えない状態になり、冬にかけて積雪、凍結して、また春に顔を出してくれるというのを繰り返しています。なかなか読みきれないからこそ幻の橋とも言われているのも納得ができますね。

MVやCMの撮影地にも!腐らない切り株の不思議な光景

ダムが完成すると湖底に沈んでしまうため、その前にお金になりそうな木は全部切ってしまったそうです。切り株だけが残されダムの湖底に沈んだのですが、ダムの完成から68年たった今でも切り株が腐らずに残っています。木を腐らせるのは菌で、その菌は水中では生きられないので、木が水に沈んでいる間は腐らないのだそうです。

腐らずに残っている切り株

とても不思議なこの光景が見られるのも渇水状態の時に限られます。幻想的なのでCMやMVにぴったり!ということでロケ地になりいくつか映像化もされていますよ。

アーチ橋は一つじゃない!第五音更川橋梁

士幌線は音更川に沿って鉄道が引かれたため、たくさんの橋を造る必要がありました。現地の砂利を使って作るコンクリートを使った強い構造のアーチ橋が49橋も建設され、糠平周辺の山岳部には大きなアーチ橋が12橋が残されています。

そのうちで最も人気が高いのがタウシュベツ橋ですが、ツアーでは第五音更川橋梁など他の橋も巡ります。一部のアーチ橋では線路をそのまま生かしてトロッコを走らせるアクティビティを行っています。

プラットフォームがそのまま残ってる!幌加駅跡

昭和29年の台風による大量の風倒木の処理に多くの造材人夫が入り、住宅・商店・飲食店・事業所などが続々と建設され、昭和37年頃の幌加は約80軒の建物、350人程の人が住む賑やかな町を形成していたそうです。林業のためだった駅も人口の増加とともにプラットフォームができ、今もそのプラットフォームや線路は残ったままなので、ツアーでは草に生い茂った幌加駅跡も見ることができます。

幌加駅のプラットフォーム

風倒木の処理が終わり、人は次第に消えていき、ついに廃線になり、しばらくは放置されていましたが、上士幌町の遺産として駅の看板や説明板などと設置し現在の状態にしています。ぬかびら源泉郷にある上士幌町鉄道資料館ではもっと詳しい情報を見ることができます。