(本記事は、長尾義弘氏の著書『老後資金は貯めるな!』、河出書房新社、2018年12月5日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
【『老後資金は貯めるな!』シリーズ】
(1)「年金制度は崩壊する」はウソ?簡単には崩壊しないワケ
(2)「一生もらえる」年金のスゴイしくみをきちんと理解しよう
(3)なぜ年金の「繰り下げ受給」は「全額もらえない」のか
(4)再雇用で働くと「年金がさらに充実する」のはなぜ?
※以下、書籍より抜粋
再雇用で働いて年金を充実させる西山さんのマネー術
「貯蓄が2000万円ある人は、100年時代に対応した計画も立てられるだろうさ。でも、こっちはその元手がないんだよね。年金をもらうのを先送りしたら干上がっちゃうよ。最善の策といわれたって、絵に描いた餅もちじゃないの?」
というお怒りは、ごもっともです。
老後資金をまったく用意する余裕がなかった人は多いと思います。
老後資金がゼロなだけでなく、マイナスという人もいるでしょう。
マイナスとは、定年退職の時点で住宅ローンが残っていたり、子どもの奨学金の返済を肩代わりしているパターンです。
さて、こういった人の老後資金はどうしたらいいでしょう。
結論からいってしまえば、できるだけ長く働くことです。
「それが結論?ミラクルな一発逆転を期待していたのに……」
などと、がっかりしないでください。
貯蓄がゼロ、またはマイナスの場合は、収入によって増やすのがベストですし、それ以外の手段は限られています。
しかし、働き方を上手に工夫すれば、安定した老後生活が待っています。
まだまだ大丈夫です。
ここで、60歳で定年退職した西山さんに、ご登場願いましょう。
退職金はすべて住宅ローンの返済に充て、残ったお金は100万円です。
65歳になれば自分の年金が160万円、妻の年金が100万円と、合計260万円が入ってきます。
しかし、そこまでの5年間を100万円で乗りきるなんて、とうてい無理です。
そんな事情から、夫婦ともに再雇用で働くことにしました。
給料は大幅に減りますが、それでも西山さんの年収が450万円、妻の年収が230万円になります。
住宅ローンというマイナス部分は片づけてしまったため、生活に困るほどではありません。
倹約を心がけて毎月10万円を貯蓄にまわし、年金がスタートする65歳までの目処が立ちました。
厚生年金に加入して長く働くと給与が入ってくるというのと、受け取る年金額も増えるというのがメリットです。
夫の年金は、65歳の時点で160万円から、182万円に増えます。
妻は100万円から113万円に増えます(夫婦とも5年分の経過的加算もプラスしました)。
とはいえ、年金の受給開始と同時にリタイアすると、すぐに老後資金がつきてしまいます。
幸い、西山さんの職場は70歳まで働けるので、雇用を延長しました。
給料はさらに下がって年収300万円ですが、かなり余裕が出ます。
70歳以降の厚生年金も増えて、190万円になります。
いっぽう、雇用の延長制度がない妻は、65歳で退職します。
家事に専念できるようになったため、妻はやりくりを工夫し、年間の支出目標を400万円に設定しました。
ただ、これでもまだ88歳で老後資金がなくなってしまう計算です。
そこで、さらなる一手として選んだ方法が繰下げ受給です。
夫婦の年金すべてを繰り下げると生活が苦しくなりますから、西山さんは厚生年金だけを繰り下げ、基礎年金は65歳から受け取るようにしました。
基礎年金は60万円。
そこに年収の300万円が加わるので、貯蓄から40万円を取りくずして生活をすることにしました。
夫の年金は60歳時点で受給額は160万円でしたが、65歳で22万円アップして、さらに70歳まで働いたので、さらに8万円アップします。
それを65歳から70歳まで繰下げるのですから、42%の増額になります。
70歳の時点で年金受給額は82万円アップすることができます(65歳以降の厚生年金は繰下げ受給はできません)。
70歳以降の年金受給額は65歳から受け取っている基礎年金と合わせて、242万円になるのです。
いっぽう、妻の年金受給額は、65歳まで働くので、13万円アップの113万円です。
基礎年金と厚生年金の両方を70歳まで繰り下げます。
すると、受給額が160万円に増えます。
夫婦の年金受給額を合わせると400万円を超えます。
これで貯蓄を取りくずすことなく、多少ですが貯蓄額も増えて、100歳までもつ年金を手に入れることができます。
長尾義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員。お金のしくみ、保険のカラクリについての得する情報を発信している。1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書には『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『かんたん!書き込み式 保険払いすぎ見直しBOOK』(小社刊)、『コワ~い保険の話』(宝島社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)が、監修には別冊宝島の年度版シリーズ『生命保険 実名ランキング』(宝島社)などがある。
【こちらの記事もおすすめ】
>老後のための、幸せ貯金計画
>「老後のお金」3つのポイント
>豊かな老後のための3つのToDo
>人生100年時代に必要な「生涯学習」って?
>独身女性が安心できる貯金額はいくら?