資産運用に有利な制度の代表が「NISA(ニーサ)」です。さまざまなメリットがある人気の制度で、口座数は2019年12月末時点で1,360万口座を超えています。しかし、NISAにはデメリットもあります。NISAは確かに有利な制度ですが、見逃しがちのデメリットもしっかり確認しましょう。
まずはNISAの特徴とメリットを確認
現在NISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」があります。どのような違いがあるでしょうか?また、それぞれどのような特徴やメリットがあるのでしょう。
一般NISA | つみたてNISA | |
---|---|---|
運用益 | 非課税 | 非課税 |
非課税期間 | 5年 | 20年 |
投資可能金額 | 120万円/年 | 40万円/年 |
投資タイミング | 好きなときに | 定期的 |
投資できる年 | 2023年まで | 2042年まで |
投資できる商品 | 株式、投資信託 | 許可された投資信託のみ |
買付手数料 | 掛かる場合あり (無料の金融機関あり) |
無料 (※ETF除く) |
売却 | いつでもできる |
NISAは投資の利益に税金が掛からない制度
株式や投資信託の投資だと利益に税金が掛かります。税率は20.315%で、100万円の利益があれば20万3,150円が税金として引かれます。
NISAを通じ投資を行うとこれらの税金が掛かりません。利益をそのまま受け取ることができるので効率的な資産運用ができるようになります。
非課税になるのは売却益だけではなく、株式の配当や投資信託の分配金も対象です。せっかく投資するならNISAを通じ投資した方が有利になるといえるでしょう。
非課税期間の数え方
一般NISAは非課税期間が5年、つみたてNISAは非課税期間が20年用意されています。
この非課税期間とは買った年を含めて数えます。たとえば一般NISAの場合、2019年に買った資産は2023年末まで非課税期間が続き、2023年であれば2027年まで非課税期間が続きます。
つみたてNISAの場合は20年ですから、2019年に買った分は2038年末まで、2042年に買った分は2061年末まで非課税期間が続きます。
なお、非課税期間が終了する前でも自由に売却することができます。
一般NISAは自由度が高い
一般NISAは年間120万円まで投資することができます。投資タイミングは自由に選べ、投資したいときだけ投資することができます。
投資対象の商品も、債券以外であれば基本的に自由に選ぶことができます。
つみたてNISAは非課税期間が長い
一方、つみたてNISAは非課税の期間が20年と非常に長いことが特徴です。一般NISAの非課税期間は5年ですから、4倍もの非課税期間が用意されています。
また、投資対象が低コストで運用できる銘柄に絞っているので、銘柄の選び方がわからない方でも有利な商品を選択することができます。
少額の長期投資を考えている方にはつみたてNISAはぴったりといえそうですね。
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商品数 | 160本 | 158本 | 152本 | 150本 | 150本 |
売買手数料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
ポイント還元 | Tポイント | 楽天スーパーポイント 資産形成ポイント |
松井証券ポイント | マネックスポイント | 毎月ポイント |
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「一般NISA」「つみたてNISA」共通のデメリットは?
共通のデメリット1:損益通算ができない
一般NISAとつみたてNISAは、どちらも特定口座との損益通算ができません。特定口座同士なら、それぞれの損益を通算して税金を軽減することができますが、NISA口座ではこれができないのです。

共通のデメリット2:損失が出ているのに税金がかかる場合がある
非課税期間の終了によって、NISA口座から特定口座へ商品を移す場合、「特定口座へ移したときの価格」が「買った値段」と見なされます。そのため、実際は損失が出ているにもかかわらず、税金がかかることがあるのです。
NISA口座で買った商品が値下がりしている場合は、このデメリットに注意しましょう。特定口座へ移したときの価格で買ったことになるので、特定口座に移した後で値上がりした分が課税対象になってしまいます。

共通のデメリット3:非課税投資枠は再利用できない
一般NISAには120万円、つみたてNISAには40万円の非課税投資枠がありますが、一度枠を使うと再利用ができません。買った後に売却しても、非課税投資枠は復活しないのです。
どちらのNISAでも自由に売却することができますが、非課税投資枠が復活しないデメリットには注意しましょう。
共通のデメリット4:一般NISAとつみたてNISAはどちらかしか選べない
一般NISAとつみたてNISAは、併用することができません。年ごとに変更はできますが、1年で1つのNISAしか選べないことを覚えておきましょう。
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「一般NISA」のデメリットは?
NISAでは多くのメリットがありますが、デメリットもあります。まずは「一般NISA」のデメリットから確認しましょう。
一般NISAのデメリット1:2024年以降に投資した分はロールオーバーできない
NISA口座での損失は、他の利益と通算することができません。評価損がある状態で特定口座へ移すと、その後の値上がり分に課税されてしまうというデメリットがあります。
その対応策として「ロールオーバー」があります。ロールオーバーをすると、非課税期間が延長され、非課税のまま値上がりを待つことができます。

一般NISAは2023年に非課税投資枠が終了しますが、2024年から「新NISA」が始まり、2028年まで新たな枠ができる予定です。
これを逆算すると、2024年以降に新NISAで投資した分はロールオーバーすることができません(2024年分は2028年まで非課税期間が続き、ロールオーバーに必要な2029年分の非課税投資枠がない)。
なお、2023年までに一般NISAで投資した分はロールオーバーできます。また、終了するのは投資枠で、2028年に買った資産は2032年まで非課税期間が継続します。

・ロールオーバーのデメリット その年のNISA利用ができない可能性がある
ロールオーバーはまだ使っていないNISA口座の枠を利用して行うため、ロールオーバーで使用した枠では新たな投資ができないことに注意しましょう。
たとえば100万円分の商品をロールオーバーした場合、一般NISAの枠120万円分の内100万円分を使うため、投資ができるのは残りの20万円分です。
なお、NISAの枠を超えていてもロールオーバーはできます。仮に値上がりして200万円になっていても、ロールオーバーは可能です。その場合、その年は新たにNISAを利用することはできません。
一般NISAのデメリット2:「コストが高い銘柄を選択してしまう可能性がある
一般NISAでは銘柄選択の自由度が高いですが、つみたてNISAと違いコストが高い銘柄も投資対象に含まれています。
よく調べずに投資してしまうと「もっとコストが安い銘柄があったのに」と後で後悔してしまうかもしれません。投資枠の再利用はできないためやり直すこともできないんです。
一般NISAでは、投資する前にしっかり確認してから投資しましょう。
一般NISAのデメリット3:配当金を非課税にすると、配当を活用した節税ができない
一般NISAで株を買った場合、売却益は自動的に非課税になりますが、配当金は課税・非課税を選択できます。配当の受け取り方を「株式比例配分方式」を選択すれば非課税になり、それ以外の方法では課税されます。
配当金の受け取りを非課税にすると配当の確定申告ができなくなり、「配当控除」や配当金の「損益通算」を利用できなくなります。

「一般NISA」のデメリット対処法
一般NISAでは損をしないことが大切
一般NISAのデメリットでは損益通算ができない点と、2024年以降の投資分がロールオーバーできないというデメリットがありました。これらに対処するには「損をしない」ということがポイントです。
そもそも通常の口座でも、損であれば非課税です。一般NISAでは損をしてしまうとデメリットが強くなってきてしまうのです。
「損をしない」ということを実現するのは難しいですが、1つは大きなリスクを取らないという対策ができます。個別の株式より投資信託を選択すると分散投資が働きリスクを下げることが期待できます。
投資信託の中でも、いろんな資産を組み合わせている「バランス型投資信託」はさらに分散投資効果が働き、よりリスクの低い運用が期待できるでしょう。
一般NISAでは最長5年間の非課税期間がありますから、5年間の長期でリターンを考えれば小さなリスクでも比較的有効な運用が期待できます。
もちろん絶対に損をしないというわけではありませんが、1つの対策として検討してみてください。
投資信託の場合は3つの手数料を確認する
一般NISAでは高コスト銘柄を選択してしまう可能性がありましたが、事前に手数料を確認すると高コスト銘柄を排除できます。
株式の場合は事前に証券会社の手数料を確認しましょう。投資信託の場合は銘柄ごとに手数料率が違います。3つの手数料を確認しましょう。
投資信託を買う時の「販売手数料」、運用中のコスト「信託報酬」、売却するときの実質的なコスト「信託財産留保額」が主な投資信託のコストです。
投資信託の3つのコスト |
販売手数料 |
信託報酬 |
信託財産留保額 |
目論見書などで事前に確認し、できるだけ安いものを選択するようにしましょう。
ネット系の金融機関を選ぶと手数料が安い
コストを重視する方は、ネット系の金融機関を選ぶといいでしょう。手数料などのコストが安い傾向があるからです。
一般NISAの株式手数料を無料としているネット証券や、投資信託の販売手数料が無料のネット証券、ネット銀行があります。
ネット証券、ネット銀行の例 | |
一般NISAの国内株式手数料が無料 | すべての投資信託の販売手数料が無料 |
・SBI証券 ・楽天証券 ・松井証券 ・マネックス証券 ・auカブコム証券 ・GMOクリック証券 ・DMM.com証券 |
【ネット証券】 ・SBI証券 ・楽天証券 ・松井証券 ・マネックス証券 ・auカブコム証券 ・岡三オンライン証券 【ネット銀行】 ・ソニー銀行 ・ジャパンネット銀行 |
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株の配当金は非課税で受け取ったほうがいい
一般NISAで買った株は、配当金に課税される方式で受け取ることで「配当控除」や「損益通算」に使えます。しかし「配当金は基本的に利益」であることを考えると、非課税で受け取ったほうがいいでしょう。
配当控除は他の所得による税金の節税につながりますが、配当金自体は「総合課税」で課税されることになります(所得税率は5~45%、住民税は約10%)。
損益通算は損失を他の利益と相殺するのが主な目的なので、利益である配当金は損益通算する意味があまりありません。
どちらが有利か事前に計算するのが望ましいですが、面倒なら非課税を選択してもいいかもしれません。
「つみたてNISA」のデメリットは?
つみたてNISAのデメリットはどうでしょうか?つみたてNISA独自のデメリットについて解説します。
つみたてNISAのデメリット1:投資タイミングは自由に選べない
投資タイミングを選べないという独自のデメリットがつみたてNISAにはあります。
つみたてNISAでは定期的に投資していきます。証券会社によって微妙に違いますが、原則月に1回同じ日に買っていく制度です。
途中で積み立て自体を停止することはできますが、基本的に買いたい時に買えず、買いたくない時も定期的に買っていく制度です。
投資タイミングを選びたい方にはデメリットとなるでしょう。

つみたてNISAのデメリット2:商品を自由に選べない
つみたてNISAでは投資対象が金融庁認可の投資信託に限定されています。それ以外の投資信託や株式へは投資できません。
銘柄を自由に選択したいという方にはデメリットといえるでしょう。

つみたてNISAのデメリット3:ロールオーバーできない
つみたてNISAでは、ロールオーバーができません。一般NISAではロールオーバーをし、値下がりしてしまった商品の値上がりを待つことができますが、つみたてNISAはロールオーバーの対象外であることがデメリットです。
つみたてNISAも損益通算ができないため、つみたてNISA内で損をしてしまった場合のデメリットが大きくなります。
つみたてNISAのデメリット対処法
一般NISAと同様に低リスク商品を選ぶ
つみたてNISAでも、やはり「損をしない」ことがポイントです。一般NISAと違ってロールオーバーもできないので、投資信託の中でもリスクの低い銘柄を選ぶ戦略が望ましいでしょう。
もっとも、一括投資ではなく定期的に購入し続けるつみたてNISAではそれだけでリスクが下がります。「時間の分散」が効くからです。
投資のタイミングを分散させることで、投資対象の値段が高い時も安い時も買っていくことになります。これにより買い価格が平均化され、いわゆる「高値つかみ」を防ぐことが期待できます。
投資対象も分散投資されている投資信託に限定されていますから、つみたてNISAの場合はあまり投資対象のリスクについては深刻にならなくてもいいかもしれません。
もちろん絶対に損をしないというわけではありませんから、投資の際はお気を付けください。
一般NISAへ切り替える
つみたてNISA独自のデメリットは一般NISAへ切り替えることで対処できます。
原則として切り替えたい年の前年10~12月の間に切り替えます。それ以外の期間でも、まだつみたてNISAを利用していない場合は年内の切り替えが可能な金融機関もあります。
より自由に銘柄を選びたい、投資タイミングを選びたいなどニーズが強ければ一般NISAへ切り替えましょう。
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デメリットを理解しながら上手に活用しましょう
一般NISAもつみたてNISAも税金が掛からずに運用できるので、上手に活用すればきっと資産運用の強い味方になってくれます。
制度の仕組みを理解し、メリット・デメリットもしっかり把握してから利用しましょう。
文・若山卓也
肩書・ファイナンシャルプランナー
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業、保険募集代理業、金融系ライターとして活動しています。 関心のあるジャンルは資産運用や保険、またお得なポイントサービスなど。お金にまつわることなら幅広くカバーし、発信しています。AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有。
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