非課税で運用できる「NISA(ニーサ)」には、「つみたてNISA」と「一般NISA」があり、どちらか好きなほう選ぶことができます。また、一度選んだものをもう一方に切り替えることもできます。切り替えのルールは少し複雑ですが、正しく把握しておけば、よりNISAを有効に使うことができます。

ここでは、NISAの「切り替え時の注意点」を2つに絞って解説します。

つみたてNISAと一般NISAの違い

「切り替え」について解説する前に、まずは2つのNISAの違いをおさらいしておきましょう。

つみたてNISAも一般NISAも、運用益が非課税になる点は共通です。通常だと利益に約2割の税金がかかるので、かなり有利と言えます。一方、投資金額の上限や期間、商品などに違いがあります。

つみたてNISA 一般NISA
投資できる金額 40万円/年 120万円/年
非課税期間 20年間 5年間
投資できる年 2037年まで
※2042年まで
2023年まで
投資できる商品 投資信託のみ 投資信託、株式
投資タイミング 選べない
(積立方式のみ)
選べる

【選択肢が多い一般NISA 非課税期間が長いつみたてNISA】
つみたてNISAで投資できるのは一部の投資信託で、株式に投資することはできません。一方一般NISAは債券以外であれば原則自由に商品を選べます。

選択肢が少ないですが、つみたてNISAは非課税期間が一般NISAの4倍の20年あります。

一般NISAとつみたてNISAは年ごとに切り替えられますが、同じ年に併用することはできません。したがって、どちらかを選ぶことになります。

多くの選択肢から選びたい方は一般NISAを、長期で運用したい方はつみたてNISAを選ぶのが基本です。選び方は次章で詳しく解説します。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

つみたてNISAが向いている人、一般NISAが向いている人

NISAは有利な制度ですが、「内容をよく知らないまま始めてしまった」という方も多いのではないでしょうか。運用がうまくいっていない場合、それは自分に向いていないNISAを選んでいるからかもしれません。

ここで、改めてどちらのNISAが自分に向いているか確認してみましょう。

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(画像=fuelle編集部作成)

つみたてNISAが向いている人

つみたてNISAは、長期運用ができる人に向いています。

長期運用は、複利効果や時間の分散効果によって効率良く運用できるというメリットもあります。つみたてNISAには長い非課税期間があるので、フル活用したいところです。

ハイリスク・ハイリターンを求めず、平均的な運用で満足できる人も、つみたてNISAが向いています。つみたてNISAでは、投資信託を少しずつ買っていきます。資産と時間を分散させることでリスクを抑えられますが、その分大きなリターンは望めません。

【「長期運用」と「時間の分散」のメリット】
長期運用では「複利」の効果が大きくなるというメリットがあります。“得られた利益”も投資に回すことで、利益がさらに利益を生むからです。運用期間が長くなるほど投資に回す利益が増えるので、複利の効果が大きくなります。

「時間の分散」は、投資時期をずらすことで価格が高いときだけでなく安いときにも投資できるため、取得価格を平準化する効果があります。投資期間が長くなるほど、時間の分散効果は大きくなります。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

一般NISAが向いている人

一般NISAは投資できる選択肢が多く、株式と投資信託に投資できます。

つみたてNISAと違って、銘柄もタイミングも限定されていません。自分で投資対象や投資タイミングを適切に選べる人は、一般NISAが向いているでしょう。

ただし、非課税期間を延長させる「ロールオーバー」や、株式の配当を非課税で受け取るために「株式数比例配分方式」を選択する手続きなど、一般NISAにはつみたてNISAにはないルールがあります。

一般NISAはつみたてNISAより自由度が高い分、自分で判断することも多くなります。それらの判断や手続きができる人が、一般NISAに向いているといえるでしょう。

【株式投資家は一般NISA】
どちらがよいか迷ったら、「株式に投資するかどうか」で判断してもよいでしょう。株式に投資できるのは一般NISAだけなので、今後も株式に投資したい方はつみたてNISAではなく一般NISAを選択しましょう。

一般NISAで株式に投資する場合は、配当金の受け取り方を「株式比例配分方式」に変えておきましょう。一般NISA以外の株式も含めて、保有するすべての株式の配当金を直接証券会社の口座で受け取る方法です。この方法でないと配当金が非課税になりません。
「株式比例配分方式」は、証券会社に申し込むことで設定できます。なお、複数の証券会社で取引がある場合、1社で「株式比例配分方式」を選択すると、他の証券会社もすべて「株式比例配分方式」に変更されます。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

つみたてNISAと一般NISAは切り替えられる

上記の解説で「私に向いているのは別のNISAだ」と気づいたら、NISAの切り替え手続きを行いましょう。そこで、切り替えルールの概要をご紹介します。

1年に1回変更できる

1年に1回、つみたてNISAから一般NISA(またはその逆)へ変更することができます。切り替えには細かいルールがありますが、「その年にNISA口座を利用する前なら変更できる」と覚えておきましょう。

金融機関の変更もできる

NISAでは、「その年にNISA口座を利用する前」なら金融機関を変更することもできます。

【より良い条件の金融機関に切り替えるチャンス】
一般NISAやつみたてNISAの制度自体はどの金融機関でも同じですが、取扱商品の豊富さやポイントサービスは金融機関ごとに異なります。

せっかくなら、より良い条件の金融機関に変更してはいかがでしょうか。切り替えの方法も後で詳しく解説します。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

年内に「切り替えができなくなる」2つの条件

切り替えをしたいと思っても、次の条件に当てはまる場合は切り替えができません。該当しないかどうかチェックしておきましょう。

条件①NISA口座をすでに利用している

前述のとおり、すでにどちらかのNISA口座を利用してしまうとその年は変更ができません。

NISAの切り替えは、NISA口座を利用する前に判断しましょう。特につみたてNISAの場合は自動的に買ってしまうので、早めに切り替えの判断をすることが大切です。

条件②10月以降に手続きをする

まだNISA口座を利用していないとしても、切り替えの手続きが10月以降になると年内の切り替えができなくなる可能性があります。証券会社によっては、年内のNISA切り替え手続きに期限を設けており、その多くは9月末です。

なお、年内の切り替えができなくても翌年分の切り替えはできます。各証券会社のNISA切り替え手続きのスケジュールを確認し、期限内に手続きを終えるようにしましょう。

非課税期間が残っている内に切り替えても大丈夫?

NISAを切り替えても非課税期間は続く

NISAを切り替えても、すでにNISAで買った商品の非課税期間はそのまま続きます。

例えば2021年に一般NISAで買った分は2025年末まで非課税期間が続き、2021年につみたてNISAで買った分は2040年末まで非課税期間が続きます。

切り替えるのはあくまで「新たな投資枠」で、すでにNISAで買った分が非課税でなくなるわけではありません。

一般NISAのロールオーバーにも対応できる

一般NISAの場合、5年間の非課税期間が終了した翌年に一般NISAの枠があれば、その翌年の非課税期間を利用して延長することができます。これを「ロールオーバー」といいます。

途中でつみたてNISAを利用していても、一般NISAの非課税期間が終了するタイミングで一般NISAへ切り替えれば、ロールオーバーに対応できます。

「つみたてNISAへ切り替えたいけどロールオーバーが……」と心配している人も、タイミングさえ間違えなければ切り替えて大丈夫です。

2つのNISA、切り替えの進め方

NISAの切り替えには、以下の2つのケースがあります。

・「金融機関を変えずに」切り替えをするケース
・「金融機関を変えて」切り替えをするケース

それぞれの手順を確認しましょう。

「金融機関を変えずに」切り替えをするケース

NISA口座を開設している金融機関を変更せず、一般NISAとつみたてNISAの切り替えだけ行うケースです。

この場合は、NISA口座を開設している金融機関に申し込めばOKです。

1.金融機関へNISAの切り替えを申し込む
2.郵送される書類を返送する

手続きは書類で行われます。NISAの切り替えを申し込むと、書類が送られてきます。必要事項を記入し、金融機関へ返送すれば切り替えができます。

「金融機関を変えて」切り替えをするケース

NISA口座を開設している金融機関を変更し、NISAの切り替えも同時に行うケースです。

この場合は、まず現在NISA口座を開設している金融機関で「非課税口座廃止通知書(または勘定廃止通知書)」を受け取ります。

この書類は、新しくNISA口座を開設する金融機関に提出することで「元の金融機関できちんとNISA口座を廃止した」ことを証明するものです。同じ年に複数の金融機関でNISAの投資枠を作ることができないため、この作業が必要になります。

新しい金融機関で一般NISAかつみたてNISAを選択すると、切り替えが完了します。

1. 現在NISA口座を開いている金融機関に、NISA口座の他社切り替えを申し込む
2. 郵送される書類を返送する
3. 「非課税口座廃止通知書(または勘定廃止通知書)」を受け取る
4. 新たにNISA口座を開きたい金融機関にNISA口座の開設を申し込む(このとき一般NISAかつみたてNISAを選択)
5. 郵送される書類を返送する
※3.の「非課税口座廃止通知書」を一緒に提出

金融機関ごとNISAを切り替える場合は書類のやり取りが増えるため、余裕をもって手続きをしましょう。

2024年にスタートする「新NISA」とは?

一般NISAは、もともと2023年までの期間限定の制度でした。これに代わり、2024~2028年は新しいNISAが始まります。

新NISAの概要 解説
投資できる金額 2階部分:102万円/年
1階部分: 20万円/年
原則、1階部分を利用する人だけが
2階部分を利用できる
非課税期間 5年間 5年後、1階部分は
つみたてNISAへ移行できる
投資できる年 2024~2028年まで 2029年以降はつみたてNISAのみ
投資できる商品 2階部分:株式、投資信託
1階部分:投資信託
2階部分でも、一部銘柄は対象外
1階部分はつみたてNISAと同じ銘柄
投資タイミング 2階部分:選べる
1階部分:選べない
1階部分は積立方式のみ

新NISAはつみたてNISAと一般NISAの組み合わせ

新NISAは、つみたてNISAに似た1階部分と、一般NISAに似た2階部分で構成されています。

1階部分で投資できるものはつみたてNISAとほぼ同じで、金融庁の基準をクリアした投資信託だけです。

2階部分で投資できるものは基本的に自由ですが、長期投資を促す観点から「レバレッジ型投資信託」と「監理銘柄」「整理銘柄」は対象外です。

レバレッジ投資信託 本来の値動きをあえて大きくするリスクの高い投資信託
(例)ブル型、ベア型
監理銘柄 上場廃止の可能性が高い株式
整理銘柄 上場廃止が決定した株式

1階部分と2階部分を合わせた非課税投資枠は122万円と、一般NISAよりもわずかに増額されます。

1階部分を利用しないと2階部分を利用できない

注意したいのは、原則1階部分を利用していないと2階部分が利用できないことです。

一般NISAでは株式などにも非課税で投資できますが、2024年以降は積立投資をしていることが条件となります。

ただし例外があり、以下の人は1階部分を利用していなくても2階部分を利用できます。

①現在の一般NISA口座を開設している人
②投資経験者が株式だけに投資する場合

すぐに2階部分を利用したい人は、今のうちに投資を始めておくといいかもしれません。

出典:金融庁「令和2年度税制改正について」

【少額でも1階部分を利用すればOK】
2階部分への投資には1階部分の利用が必要ですが、20万円の枠を使い切る必要はありません。少額でも1階部分で積み立ての設定があれば、2階部分を利用できます。
若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

一般NISAのロールオーバーには対応

現在の一般NISAを、新NISAへロールオーバーさせることは可能です。

例えば2021年に一般NISAで買った投資信託は2025年で非課税期間が終わりますが、2026年の新NISAへロールオーバーできます。

若山卓也
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業、保険募集代理業、金融系ライターとして活動しています。 関心のあるジャンルは資産運用や保険、またお得なポイントサービスなど。お金にまつわることなら幅広くカバーし、発信しています。 AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業、保険募集代理業、金融系ライターとして活動しています。 関心のあるジャンルは資産運用や保険、またお得なポイントサービスなど。お金にまつわることなら幅広くカバーし、発信しています。 AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有
 

切り替えルールに注意しNISAを有効活用しよう

2つのNISAは、毎年どちらかを選択することができます。「まとまった資金ができたから、一般NISAにしたい」という人や「やっぱりつみたてNISAで長期投資したい」という人も、条件を満たせば切り替えることができます。

自分の投資計画に沿いつつ、NISAの切り替えルールに従ってNISAを最大限に利用するようにしましょう。

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文・
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業、保険募集代理業、金融系ライターとして活動しています。 関心のあるジャンルは資産運用や保険、またお得なポイントサービスなど。お金にまつわることなら幅広くカバーし、発信しています。AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有。

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