毎月コツコツと積み立てることで老後の資産形成ができる「つみたてNISA」。投資で得た利益にかかる税金が非課税であったり、いつでも売って現金にできたりとメリットの多い制度ですが、つみたてNISAを利用できる口座は1人1口座しか持つことができないので、どの金融機関に口座を開設するかは慎重に選ぶ必要があります。
今回は、つみたてNISAの口座を選ぶ際にチェックしたい3つのポイントとおすすめの金融機関、さらに特に初心者におすすめの証券口座として「SBI証券」と「楽天証券」について詳しくご紹介します。
手数料自体に差がないつみたてNISA(積立NISA)
つみたてNISAの投資信託はどこで買っても手数料ゼロ
普通の口座で買える商品には、購入時の手数料が高いものから安いもの、また無料の商品までさまざまですが、つみたてNISAで買える投資信託はすべて購入手数料が無料です。
というのも、そもそもつみたてNISAで取り扱うことができる投資対象商品は、「販売手数料がゼロ(ノーロード)」という条件があるからです。
信託報酬も金融機関で差はなし
また、投資信託を保有していると、それを管理してもらうための経費として信託報酬を払う必要があります。しかし、この信託報酬は投資信託ごとに決まっているので、同じ投資信託を保有しているのに金融機関ごとに金額が異なるということはありません。
結局、つみたてNISAの口座を選ぶ時に金融機関ごとの手数料の違いは考えなくていいのです。
では、どんな点に着目して金融機関を選べばいいのでしょうか?次からは、金融機関を選ぶ際のポイントを解説します。
つみたてNISA(積立NISA) 金融機関を選ぶ際にチェックしたい3つのポイント
1. 取扱商品数・種類は豊富か
2. 積立金額はどのように設定できるか
3. ポイントサービスは充実しているか
チェックポイントその1:取扱商品数・種類は豊富か
つみたてNISAの口座を開設する金融機関を選ぶにあたって最も大切なことは、取扱商品の豊富さです。つみたてNISAで取り扱うことができる商品はそもそも厳選されているのですが、その中でもどの商品を取り扱うかは金融機関によって異なります。
ある金融機関では100種類の投資信託が選べるのに、別の金融機関では3種類しか選べないということもあるのです。
選択肢が多いほうが、より自分に合った投資信託を組み合わせることができます。また将来、投資信託自体の手数料である信託報酬が変わっても、商品が選びやすいです。
つみたてNISAで取り扱う投資信託は今後も増えていくことが見込まれていますが、現在の取扱商品数が多い金融機関のほうが、新しい商品を積極的に取り入れると考えられます。
チェックポイントその2:積立金額はどのように設定できるか
積立金額の設定でチェックしたいのは、以下の3点です。
①いくらから積み立てができるか
②何円単位で設定できるか
③増額月が設定できるか
①に関しては金融機関によってさまざまですが、ネット証券では100円から積み立てできるところも多くなっています。少額から積み立てができれば、一時的に収入が落ちて生活が苦しい時などでも、無理なく継続できるというメリットがあります。
②と③は、つみたてNISAの非課税投資枠40万円をどれだけ有効に使えるかに影響します。
つみたてNISAに1年間で投資できる金額は40万円と決まっていますので、できるだけその枠を使いたいという人は多いでしょう。しかし、1,000円単位でしか設定できない金融機関では、最大限に利用しても月々3万3,000円、年間39万6,000円になってしまいます。
一方100円単位で設定できると月々3万3,300円、年間39万9,600円まで利用でき、非課税投資枠をより有効に使うことができます。
また増額月を設定できる場合は、例えば月々3万円ずつ積み立てて、年に2回2万円ずつ増額すれば、年間40万円の非課税投資枠を無駄なく利用することができます。
チェックポイントその3:ポイントサービスは充実しているか
つみたてNISAの口座を開設する際は、その金融機関のポイントサービスも確認しましょう。金融機関によっては、つみたてNISA口座内の資産に応じてポイントが貯まるところがあります。
つみたてNISAでは長期にわたってコツコツと積み立てを行うので、たとえ1ヵ月にもらえるポイントがわずかでも、積み重なれば大きな額になります。
つみたてNISA(積立NISA)、どこの証券会社がおすすめ? 証券会社7社を徹底比較!
では、具体的にどの証券会社がおすすめなのでしょうか。先に紹介したチェックポイントを踏まえて、7社を比較してみます!
まずは、それぞれの特徴を一覧にしました。商品本数、ポイントサービスの有無など比較してみてください。
金融機関 | 商品本数 | 積立金額 | ポイントサービス | |
---|---|---|---|---|
SBI証券 | 174本 | 100円以上1円単位 ボーナス月設定あり |
月間平均保有残高に応じてTポイントが貯まる | 公式サイト |
楽天証券 | 172本 | 100円以上1円単位 増額設定あり |
月間平均保有残高に応じて楽天ポイントが貯まる | 公式サイト |
マネックス証券 | 151本 | 100円以上1円単位 ボーナス月積増設定あり |
保有残高に応じてマネックスポイントが貯まる | 公式サイト |
松井証券 | 170本 | 100円以上1円単位 | 信託報酬が0.3%を超える投資信託は現金が還元される | 公式サイト |
auカブコム証券 | 157本 | 100円以上1円単位 増額月設定あり |
月間平均保有残高に応じてPontaポイントが貯まる | 公式サイト |
大和証券 | 22本 | 100円以上1円単位 | ー | 公式サイト |
野村證券 | 7本 | 1,000円以上1,000円単位 | ー | 公式サイト |
次からは、各ネット証券会社の特徴をより詳しく解説していきます。
SBI証券:取扱商品数が最も多い
SBI証券はネット証券最大手で、つみたてNISAの口座開設先としても人気があります。特徴は、何といっても取扱商品の多さです。2021年4月時点で174本は金融機関の中でも最も多く、今後も新しい商品をいち早く追加されることが期待されます。
投資信託の残高に応じてTポイントが貯まるのも魅力です。TポイントはTSUTAYAだけでなくファミリーマート、ガストなどさまざまな店で使えるので、利用している人も多いのではないでしょうか。
つみたてNISAの利用でTポイントが貯まるのは、他の証券会社にはないメリットといえます。
楽天証券:商品数も多く、楽天ポイントが貯まる
楽天証券も、ネット証券の中では非常に人気がある証券会社です。つみたてNISAの取扱商品数は172本とSBI証券の次に多く、商品選びで困ることはないでしょう。
また、人気の「楽天・バンガード・ファンド」の取り扱いがあるのは楽天証券だけであり、このファンドで資産運用をしたい人にとってもメリットがあります。
楽天証券では、つみたてNISAの購入を楽天カードクレジット決済することで「楽天ポイント」が貯まりますし、さらに投資信託の保有残高によってもポイントが貯まります。楽天グループのサービスをよく利用する人にとっては、うれしいサービスです。
マネックス証券:商品ラインアップも十分、ポイントはAmazonギフト券などに交換できる
マネックス証券も商品の取扱数が151本と多く、ほとんどの人は不足に感じることはないでしょう。積立金額の設定も100円以上1円単位ででき、とても使いやすい口座です。
マネックス証券でも、投資信託の残高によって独自のポイントプログラム「マネックスポイント」が貯まります。このマネックスポイントはAmazonギフト券やdポイント、Tポイントなどに交換できます。
松井証券:充実したサポート体制と100年を超える実績
松井証券は商品取扱数が170本と多く、またサポート体制が手厚いことで評判の証券会社です。100年を超える歴史があり、手数料の無料化など常に顧客のことを考えたサービスをいち早く取り入れてきた実績があります。
松井証券のポイントプログラムは他の証券会社とは異なり、信託報酬が0.3%より高い場合はその差額分が還元されます。還元の対象になる投資信託は限られますが、ポイントだけではなく現金での還元も選べる点は、他の金融機関にはない特徴です。
auカブコム証券:ドレスを選ぶ感覚でファンドを選べるユニークなサービスあり
auカブコム証券は取扱商品が157本と多く、積立金額も100円から設定できるので、とても使いやすい証券会社です。
ユニークなのは、“ドレスを選ぶ感覚”で投資信託を選べる「FUND DRESS」というサービスです。このサービスでは、それぞれの投資信託が持つリスクや運用実績などを色彩心理に基づいて色で表しており、直感でドレスを選ぶように自分に合った投資信託を見つけることができます。
大和証券:ETFの取り扱いが多い希少な証券会社
大和証券の商品取扱本数は22本と、これまで紹介してきた証券会社に比べて少ないですが、比較的信託報酬の低いバランス型の投資信託が多いといえるでしょう。大和証券の特徴は、何といってもつみたてNISAでETFの取り扱いがあることです。
つみたてNISAで購入できるETFは7種類ですが、これまで紹介してきた証券会社にはETFの取り扱いはありません。しかし、大和証券ではこの7種類のETFをすべて取り扱っています(2021年4月時点)。
野村証券:取扱本数は少ないが手数料が低い商品がそろう
野村証券はつみたてNISAの取扱本数が7本と他に比べると非常に少なく、選択肢という点では自由度が低いかもしれません。ただし信託報酬が低いものに限定されているので、どれを選べばいいかわからない投資初心者の人でも安心して始められるラインアップになっています。
特に2020年3月からオンラインサービス限定で取り扱いが開始された「野村スリーゼロ先進国株式投信」は、信託報酬が0.000%(2031年以降は0.11%以内)で保有できるという、とても珍しい投資信託です。
商品数が豊富なSBI証券と楽天証券は特におすすめ
手数料に差がつかない以上、つみたてNISA口座の金融機関選びでは取扱商品数が大切になります。
前述したように、そもそもつみたてNISAでは投資対象商品に基準が設けられていて、2021年4月時点ではインデックス投資信託167本、その他のアクティブ運用投資信託などが19本、上場株式投資信託(ETF)が7本の計193本が対象となっています。
つみたてNISAの投資対象商品数 | |
インデックス投資信託 | 167本 |
アクティブ運用投資信託など | 19本 |
上場株式投資信託(ETF) | 7本 |
合計 | 193本 |
大手の金融機関の中には取扱商品が5ファンド以下の会社もありますが、SBI証券の取扱商品はインデックス投資信託157本、その他のアクティブ投資信託17本の計174本、楽天証券ではインデックス投資信託155本、その他のアクティブ投資信託17本の計172本と、つみたてNISAで取り扱うことができる投資信託をほぼカバーしています。
SBI証券 | 楽天証券 | |
インデックス投資信託 | 157本 | 155本 |
アクティブ運用投資信託など | 17本 | 17本 |
合計 | 174本 | 172本 |
SBI証券と楽天証券は、月々100円から始められる点も魅力
つみたてNISAでは名前に「つみたて」とついているとおり、対象の投資信託の買い付け方法は、定期的に一定金額の買い付けを行う「積立方式」に決まっています。
しかし、毎月いくらから積み立てができるのか、何円単位で変更できるか、ボーナス月に追加で買えるかといった細かい積立方法は金融機関によって異なります。
投資というと「まとまったお金が必要」というイメージがあるかもしれませんが、SBI証券も楽天証券も、毎月の積立金額は最低100円から1円単位で設定できます。また、ボーナス月も追加で買い付けが行えます。このように、無理なく始められ、自分の収入によって投資金額を細かく設定できる点も大きな魅力の1つです。
SBI証券と楽天証券、どちらか迷ったら?
つみたてNISAの口座を開設する金融機関として、商品数が豊富で買い付け方法も少額から設定できるSBI証券と楽天証券をご紹介していますが、この2つでどちらにするか迷ったら、これから紹介する独自のメリットで選んでみてもいいかもしれません。
まず、つみたてNISAは基本的に毎月1回買い付けを行いますが、SBI証券と楽天証券ではこの積立方式を「毎月」に加え、「毎日」を選ぶことができます。
SBI証券のメリット
上述した積立方式からさらに「毎週」を選べることに加え、「NISA枠ぎりぎり注文」という注文方法が用意されていることが挙げられます。この注文方法では、積立金額がNISA投資可能枠よりも多い場合、NISA可能投資枠を使い切る金額で積立発注が行われます。
したがって、積立設定金額をNISA投資可能枠に合わせて微調整する手間がなくなります。より自由な買い付け方が選べるといえるでしょう。
楽天証券のメリット
楽天ポイントを使って投資信託を積み立てられるのは大きなメリットです。
楽天市場や楽天トラベルをよく利用する人であれば、ポイントだけで積み立てができるかもしれません。投資信託は売却すれば現金で受け取れますので、ポイントを現金として受け取れるかなり珍しいサービスといえるでしょう。
つみたてNISA(積立NISA)の期限にも注目して、早めに積み立てを開始しよう
2020年の税制改正により、つみたてNISAの投資可能期間は、現在の2037年から5年延長され、2042年までとなる予定です。つまり、今年から積み立てを開始すれば、つみたてNISAの非課税限度額800万円(40万円×20年間)を最大限利用することができます。
つみたてNISAで老後の準備をしたいけど、どこで口座を開設すればいいのか迷っている人は、今回ご紹介した内容を参考に、ぜひ最初の一歩を踏み出してみてください。
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