(本記事は、長尾義弘氏の著書『老後資金は貯めるな!』、河出書房新社、2018年12月5日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
【『老後資金は貯めるな!』シリーズ】
(1)「年金制度は崩壊する」はウソ?簡単には崩壊しないワケ
(2)「一生もらえる」年金のスゴイしくみをきちんと理解しよう
※以下、書籍より抜粋
出典:長尾 義弘 『老後資金は貯めるな!』河出書房新社
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一生もらえる公的年金の基本的しくみ
年金は終身で受け取れるものですから、額が大きいほど安心感は高まります。
ただ、年金制度はひじょうに複雑で、注意点もたくさんあります。
まずは、どういうしくみになっているのかをしっかり把握しましょう。
公的年金については、数々の誤解があります。
年金は「自分で支払った分のお金をもらう」と考えている人が多いのですが、これは間違いです。
現役世代が払っている保険料は、いまの高齢者の年金給付に充てられています。
現役世代が高齢者に仕送りをしているイメージです。
となると、この先ますます少子高齢化がすすみ、自分は年金を受け取れないのでは?という不安もわいてくると思います。
しかし、制度自体がなくなることはありません。
そこは政府も考えており、過去に積み立ててある保険料を運用しています。
この運用を取りくずす一方で、年金の受給額を減らすといった形で維持していくでしょう。
払った保険料より、受け取る年金のほうが少ないという話もあります。
たしかに、現在の年金受給者は、支払った金額より多くを受け取っています。
では、現役世代は受け取る額のほうがすくないかといえば、これは事実でもあり、間違いでもあります。
国民年金で考えてみましょう。
国民年金の保険料は、月額1万6340円(平成30年度)。
満額(同額と仮定して40年)を支払うと、総額は784万3200円です。
いっぽう、基礎年金の受給額は、年額77万9300円です(平成30年度)。
したがって、損益分岐点はおよそ10年となります。
10年以上生きていたら、受け取る金額のほうが多くなるわけです。
それに、一生受け取れるものがある安心感は、なにものにもかえ難いと思います。
年金制度は見直すべき点も多々ありますが、老後資金の中でいちばん大きなウエイトを占めるものは、公的年金です。
いかに年金を充実させるかによって、老後生活が決まるといっても過言ではありません。
厚生労働省が発表している夫婦合わせての月額のモデル年金額は約22.1万円です(2018年)。
この金額を65歳から100歳まで受給したら、9282万円になります。
これだけの資金を自分で用意するのは、かなり難しいのではないでしょうか。
ちなみに、大卒の初任給が約20万円(厚生労働省調べ)です。
ここにボーナスが加わりますので、年収的には同じくらいです。
これが一生涯続くのです。
とはいえ、22.1万円で生活するのは厳しい状況で、毎月数万円の赤字が出ています。
老後資金や公的年金に関する記事では、赤字部分を貯蓄で賄まかなおうとしています。
したがって、いかに貯めるか、長持ちさせるかのアドバイスが大半を占めます。
しかし私は、足りない分は公的年金を増やすべきだと考えます。
一生涯受け取れる資産に重点をおくことこそが、長寿化社会に対応できる方法だといえるのではないでしょうか。