徳島県三好市にある祖谷渓は、吉野川水系の一級河川・祖谷川沿いにある深い渓谷です。並行して流れる吉野川中流域には「大歩危」「小歩危」などの渓谷もあり、周辺一帯がとても山深い地域となっています。そんな祖谷渓には、日本三大奇橋のひとつに数えられる「祖谷のかずら橋」があり、迫力満点、スリルたっぷりの渡橋体験を味わうことができます。今回は、「祖谷のかずら橋」を中心とした祖谷渓の魅力についてたっぷりとご紹介します。
深いV字の渓谷が魅せる!祖谷渓独特の風景
祖谷渓の特徴と言えば、なんと言っても、深いV字谷の渓谷がどこまでも続くこちらの風景。全長約10kmに及ぶ渓谷で、場所によっては100m以上もの高低差があると言われています。
また、祖谷渓は四国山地の深い山の中にあるため、まるで断崖絶壁のように急傾斜になっています。川沿いに連なる山々は、水面ギリギリのところまで緑の木々が生い茂っており、祖谷渓独特の風景を特徴づけています。
JR土讃線の祖谷口駅そばから、「県道32号 山城東祖谷山線」を南東に約5km進むと、「出合集落」にたどり着きます。ここは、祖谷川沿いにわずかにある平地部分を活用した集落で、まるで川沿いにへばりつくように家々が連なっています。
こちらの出合集落からさらに南に進んで行くと、冒頭の写真のように深くV字に切り立った祖谷渓が姿を見せます。
祖谷渓に来たなら絶対に渡りたい!?スリル満点の「祖谷のかずら橋」
祖谷渓に来たら一度は必ず渡っておきたいのが、こちらの「祖谷のかずら橋」。シラクチカズラ(サルナシ)を用いた原始的な吊り橋で、橋の長さは45m、幅は2m、谷底からの高さはおよそ14mと、ぱっと見ただけでもいかにもスリルがあります。
日本三大奇橋に数えられる橋は諸説ありますが、この祖谷のかずら橋も、山梨県桂川の猿橋や山口県岩国市にある錦帯橋などと並んで、その1つに数えられることが多いようです。
昔は、深い祖谷渓を渡る地元の人々の生活路として、いくつものかずら橋が活用されていました。しかし今では、こちらの祖谷のかずら橋と、東祖谷菅生地区に架けられている「奥祖谷二重かずら橋」と呼ばれる2本組のかずら橋、計3本が残るのみとなっています。
さて、祖谷のかずら橋について簡単にご紹介したところで、早速こちらの橋を渡ってみましょう。渡橋料は大人1人550円です。祖谷渓のV字谷の高低差が100m以上であることを考えると、橋が架かっているのは谷底から約14mの高さですので、それほど高いようには見えないかもしれません。が!いざ1歩踏み出すと、これがかなりのスリルを感じます。
素朴なシラクチカズラのつるでできたこの橋は、上の写真を見ると分かる通り、橋桁の部分に隙間が開いていて恐怖心をさらに掻き立てます。いざ渡り始めると、足元も不安定なのでついつい後ろのスタート地点を振り返りたくなりますが、なんとこちらの橋は一方通行!1度足を踏み出せば、もう後戻りはできません。
たっぷりのスリルを味わいながら、ユラユラと揺れる祖谷のかずら橋をぜひ最後まで渡り切りましょう!
祖谷のかずら橋を渡って徒歩1分のところには、高さ約50mの「琵琶の滝」があります。昔、平家の落人がこの滝に集い、京の都をしのんで琵琶を奏でながら慰め合ったという伝説も残っています。